本文に移動

[寄稿]ポンペオ前国務長官の「中国妨害論」

登録:2022-07-25 06:59 修正:2022-07-26 09:41
ポンペオと中国側の関係者らの見解は両極端に分かれる。しかし、明らかなことは、北京との協力なしに北朝鮮核問題の解決は難しいという事実だ。次期大統領候補を夢見るポンペオのような大物政治家がこれを無視し陰謀論に近い中国責任論を繰り返すのであれば、北朝鮮核問題の妥結のための米中協力は不可能だと思われる。 
 
ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長
米国のマイク・ポンペオ前国務長官が5月14日(現地時間)、テキサス州オースティンのコンベンションセンターで開かれた右派の集会の「アメリカン・フリーダム・ツアー」に参加し演説している=オースティン/EPA・聯合ニュース

 北朝鮮の核ミサイルをめぐる動きが活発化している。18回の弾道ミサイル発射実験に続き、7回目の核実験の可能性も高まっている。特に懸念されるのは、核兵器の小型化、軽量化、多種化による核ドクトリンの決定的な変化だ。伝統的な報復抑止戦略に加え、戦術核の先制使用を公式化しているためだ。6月21日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の主宰で開かれた労働党中央軍事委員会第8期第3回拡大会議でなされた「前線部隊の作戦任務追加確定および作戦計画修正」は、そうした具体化の作業を強力に示唆している。

 一言でいえば、これは過去30年間続いてきた北朝鮮核問題の解決努力が無為に終わったことを意味する。「2006年まで北朝鮮は核を保有していなかった。しかし、数回の交渉にもかかわらず、核保有を防ぐことに失敗した。これは、一つの巨大な集団的失敗だ」。国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務総長が先日残した嘆きを込めた感想だ。関連国すべての集団的失敗だということだ。にもかかわらず、相変わらず米国は中国とロシアを、中国とロシアは米国を責める無意味な攻防が続いている。

 トランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオは中国責任論の代表論者だ。7月7日の朝鮮日報のインタビューで、彼は「金正恩は私たちが提示した道が正しく進む道だと信じていたが、事実上、習近平が彼らを動かしていた」と述べ、習近平主席と中国共産党が北朝鮮の非核化を妨害したという主張を展開した。北朝鮮を緩衝国家として残し続けようとすると同時に、北朝鮮核カードを利用して米国の国力を分散し、朝米関係を壊そうとする対米牽制政策が中国の本心だったということだ。「中国の最終的目標は、朝鮮半島を中国共産党の統治に従順な属国にすることにある」という見解を表明したポンペオは、「強力な制裁が、金正恩に真剣な非核化への対話に乗りださせる真の圧力になった」と自評した。

 このように挑発的な「中国妨害論」に対する中国側の責任ある関係者の反応は、一言でいうと、話にならないというものだ。北朝鮮の核兵器保有は中国の国益にも反するものであり、中国は6者会合を含む様々な手段を通じて北朝鮮の非核化のために米国と積極的に協力してきたという反論だ。北朝鮮特有の自主外交路線を考慮すると、北京の北朝鮮に対する影響力には、明らかな限界があることも事実だ。習近平主席の電話1本で金正恩総書記の態度を変えることが可能だという西側式の見方は、朝中関係の歴史的特性に対する無知を示している。平壌(ピョンヤン)がワシントンにとって難しい相手であるように、北京にとっても「つねに勝手気ままに振舞う」難しい相手だ。ポンペオの主張は、北朝鮮に対する中国の影響力を過大評価したトランプ政権の過ちをそのまま繰り返している。

 中国が米国を牽制するために北朝鮮核カードを悪用しているという推測も、米国が中国を牽制するために北朝鮮核問題を悪化させているという主張の正確な対称形だ。しかし、核武装した北朝鮮が米国にとって深刻な安全保障上のリスクであるように、中国にとってもこの上ない不安定要因にならざるをえない。中国側の関係者らは、北京が朝鮮半島の平和と安全、非核化、対話と交渉を通じた北朝鮮核問題の外交的妥結を主張してきた背景には、そのような計算があると語る。米国との協力も、そうした自国の利益に基づく外交目標のもとでなされたということだ。北朝鮮を緩衝地とみなすポンペオの見方も、時代錯誤的な発想に過ぎず、北京は朝米関係の正常化をずっと支持してきたのであり、米国と北朝鮮の仲を裂く理由もないという説明も付け加えた。14億の人口を統治するのにも苦労している中国には、北朝鮮を属国にする理由はないということだ。これらの点が、ポンペオの主張を典型的な「中国共産党悪魔化フレーム」として低く評価する根拠だ。

 逆に中国側の関係者らは、ポンペオの制裁万能論こそ北朝鮮核問題の解決をつぶした主要な理由だと反論する。2018年、金正恩総書記がトランプ大統領との対話に乗りだしたのは、制裁という圧力のためではなく、トランプが金正恩を認め、対話と交渉を通じて問題を解決するという意向を示したためだということだ。中国側の関係者らは、今もなお、核とミサイルの実験と韓米合同軍事演習の同時中断(双中断)、朝鮮半島非核化と平和体制の並行推進(双軌並行)、漸進的な同時交換原則に基づく外交交渉だけが唯一の解決策だと診断し、米国の「先に解体・後で補償」の枠組みや「制裁一辺倒アプローチ」では問題を解決できないと言い切る。

 ポンペオと中国側の関係者らの見解は両極端に分かれる。しかし、一つ明らかなことは、北京との協力なしには、北朝鮮核問題の解決は難しいという事実だ。次期大統領候補を夢見るポンペオのような大物政治家が、これを無視して陰謀論に近い中国責任論を繰り返すのであれば、北朝鮮核問題の妥結のための米中協力は不可能だと思われる。

//ハンギョレ新聞社

ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1052147.html韓国語原文入力:2022-07-25 02:37
訳M.S

関連記事