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[寄稿]尹錫悦大統領に訴える韓国原発政策の危険性

登録:2022-05-19 03:30 修正:2022-05-19 08:48
イ・ジョンユン|原子力の安全と未来代表
尹錫悦大統領が国民の力の大統領候補時代の昨年12月29日、ハヌル原子力本部を訪れ、建設が中断されていた新ハヌル原発3、4号機の用地を視察後、発言している。後ろに見えるドームはハヌル1、2号機=蔚珍/キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 10日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は就任式で35回「自由」を叫んだ。これまで自由を抑圧されてきたという意味だろう。原子力に関しても尹大統領は、脱原発を標榜した前政権時代の原発産業の苦境はかなりのものだったと考えているようだ。

 尹大統領の原子力についての認識は、単なる親原発という水準にとどまらない。「福島第一原発事故の際、原発の爆発はなかったので、放射能の排出も死亡事故もなかった」と述べ、大きく取り上げられてもいる。最も強力な大統領候補とされる人物が、原発に対する文盲的で確証バイアス的な認識をあらわにしたからだ。大統領として今も原発についてこのような政治的認識の水準にとどまっているとしたら、懸念は高まらざるを得ない。

 尹錫悦政権は脱原発政策によって放棄された新ハヌル原発3、4号機を建設するとともに、2030年までに設計寿命を迎える10基の原発の稼働を延長するという。産業通商資源部は、このような政策意志を込めた第4次エネルギー基本計画と第10次電力需給基本計画を準備している。また、2030年までに10基の原発を輸出するという目標も立てている。

 かつて李明博(イ・ミョンバク)政権はアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を決めた際、原発こそ新たな生業だとし、「2030年までに原発80基輸出」という遠大な目標を掲げた。しかし、それから12年が経つが、原発輸出の実績は皆無だ。今や目標を10基に引き下げたというが、それすらも不確実だというのが衆論だ。原発輸出は韓国の思い通りになるものではなく、ウクライナ事態などの国際情勢、輸入国の事情や条件、ライバル国の競争力、資金調達リスクの管理など、さまざまな条件が十分合致しなければ不可能だ。日本の安倍政権も原発輸出に積極的に取り組み、韓国があきらめた英国のムーアサイド原発とトルコの原発の建設を意気揚々と受注したものの、結局は兆単位の損害を被ったにすぎず、放棄した。この2国の原発は、いずれも供給者が自らの資金で原発を建設・運営し、電気を売って投資資金を回収する方式であるため、投資リスクが非常に高い。 また世界的に原発は減り、再生可能エネルギーが増える流れであるうえ、最も多く原発を建設している中国は自ら建設しているため、実際の輸出対象国は数えるほどだ。

 このような有様であるにもかかわらず、尹錫悦政権は「輸出のためには原発環境を維持しなければならない」との主張を脱原発反対の大儀名分として掲げている。「朝鮮日報」は、脱原発政権によって原発産業の売上が2016年の27兆ウォン(約2兆7500億円)から2020年には22兆ウォン(約2兆2400億円)に減り、中小企業が倒産するという主張などを前面に掲げて同調している。しかしこの期間の売上減少は、4兆1000億ウォン(約4180億円)から9000億ウォン(約9170億円)に減ったUAEへの原発輸出額の減少がほとんどを占めている。にもかかわらず脱原発がすべての問題の根源だとし、新ハヌル3、4号機の建設などを主張している。

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の2022年エネルギー展望報告書は、2030年までに毎年1200兆ウォン(約122兆円)規模の再生可能エネルギーへの投資が予想されると述べている。しかし尹政権は原子力への集中を掲げ、持続可能な再生可能エネルギー市場への投資はむしろ減らす雰囲気だ。問題は、既存の原発の稼働延長と一部の新規原発建設をもってしても、長期的な原発環境の維持は難しく、対策もなく膨れ上がる使用済み核燃料の問題は、むしろ対立ばかりを引き起こし続けるだろうということだ。原発産業の持続可能性を脅かす最大の要素は、依然として未解決の安全と環境問題だ。これこそ、時代に逆行するK-原発政策が懸念される理由だ。正義にもとづく転換と百年の大計を見通す、より合理的なエネルギー政策が切実に求められている。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジョンユン|原子力の安全と未来代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1043414.html韓国語原文入力:2022-05-18 18:17
訳D.K

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