尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が中国の栗戦書全国人民代表大会(全人大)常務委員長との面会を皮切りに、英国、米国、カナダ歴訪など約2週間にわたり息つく間もなく続く外交日程に入る。「ウィンウィン(win-win)」の韓米同盟の強化と悪化した韓中・韓日関係の改善という難題の前で、外交力を発揮できるかに関心が集まっている。
16日の尹大統領の栗戦書常務委員長との面会は「9月の外交日程」のウォーミングアップともいえる。栗委員長は習近平国家主席、李克強首相に次ぐ中国共産党ナンバー3に当たる人物で、韓中国交正常化30周年を迎えてキム・ジンピョ国会議長の招請を受けて訪韓し、尹大統領を表敬訪問する。尹錫悦政権は発足後、米国が中国排除を狙った「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)に参加し、「チップ4」の予備会議に出席するなど、米国中心の外交に重点を置いてきた。このため、栗委員長が今回、どのようなメッセージを出すのかに関心が集まっている。韓国政府は中国が敏感に反応する慶尚北道星州(ソンジュ)のTHAAD(高高度防衛ミサイル)基地の正常化措置を最近進めており、中国との摩擦の管理が求められている。
尹大統領は18~24日の英国、米国、カナダ歴訪では「自由民主主義同盟」を強調するものとみられる。大統領室は19日、英国ロンドンで開かれるエリザベス女王の葬儀に参列することで、「価値観同盟」を重視する姿勢を示す構えだ。
今回の歴訪のハイライトは、20日(現地時間)に米ニューヨークで行われる予定の国連総会での演説だ。尹大統領は、北朝鮮が非核化交渉に乗り出せば、交渉初期から果敢な経済支援を行う内容を盛り込んだ「大胆な構想」を国際社会に示す予定だ。しかし北朝鮮は8日、核武力政策を法制化し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「核を放棄しない」方針を再度表明した。状況が悪化した中、尹大統領がどれほど国際社会を説得できるのか、外交力が試験台に立たされる。
経済外交も関心事だ。尹大統領は、米国の自国優先主義(アメリカファースト)を乗り越え、同盟として実益を確保しなければならない課題を抱えている。国連総会出席の機に行われてきた韓米首脳会談が今回実現した場合、北米製の電気自動車(EV)だけに補助金を与える内容を盛り込んだ米国の「インフレ抑制法」(IRA)や米国国内企業を優遇するジョー・バイデン大統領のバイオ産業の強化に向けた大統領令などが主要議論対象になるものとみられる。
就任直後、韓米同盟強化に重点を置いてきた尹大統領としては、11月の中間選挙を控えた米国の強固な「バイ・アメリカン」基調の中で、実益を確保する結果が求められる。手ぶらで会談が終わった場合、米国に渡してばかりという世論の非難にさらされる可能性が高い。
大統領室が進めている岸田文雄首相との韓日首脳会談の可否と成果にも注目が集まっている。会談が実現しても、日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者賠償問題に関する日本政府の態度に変化が見られなければ、負担が大きくなりかねない。帰国直後の29日には、カマラ・ハリス米副大統領と面会する予定だ。
東国大学北朝鮮学科のキム・ヨンヒョン教授は本紙の取材に対し、「韓米同盟と韓中協力という両翼に対して最大限慎重かつバランスの取れたアプローチをする戦略が必要だ」とし、「対北朝鮮ロードマップも、国際社会との協力の中で非核化のために積極的に乗り出して解決していくという迂回的・抽象的宣言の他には北朝鮮との接点を見出すことが難しく、これといった成果を上げるのは難しい状況」だと指摘した。