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[コラム] 尹政権の自由・連帯論と日本の朝鮮半島先制攻撃

登録:2022-12-20 06:55 修正:2022-12-20 08:56
中堅国が列強の対決を「チャンス」と捉えているのに、韓国は特定の列強を選ばざるを得ない「危機」としかみなしていないのではないか。尹政権が米国式語法で自由と連帯を語っている間に日本が朝鮮半島を先制攻撃の対象に設定している現実を、いかに受け止めるべきか。
10月の東海公海上の韓米日ミサイル防衛訓練の様子=米国防総省提供//ハンギョレ新聞社

 中国の浮上とウクライナ戦争以後、米国は国際秩序を「民主主義対専制主義の対決」と規定している。国際情勢ははたしてそのような二分法の秩序通りに展開されているだろうか。

 米国にとって公式同盟以上の存在だったサウジアラビアを見てみよう。サウジは冷戦当時、国交正常化すらしていなかったソ連の後身ロシアを、石油輸出国機構(OPEC)プラスに招待し、国際原油価格の決定において協力している。そしてウクライナ戦争と関連した対ロシア制裁にも参加しなかった。7~9日(現地時間)、中国の習近平国家主席のサウジ訪問と湾岸諸国との首脳会談で、サウジは米中ロ間で等距離外交を示した。北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるトルコがウクライナ戦争でロシアの立場を仲裁したこともあった。イスラエルもウクライナ戦争で対ロシア制裁への参加を見送っている。メキシコやブラジルなど伝統的な親西側諸国も同様だ。

 中東ではバーレーン、エジプト、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦がすでに中ロが主導する「上海協力機構」(SCO)の対話パートナーであるか、加盟を考慮している。SCOが西側のNATOに相応するならば、ブリックス(BRICS、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)は主要7カ国(G7)に相応する。BRICSにもサウジ、エジプト、トルコが加盟の意思を示し、協議を進めている。

 最近のミドルパワー国家(中堅国)の対外政策は、冷戦時代の1955年にバンドン会議で結成された非同盟路線とは異なる。当時、中国とインドが主導した非同盟路線は「非米ソ」(米国でもなくソ連でもない)だったが、中堅国は非同盟よりは「多連帯」路線を追求する。米中ロいずれにも足をかけようとしている。

 米国内にも中堅国が多連帯路線を選択したことに対する反省がある。トランプ前政権で大統領補佐官(安全保障担当)を務めたハーバート・マクマスター氏は、米国が既存の同盟と自動的な連帯を想定するのは「戦略的ナルシシズム」だと指摘した。このような戦略的ナルシシズムは、サウジが10月に米国の石油増産要求を一蹴し、200万バレルを減産したことからも明らかになる。ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は「OPECプラスがロシアと連帯していることは明らかだ」と断言した。米国は、サウジが伝統的に原油価格決定の際に米国の影響力に抵抗してきたことには目を背けたのだ。2015年、バラク・オバマ政権は同盟国に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加しないことを呼びかけたが、英国、ドイツ、オーストラリア、韓国など大勢の同盟国が参加したことからも、米国の戦略的ナルシシズムがうかがえる。

 米国も多連帯路線を追求する中堅国に合わせたアプローチに旋回している。伝統的な集団安全保障機構や二国間同盟にとどまらず、米日豪印の「クアッド」、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化および平和協定の「アブラハム協定」、インド、イスラエル、アラブ首長国連邦、米国のいわゆる「I2U2グループ」などを進めている。7月14日に初めての共同声明が発表されたI2U2グループは、地域の経済協力強化を掲げたが、米国は西アジア版クアッドへの発展を目指している。アブラハム協定でイスラエルとスンニ派アラブ諸国の連帯を構築し、I2U2を媒介に「インド・アブラハム同盟」へと拡大させることを狙っているのだ。中国を封鎖しようとするインド太平洋戦略の大きな枠組みのもと、その中核であるクアッドにインド・アブラハム同盟を重畳・連動させる戦略だ。

 ウクライナ戦争は「民主主義対専制主義」対決という側面もあるが、既存の覇権国や大国秩序の弱体化という面も示している。中東と西南アジア諸国、そして中堅国が米国の磁場に縛られず、米国がこれらの国に合わせた連帯戦略を図るのが、その二つの潮流を示している。

 ウクライナ戦争を機に、国際秩序の再形成の主要動力として中堅国の能動主義が浮き彫りになっている。フィナンシャルタイムズのコラムニスト、イワン・クラステフ氏は、南アフリカ、インド、サウジ、トルコ、イスラエル、そして韓国などがこのようなぎこちないパートナーの部類だと指摘する。このような中堅国が共有するのは、列強の対決において「メニュー」になるのではなく、自ら「交渉テーブル」につくという決意だと、クラステフ氏は語る。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は果たしてメニューではなくテーブルに加わる決意を持っているだろうか。尹政権は自由と連帯を米国式語法で繰り返す対外政策を打ち出している。北東アジアにある韓国が、地政学的条件の異なる中東や西南アジア諸国のような対外政策を掲げることはできない。しかし、復活した列強の地政学的対決を他の中堅国が「チャンス」と捉えているのに、韓国は特定の列強を選ばざるを得ない「危機」としかみなしていないのではないか。

 日本は予防的先制攻撃である「敵基地攻撃」という「反撃能力」を朝鮮半島に適用するのは、自分たちが判断する問題だと公式化した。大韓民国の憲法上、主権地域である朝鮮半島を日本が先制攻撃地域に設定している現実を、韓国はどう受け止めるべきなのか。尹政権が自由と連帯をどの政府よりも大きく掲げていたからこそ、なおさらそうだ。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1072250.html韓国語原文入: 2022-12-19 18:44
訳H.J

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