尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の執務室と官邸の移転をめぐり、右往左往が続いている。尹氏が自ら官邸の移転場所として発表した陸軍参謀総長公館が「老朽化」しているとの理由から、突如として外相公館を新候補地として検討するというのだ。批判の多い執務室の龍山(ヨンサン)移転に続き、拙速移転問題を再び引き起こしたことにはあきれるばかりだ。
政権引き継ぎ委員会の関係者は20日、外相公館を「(大統領の臨時官邸の)最も合理的な代案と考えて検討をはじめた」と明らかにした。当初の候補地だった漢南洞(ハンナムドン)の陸軍参謀総長公館については、「1975年度に建てられたため非常に老朽化しており、総合的に多くの不合理な点が発見された」との理由をあげた。「雨漏りもしており、ほとんど建て替えなければならない水準だ」という。尹次期大統領が先月20日に「陸軍参謀総長公館を使うことにした」と自ら発表してから1カ月が経って、ようやくこのような問題を発見したというのは納得しがたい。官邸移転計画の変更が繰り返されていることで、尹次期大統領が就任後もかなりの期間、瑞草洞(ソチョドン)の自宅から通勤することになり、市民の交通の不便などを招くという事態はさらに長引く可能性がある。臨時官邸が外相公館に確定すれば、外交使節などを迎える外相公館も新たな場所を探して移転しなければならない。国防部の敷地に建設する予定の新大統領官邸が完成すれば、官邸は再び引っ越さなければならない。不必要な連鎖移動が続くわけだ。
5月10日に合わせた執務室移転に重ねて自信を示してきた引き継ぎ委は、いまだに新たな執務室の青写真も公開できずにいる。国防部の主要部署がスペースを空けられるのは、28日の韓米合同演習の本演習の終了後だ。執務室を何階に置くかもまだ確定していない。このような状況で来月20~21日ごろに予定される韓米首脳会談は、一体どこで開催されるのかとの記者団の問いに対し、この日引き継ぎ委の関係者は「会談そのものが確定していない状況では、場所に関する事実関係で発表できるものはない」として回答を避けた。引き継ぎ委は、外相公館をはじめ国防コンベンションセンター、戦争記念館、国立中央博物館、漢南洞のハイアットホテルなどを候補地として検討しているという。
「青瓦台(現大統領府)には一日たりとも入らない」という尹氏のこだわりから始まった執務室と官邸の拙速移転は、税金の無駄使いや外交の混乱などの後遺症の長期化を招いている。就任前から人に耳を貸さず、強引に推し進める態度に対して国民の憂慮が高まっていることを、尹氏は肝に銘じてほしい。