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[コラム]国連でも空虚な自由論だけを叫んだ尹大統領の「アマチュア外交」

登録:2022-09-22 06:35 修正:2022-09-29 10:05
尹錫悦大統領が外交において準備不足か、核心を捉えていないようで心配だ。国連演説は多角的に検討されたはずなのに、尹大統領特有のアマチュア式のアプローチがそのまま維持されたことは大きな問題だ。初めからこじれた今回の歴訪は惨事レベルのミスが続き、今のところ落第点に近い。 

ペク・ギチョルㅣ編集人
尹錫悦大統領が20日(現地時間)、米ニューヨークの国連総会で演説を行っている=ニューヨーク/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は今週初めに外国歴訪に出る前、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、文在寅(ムン・ジェイン)政権の対北朝鮮政策をまとめて非難した。南北首脳会談は「政治ショー」であり、文在寅前大統領が「一人の友人ばかりに執着する学生のように見えた」と語った。外国の有力マスコミに前任大統領と韓国外交をむやみに扱き下ろしたわけだ。「天に向かって唾を吐く」ような発言で歴訪前から失態を演じた。

 首脳会談はどんなものでも和解・協力または軋轢までをもたらす政治的なショーだ。その当時の最善の折衷にすぎない。尹大統領のいう通りなら、南北首脳会談はやめようということに他ならない。文前大統領の「易地思之(相手の立場に立って考えること)外交」を「一人の友達ばかりに執着する」としたのは幼稚ともいえる。問題の発言が事前に用意されたものなら深刻なことであり、尹大統領の普段からの考えが思わず出たのなら外交の初心者であることを自ら認めた格好だ。

 エリザベス女王への弔問が実現できなかったのは、準備不足による外交の失敗だ。経緯はともかく、棺に拝礼もできないなら、ロンドンには行かない方がましだったかもしれない。インタビューでの発言や弔問の失敗は、外交舞台で通常なら起きないことで、きちんと準備していれば防げたはずの出来事であるという点で深刻だ。

 尹大統領が国連総会演説で、自由と価値連帯を再び力説したのは空虚極まりない。韓国的なものが最も世界的というのは、ここでも適用される。北朝鮮の非核化と朝鮮半島・北東アジアの平和に関する所信とビジョンを明確に示し、国際社会の協力を呼び掛けるべきだった。国連総会は普遍性に基づき、韓国の立場について語る場であって、抽象的な自由論を掲げるところではない。

 就任演説で「自由と世界市民の連帯」を語ったのだから、国連でもそれを掲げるのが自然な帰結だと考えたのかもしれない。しかし、これは自己中心的な考えだ。就任演説は国民が聞きたい項目を中心とした内容をまとめて示すものだ。同様に、国連演説は国際社会が韓国の大統領に聞きたいテーマを語るものだ。歴代大統領が国連でいかなる形であれ、北朝鮮問題を大きく取り上げたのもそのためだ。

 尹大統領が外交において準備不足か、核心を捉らえていないようで心配だ。国連演説文は多角的に検討されたはずなのに、尹大統領特有のアマチュア式のアプローチがそのまま維持されたことは、深刻な誤作動があったとみなければならない。

 韓日首脳会談をめぐっても未熟さが露呈した。大統領室の公式ブリーフィングを通じて2国間会談の開催を先に公開するケースは珍しい。どうしても事前に知らせたかったのなら、匿名で流すこともできたはずだ。さっぱり理解できない。初めからこじれた今回の歴訪は惨事レベルのミスが続き、今のところ落第点に近い。

 現政権の外交に大きな期待はかけなかったが、それでもある程度はできると思っていた。尹大統領がナンシー・ペロシ米下院議長と面会しなかったのは、米国偏向に対する一種のバランサーとして意味のある慎重な外交だった。しかし、そこまでだった。

 大胆な構想や南北離散家族交渉の提案は中途半端なものだ。大胆な構想には、その命名からして、創意工夫がほとんどみられない。朝鮮半島の状況が大きく変わったのに、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の政策の書き写しでは重要な点がわからない。北朝鮮に「言うことを聞けば、おやつをもう一つあげる」というようなアプローチに過ぎない。北朝鮮の利害と要求に基づいた妥協、共生の道とはほど遠い。

 文前大統領が南北軍事合意4周年を迎え「平和の道」を力説したのは、理想的ながらも高踏的だ。南北が以前のすべての合意を尊重しながら、「易地思之の対話」をすることを求めたのは、原則的には正しいが、現実でどれだけ有効かは疑問だ。

 朝鮮半島の状況は、ドイツの統一と旧ソ連解体後、30年以上の歳月が流れ、根本的に変わった。 北朝鮮は核兵器使用を法で定めた事実上の核保有国家になり、米中対決はすべてを吸い込むブラックホールになりつつある。中国がソ連のように解体されず健在である限り、北朝鮮の崩壊を前提としたモデル、すなわちドイツモデルは有効ではないかもしれない。南北はこれから長い年月を他国のように「別々に、また共に」暮らさなければならないかもしれない。

 尹錫悦政権が革新、保守政権の35年の限界を越える、少しは進展した対北朝鮮政策を示すことを望んでいた。状況が変わり、歳月の重さも加わったためだ。保守政権には原点からすべてのオプションを検討できる余地も多い。しかし、現実は全く違っていた。

 現政権に保守の創意的な対北朝鮮イニシアチブを期待するのは、木に縁りて魚を求むようなものなのかもしれない。今はミスを犯さず、基本を守り、国際社会で恥をさらさないことを願うだけだ。

//ハンギョレ新聞社
ペク・キチョルㅣ編集人(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1059531.html韓国語原文入;2022-09-22 02:39
訳H.J

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