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[社説]高校生のマンガ受賞作にも「政治違反切符」切る韓国政府

登録:2022-10-06 06:35 修正:2022-10-06 08:25
パク・ボギュン文化体育観光部長官が5日、国会の文化体育観光委員会の国政監査で富川国際漫画フェスティバルの受賞作「尹錫悦列車」に関する質疑を受けている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 文化体育観光部が「尹錫悦列車(ユンソクヨルチャ)」(「ユン・ソクヨル(尹錫悦)」と「ヨルチャ(列車)」を合わせている。以下「尹錫悦列車」)に金賞を授与した韓国漫画映像振興院に対し、支援中断などを取りあげたことで議論が高まるなか、パク・ボギュン文化体育観光部長官は5日、「純粋な芸術的感受性で名声を築いてきた中高生漫画の公募展を、政治汚染の公募展に変色させた漫画振興院が問題」だと主張した。「表現の自由」の抑圧という批判が広がったため作品ではなく組織を批判したものだが、見えすいた弁明であり、詭弁に過ぎない。

 パク長官はこの日、国政監査で「作品について問題視しているのではなく、(漫画映像振興院が)政治的カラーを除くという条項を削除し公募したことが問題」だと主張した。文化体育観光部は、前日の「尹錫悦列車」関連の報道説明資料で、「政治的なテーマを露骨に扱った作品を選定し展示したことは、生徒の漫画創作の欲求を鼓舞しようというイベントの趣旨から大きく外れる」とし、漫画映像振興院に厳重警告したと明らかにした。さらに追加の資料では、漫画映像振興院が「政治的意図や他人の名誉を傷つけた作品は欠格事項」とする文化体育観光部の後援条件を破ったと主張した。文化体育観光部は102億ウォン(約10億4000万円)の予算がこの組織に支援されているという点を“あえて”言及し、支援縮小の可能性もほのめかした。

 3日に閉幕した第23回富川国際漫画フェスティバルに展示された「尹錫悦列車」は、尹大統領の顔をした列車が煙をあげて走り、大統領夫人のキム・ゴンヒ女史とみられる人物と刀を持った検事らがそれぞれ運転席と客席に座っている内容を描いたもの。パク長官の「契約破棄」の主張には、この漫評には政治的意図があり、登場人物である尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史の名誉を傷つけたとする認識が背景にある。しかし、政府が「純粋な芸術的感受性」と「政治汚染」を分けて審判する姿は、朴槿恵(パク・クネ)政権時に政府に批判的な芸術家と芸術的作品を支援から排除するかたちで弾圧したブラックリスト事件を思い出させる。名誉毀損への言及も、尹大統領とキム女史に対する忖度以外に解釈できない。

 尹大統領は大統領選挙期間中、「コメディは現実に対する風刺」「政治風刺は当然の権利」だと言及したことがある。パク長官もこの日、「尹錫悦政権は表現と創作の自由を最大限保証する」と主張した。しかし、与党「国民の力」は、尹大統領の暴言の議論をめぐり「文化放送」(MBC)を「大統領名誉毀損」で検察に告発し、警察は龍山(ヨンサン)大統領室の近くに尹大統領の風刺画を掲げた画家を内偵中だ。これが尹錫悦政権が保証するという「表現の自由」なのか、問わざるをえない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1061521.html韓国語原文入力:2022-10-06 02:39
訳M.S

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