本文に移動

[コラム]米国に翻弄される尹錫悦式外交

登録:2022-09-21 02:42 修正:2022-09-21 09:23
パク・ヒョン|論説委員
尹錫悦大統領(中央)が5月20日、訪韓した米国のバイデン大統領(左から2番目)、ジーナ・レモンド商務長官(左)らと共に京畿道平沢市のサムスン電子の半導体工場を訪問し、記念写真を撮っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 米国のジーナ・レモンド商務長官は最初から少し目立つところがあった。同氏は昨年9月、ホワイトハウスがグローバル半導体メーカーに顧客情報を提出することを要求した際に先頭に立った。同氏はメディアとのインタビューで、協力しなければ強制的に収集する手段があるという脅迫も躊躇しなかった。今年に入ってからも同氏は、中国牽制と米国製造業の復活というバイデン策略の事実上の急先鋒の役割を果たしている。輸出規制リストに100社以上の中国企業を追加したほか、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の創設の先頭に立った。さらに、韓国への投資を検討していた台湾の半導体メーカー「グローバルウェハーズ」を途中で横取りした。同氏は今年6月に同社の代表と1時間にわたって通話し、投資先を米国に変更させることに成功したと「ウォール・ストリート・ジャーナル」は報じた。ロードアイランド州の前知事で、最高権力に対する野心も持っているという同氏は、自由貿易を唱えてきた従来の商務長官とはかなり異なる動きを見せている。いずれにせよバイデン大統領にとっては「スター長官」に他ならない。

 一方、韓国の産業通商資源部長官や通商交渉本部長には存在感がない。最近、米国による韓国製電気自動車(EV)に対する差別待遇問題が浮き彫りになってようやく「遅い対応」に追われている。これについて産業部の高位関係者は、300ページを超える法案(「インフレ抑制法」)を分析するのに時間がかかったうえ、欧州連合(EU)や日本も似たような境遇だということをあげつつ、できるだけのことはしたと主張した。しかし、特定地域で生産されるEVにのみ補助金を支給するという条項はすでに昨年から物議を醸していたため、少しでも関心を傾けていたなら、事態把握に1日もかからなかっただろう。韓国は米国内のEV販売で2位であり、遅れをとっていたEUや日本に比べて被害ははるかに大きい。被害が大きい当事国が最も熱心に奔走しなければならないのは当然のことだ。7月27日に法案の最終案が公開された際に迅速に把握して国内に報告していたなら、ちょうど訪韓したナンシー・ペロシ下院議長に問題を提起することもできたろう。大統領室が混沌としている中で、第一線の諸省庁も綱紀が緩んでいたとみられる。そうこうしているうちに、現代・起亜自動車はバイデンの要請に対して100億ドル以上の投資を約束しておきながら、冷遇されてしまった。現代・起亜のこのような投資は、米国政府の補助金を前提に計画されたという。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は「スター長官が出てきてほしい」と述べたが、バイデンの「スター長官」にことごとくやられてしまっている。

 問題は、綱紀の緩みというレベルにとどまらず、現政権は果たしてこの難局を乗り切るための戦略を持っているのか疑わしいということだ。米国は同盟国や友好国を経済安保という旗印の下、自身の主導する経済ブロックの中にとどめることで覇権挑戦国である中国を弱化させる一方、自国製造業の復活を図っている。韓国のような開放型通商国家には、このような保護貿易主義は非常に不利だ。国際通貨基金(IMF)は昨年、米中間の先端技術分野の交易が中断される「技術デカップリング(分離)」が現実のものとなった際の、米、中、韓、日、欧、印の6つの国と地域に及ぶ否定的影響を推定している。韓国は米中デカップリングが現実のものとなっても、両経済ブロックといずれも交易が許されれば、国内総生産(GDP)は小幅に増加するという推定だ。韓国が中国にとって代わり「漁夫の利」を得るからだ。逆に、同じブロック内でのみ交易が許されるケースでは、GDP成長率がマイナス6%に達し、その衝撃はライバル国の中で最も大きかった。マイナス成長は日本の2倍にもなった。

 金大中(キム・デジュン)大統領はかつて、このような状況をこのように明快に整理している。「安保面では米国が重要で、経済は両方とも重要です。韓国は地政学的に水路にはまった子牛と同じです。両側の草を食べているんですよ。周辺の米国、日本、中国、ロシアを経済的にすべて活用しなければなりません」。今のような大国同士の対立の時期にはこの論は限界に直面せざるを得ないが、機会は開かれている。

 1980年代の半ばから後半にかけての日米の産業覇権戦争から教訓を得るべきだ。米国は当時、自国産業を追い越そうとしていた日本を挫折させるために、プラザ合意と日米半導体協定を結んだ。ある意味では今と似ている面がある。当時の韓国企業は日本企業が停滞している間に、新たに開かれた中国市場を踏み台にして世界的企業へと成長することができた。今の米中対立の時期も混乱しているように見えるが、活路は見出せる。中国に対する米国の「はしご外し」の試みは、中国の凄まじい追撃を遅らせる効果がある。この機会に新たな成長動力である東南アジアや西南アジアの市場を開拓するなど、世界市場の足場を広げていくべきだろう。米中対立は長期戦となる公算が大きいため、初期段階でルールをきちんと確立しておかなければならない。さもなくば、韓国企業の地位は大きく脅かされるだろう。米国との交渉において、米国市場での公正な待遇と中国市場へのアクセス権を確保することがカギだ。これ以上米国に翻弄されてはならない。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヒョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1059368.html韓国語原文入力:2022-09-20 16:35
訳D.K

関連記事