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[コラム]尹錫悦大統領は王ではない

登録:2022-12-06 02:34 修正:2022-12-06 09:25
首切り役人の剣の舞で国を治めるということなのか。情けない。このようなやり方では、5年後、尹錫悦政権の長官や大統領室の参謀、尹錫悦大統領は無事でいられるだろうか。
5日、ソウルのCOEXで第59回貿易の日記念式が行われ、尹錫悦大統領が祝辞を述べている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 国会議員は国民の代表だ。国会は国民を代表する機関だ。

 大韓民国憲法第3章は国会、第4章は政府に関する規定だ。4章の1節が大統領、2節が政府に関する条文だ。大統領より国会が優先する。

 作られたのも国会が先だった。日帝からの解放後、米軍政を経て1948年5月10日に最初の国会議員総選挙が行われた。198人の国会議員が国民の代表として選ばれた。

 国会は前文と103条からなる憲法を7月12日に制定し、7月17日に公布した。この憲法にもとづいて7月20日の国会本会議で李承晩(イ・スンマン)大統領が選出され、8月15日に大韓民国政府が発足した。

 1950年5月30日の総選挙の結果、李承晩大統領の再選が難しくなった。李承晩大統領は1952年7月、釜山(プサン)政治波動を引き起こし、大統領を国民が選挙で選ぶよう憲法を変えた。抜粋改憲と呼ばれる第1次改憲だ。1952年8月5日の大統領選挙で74.61%の票を得て当選した。

 李承晩大統領はさらに一歩踏み込んだ。1954年の第2次改憲(四捨五入改憲)で終身大統領への道を開いた。1960年の4・19革命で倒れた。

 1961年クーデターで政権を握った朴正熙(パク・チョンヒ)もほぼ同じ道を歩んだ。1963年の第3共和国憲法は大統領の任期を4年とし、一度だけ再登板できるようにした。朴正熙大統領は1969年の改憲で3選を可能にした。1972年の改憲で終身大統領への道を開いた。1979年10・26で倒れた。

 大統領と王の違いは何だろうか。大統領は民主共和国を構成する機関だ。国民を代表する国会議員と同様に、国民の主権を委任された選出職の公職者だ。任期がある。

 王は主権者だ。任期がない。李承晩、朴正熙の両大統領は王の権力を極めた。国会と与党は統治機関だった。人々は国会を通法府とか挙手機械と呼んだ。野蛮の時代だった。

 国民と野党の闘争で国会が本来の姿を取り戻したのは、1987年の大統領直接選挙制改憲と1988年の第13代総選挙で出現した少数与党国会だった。国家元首かつ行政府の首班は盧泰愚(ノ・テウ)大統領だったが、国会は民政党、平民党、統一民主党、新民主共和党の4党のけん制と協力で運営された。

 対話と妥協による協力の政治を定着させる機会だった。1990年の3党合同で水の泡となった。帝王的大統領時代に逆戻りしてしまった。盧泰愚、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)の各大統領は帝王的大統領だった。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)の各大統領は帝王的大統領ではなかったが、大統領選挙前後の総選挙で勝った。それでも野党と話し合い、妥協し、譲歩した。

 2022年3月9日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の当選は、制度的に対話と妥協の政治を復元しうる絶好の機会だった。国会は共に民主党の絶対優位の少数与党体制であり、2024年4月の総選挙まではそれが変わる可能性がなかったからだ。

 尹錫悦大統領も就任6日後の国会での施政方針演説で「今の大韓民国には、各自指向する政治的価値は異なるものの、共同の危機を克服するために喜んで手を結んだチャーチルとアトリーのパートナーシップがいつにも増して必要だ」と述べ、一層期待を高めた。

 まったく違った。今回の通常国会は、尹錫悦大統領が編成した最初の予算案と尹錫悦政権の政府組織法のかかった重要な国会だ。にもかかわらず尹錫悦大統領は、与党指導部に「野党に物乞いするな」と注文したという。

 「尹錫悦師団」が布陣した検察は、民主党のイ・ジェミョン代表の側近を相次いで拘束し、イ・ジェミョン代表を捕えようとしている。文在寅政権の海洋警察庁長、国防部長官、国家安保室長を次々と拘束した。今や国家情報院長、秘書室長、文在寅大統領を捕らえる勢いだ。

 首切り役人の剣の舞で国を治めるということなのか。情けない。このようなやり方では、5年後、尹錫悦政権の長官や大統領室の参謀、尹錫悦大統領は無事でいられるだろうか。

 このような状況なのに、いわゆる保守系の新聞と国民の力は、野党が大統領選挙の結果に従っていないとばかり叫んでいる。もどかしく、腹が立つ。民主党が大統領選挙の結果に従っていないのではなく、尹錫悦大統領と国民の力が野党を弾圧し、国会を無視し、総選挙の結果に従っていないのだ。

 私たちは3月9日の選挙で王を選んだわけではない。民主共和国の大統領を選んだのだ。国民を代表する機関は大統領ではなく国会だ。立法と予算は国会の権限だ。

 尹錫悦大統領は国会と協力すべきだ。国会の多数勢力である民主党と対話すべきだ。それを実践するのはまだ間に合う。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1070253.html韓国語原文入力:2022-12-05 14:58
訳D.K

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