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[寄稿]ウクライナ戦争と頭をもたげる冷笑主義

登録:2022-06-27 06:24 修正:2022-06-27 08:13
ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長  

戦争が消耗的な持久戦の様相に変わるにつれ、西側の戦争疲労感も溜まっていく。冷笑と懐疑の拡散は、戦争に対して国際社会が公言した団結の限界を予告する。これは各国が冷静な損益計算に基づいて動く確率が高くなったという意味でもある。戦争の幕引きは外交的妥協にならざるを得ないというのが歴史の教訓ではないか。
ウクライナ東部ドンバスのリシチャンスクにつながる道路沿いで迫撃砲弾が爆発している=リシチャンスク/AFP・聯合ニュース

 「ウクライナの自由に向けたヨーロッパの兄弟愛を信じてほしい」。最近ウクライナを訪問したフランスのエマニュエル・マクロン大統領の言葉だ。これは先を争ってウクライナに対する全面的な支援を約束する西側諸国の指導者たちの発言と軌を一にする。ロシアの侵攻に対する国際社会の敵対感がどれほど高いのか、ウクライナの悲劇に対する共感がどれほど広がっているのかを明確に示すものでもある。

 しかし、西側の積極的支持に対する冷笑主義も同時に広がっている。筆者は6月13日から2日間、チェコのプラハで開かれた欧州連合(EU)・インド太平洋国家ハイレベル対話に出席した。中国の浮上や国際経済体制の不安定などの問題に対応し、EUとインド太平洋諸国間の協力を模索する場だったが、話題の中心はやはりウクライナ戦争だった。特に、40歳のリトアニアの外相、ガブリウス・ランズベルギズ氏の次の質問は意味深長だった。

 第一に、西側はウクライナ戦争を終息させ、欧州の平和のためにロシアの完全な孤立を進める意志と手段があるか。第二に、西側はウクライナが望む勝利のために支援を続けられるか。第三に、今の通常戦が核戦争に拡大することを遮断する効果的な方法があるか。第四に、戦争の長期化による西側民主主義社会の戦争疲労症候群を防ぐことができるか。

 これらの質問はウクライナ事態の内在的なジレンマを端的に示している。同時に、西側諸国の態度に対する冷笑主義もうかがえる。戦争開始以後、西側の主要国は「民主主義対権威主義」という二分法に基づき、強力な集団制裁を加えるなど、ロシアの完全な孤立を模索してきたが、そこには多くの現実的な制約がある。まず、ドイツやフランスのような欧州の主要諸国がロシアの完全な孤立に懐疑的だ。ロシアと緊密な関係を続けてきたハンガリーやセルビア、トルコ、イスラエルなどもこのようなアプローチに同意しない。インドやメキシコ、ブラジル、南アフリカ共和国など地理的に離れている民主主義国家も中立に近い態度を取っている。包括的な反ロ戦線を張ることが容易ではない背景だ。

 「相互依存の武器化」という逆説も障害となっている。制裁はエネルギーと穀物価格の暴騰によるインフレーションの圧迫や、希少非活性ガスの輸出制限措置によるサプライチェーンの支障など、予期せぬ結果も同時に招いている。さらに、戦争初期の予想とは異なり、ロシアの通貨価値や株式指数はむしろ回復傾向を見せている。強力な対ロ制裁によるこのようなブーメラン効果は、ロシアの完全な孤立が容易ではないことを示している。

 戦争の最終結果に関する接点を見出すことはさらに難しい。「平和協定ではなく勝利が目標でなければならない」という世論の高まりを受け、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ドンバス地域はもちろん、2014年にロシアが強制併合したクリミア半島まで取り戻すと宣言した。しかし、現実は冷酷だ。米国など西側の主要国は事態の長期化を防ぐため、適当な線で戦争の早期終息を受け入れる意志さえ示している。ウクライナが対ロ平和交渉で有利な立場を占めるようにする線までは支援するが、それ以上の攻勢的行動には否定的なメッセージを送ったジョー・バイデン米大統領の最近の発言が代表的な事例だ。戦争の行方がウクライナの望み通りに進むのは難しいことを示唆している。

 特に、核戦争に拡大しかねないという懸念は、米国と欧州諸国の直接的軍事介入を妨げる理由だ。西側の戦略的目標はウクライナの生存と領土を保存し、ロシアの侵略的行為に報復を加えながらも、同時に核戦争への拡大を防ぎ、戦争を早期に終息させることだと言える。ここで最優先の前提は核戦争への拡大防止だ。例えば、キーウのためにニューヨークやパリ、ロンドン、ベルリンを犠牲にするわけにはいかないということだ。これは西側の軍事行動に決定的な足かせとなっている。

 だからといって戦争の長期化を甘んじて受け入れることもできない。勃発から約4カ月しか経っていないウクライナ戦争が消耗的な持久戦の様相に変わるにつれ、西側諸国の戦争疲労感も溜まっていく。インフレをはじめとする経済的被害により各国の大衆の関心は急速に下がっており、欧州の世論調査は戦争の平和的終息を支持する意見が、ロシアを懲らしめるために戦争を持続すべきという意見を大きく上回っている。

 冷笑と懐疑の拡散は、ウクライナ戦争に対して国際社会が公言した団結の限界を予告する。これはまた、各国が自分の冷静な損益計算に基づいて動く確率が高くなったという意味でもある。結局、すべてのプレーヤーが現実主義に戻り、平和的解決を優先しなければならない。戦争の幕引きは外交的妥協にならざるを得ないというのが歴史の教訓ではないか。

//ハンギョレ新聞社
ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1048522.html韓国語原文入力:2022-06-27 02:37
訳H.J

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