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[寄稿]日本の攻撃能力保有に拍手する韓国政府

登録:2022-12-09 06:08 修正:2022-12-09 08:05
キム・ジョンデㅣ延世大学統一研究院客員教授
ASEAN+3首脳会議に出席した尹錫悦大統領と米国のジョー・バイデン大統領、日本の岸田文雄首相が先月13日(現地時間)、カンボジア・プノンペンのあるホテルで韓米日首脳会談を行っている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 自民党と連立与党の公明党が敵のミサイル基地などを攻撃できる「反撃能力」を保有することで合意した。これに先立ち、日本は安倍晋三首相時代の2013年、集団的自衛権の行使を容認し、海外遠征作戦の道を開いた防衛計画の大綱で、ミサイル総合防衛計画という概念を初めて打ち出した。安倍首相はさらに2020年9月、単なるミサイル防衛ではなく、敵基地を打撃する攻撃能力を保有するという談話を発表した。日本政府は、「敵基地攻撃能力」が中国や北朝鮮に対する先制攻撃概念と映る恐れがあるという指摘を受け、岸田政権発足後、「反撃能力」に名称を変更した。

 今月中旬に改正される日本の国家安全保障戦略など3つの政策文書は、反撃能力を公式政策として採択し、今後攻撃ミサイルの保有に向けた細部計画の作成を目指している。これまで知られているところでは、米国からトマホーク巡航ミサイル500機の購入、地対艦ミサイル射程を1000キロメートルに拡大、射程2000キロメートルの島嶼防衛用高速滑空弾の配備を順次推進し、2030年代には射程3000キロメートルの極超音速ミサイルの配備まで進める。いくら攻撃ミサイルが多くても、標的を見つけられなければ無用の長物だ。日本政府は、中国と北朝鮮の攻撃目標を見つけるために、超小型群集衛星数十基を低軌道に打ち上げる計画だ。朝鮮半島全域が日本の監視権とミサイル射程圏内に入る、かつてない状況が展開されるわけだ。

 日本の平和憲法は、防衛上必要があっても相手国を先制攻撃してはならず、侵攻してきた敵を日本領土において軍事力で撃退するという専守防衛の概念を掲げている。数千キロメートル離れた敵をミサイルで攻撃できるようになれば、この原則は当然形骸化する。これに対して日本政府は、米国の要請があれば、切迫した必要に応じてミサイル攻撃能力を発揮するという集団的自衛権の論理ですり抜けようとするだろう。

 日本のこのような動きの背景には米国の戦略的計算もある。4年前、ドナルド・トランプ大統領はロシアと結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退した。その直後、米国は中国牽制のための地上基盤の中距離ミサイルを配備するアジア諸国を探したが、韓国とフィリピンはこれに同意せず、オーストラリアは中国との距離が遠いため実効性がなかった。ただ、米国はオーストラリアと極超音速巡航ミサイルの共同開発および発射実験に合意した。

 これを受け、米国の戦略家たちは、中国との関係悪化を懸念するアジア諸国に自国ミサイルを配備する代わりに、日本が中距離ミサイルを自ら確保できるよう支援するのが最も効果的だと結論付けた。日本のミサイル開発を支援しようという提言を盛り込んだランド研究所の報告書「インド太平洋の地上基盤中距離ミサイルー米国同盟国の位置評価」が今年4月に発刊されたが、まさにそのタイミングで自民党は「相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」反撃能力の保有に関する提言を発表した。米国の戦略家たちと日本の政治家たちが阿吽の呼吸を見せたわけだ。

 日本の攻撃能力の保有は平和憲法を完全に形骸化し、日本が中国と東アジア地域の覇権競争に本格的に飛び込む足がかりになるだろう。北朝鮮の核・ミサイルの脅威が深刻だというが、2018年の防衛白書から北朝鮮ではなく中国を「主な脅威」とみなしてきた日本が、本格的に大国の政治に挑戦状を突きつけたと言える。第2次世界大戦後、息を潜めてきた日本が、地域の軍事大国に浮上し、大国戦略を駆使すれば、当然東アジアの安定は大きく乱されるだろう。

 それを分かっているのか分かっていないのか、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は先月、カンボジアのプノンペンで米国のジョー・バイデン大統領や日本の岸田文雄首相と行った韓米日首脳会談で、「ミサイル情報をリアルタイムで共有する」と、突然合意してしまった。最近のロイター通信とのインタビューでは、「(日本)列島の上にミサイルが飛んでいくのに、放置するわけにはいかない」と述べ、日本の軍備増強を事実上容認するに至った。韓国の軍事情報が日本の北朝鮮攻撃に活用されてもかまわないともとれる発言だ。

 問題は、日本がどのような条件で攻撃能力を駆使するのかが透明ではない点にある。「日本は平和憲法を順守しながら地域の安定に寄与する方向で、透明に防衛力を増強しなければならない」という韓国政府の従来の立場にも反する。このような問題提起に尹錫悦政権は何も答えておらず、韓国の不安は高まるばかりだ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ジョンデㅣ延世大学統一研究院客員教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1070757.html韓国語原文入: 2022-12-09 00:04
訳H.J

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