軍事的に優勢なロシアが弱いウクライナを先制侵攻したという点で、今回の戦争の善悪は、すでに確実に識別されている。いかなる状況でも、どのような目的でも、軍事的な方法を取ってはならないという命題は、今回の事件を通じて国際社会に広く拡散した。ロシアに対する国際社会の一方的な非難の世論がその証拠だ。
中国の立場はあいまいだ。ロシアのウクライナ侵攻について、中国の指導者と外交に関係する人々が示す立場は、概してこのようなものだ。「すべての国家の主権と領土は尊重されなければならず、国連憲章は守られなければならない。ウクライナ問題には複雑で特殊な歴史的理由がある。対話と交渉を通じてバランスを作らなければならない」。誰を批判するのか、誰の肩を持つのか、よくわからない。国連憲章とは何か。
これを読み解いてみると、このようになる。「(国連憲章に書かれているように)国際平和と安全は維持されなければならない。米国と欧州が属する北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大が、ロシアの安全保障への不安を強めた。事件の根本原因は米国と欧州にあるが、対話をすることなくウクライナを攻撃したロシアも評価できるとはいえない」
中国はなぜ、このようにあいまいに言うのだろうか。すぐには見捨てられない友達が村でつまはじきにされる行動をとった時、どのような立場を取らなければならないのかが、中国の悩みだったはずだ。友達を頑としてかばえば、自分も同じく一緒に批判を受けることになり、反対に友達を強く批判すれば、本当に必要な友情関係にひびが入ることになるだろう。
ロシアの肩を持たなければならないが、米国と欧州に完全に背を向けられない状況のため、中国はいずれもあいまいに批判する方法を選んだ。外側から見ると苦しいが、中国の立場としては、それなりに合理的なアプローチなのかもしれない。こうした両方を非難する態度のため、中国はロシアの行為をまだ「侵攻」と表現していない。
本当の中国の本音を把握する方法は別にある。中国当局が住民にどのようなシグナルを送っているのか、あるいは、どのようなシグナルを遮断しているのかを見るのがいい。特に、後者が重要だ。
ウクライナ侵攻直後の先月26日、南京大学の孫江教授ら中国の歴史学者5人が、今回の事件を「不正義の戦争」だと批判する立場表明文をオンラインに掲載したが、わずか2時間で削除された。教授らは「核兵器保有国であるロシアが、弱いウクライナを相手に戦いを挑んでいる。戦争で蹂躙された経験を持つ国家として、ウクライナ人民の苦痛に共感する」と主張した。12日には、中国国務院傘下の研究所の胡偉副理事長が、「今回の戦争に漁夫の利はない。中国は主権と領土の尊重という一貫した立場を考慮し、中立の立場を捨て、世界の多数の国家の側に立たなければならない」という内容の文章を、米国カーター・センターが発刊する「米中認識モニター」というウェブマガジンの中国語版に掲載した。この文章が中国のオンライン上で注目を集めると、すぐに中国国内から該当のサイトに対するアクセスが遮断された。二つの文章のどちらも刺激的でも扇動的な内容でもなかったが、中国当局はこれを受け入れなかった。
過去の戦争では「ビラ」を散布して世論戦を行っていたとすれば、現在の米国とロシア、中国は、情報機関で生産された「情報」などを連日オンラインに掲載し、世論戦を展開している。中国の主張のなかには傾聴に値する内容もなくはない。特に、米国がイラクとアフガニスタンなどで戦争を続けていたと批判する部分は、米国はもちろん、イラク戦争に派兵した韓国にとっても痛い。
にもかかわらず、中国は世論戦では後退せざるをえない。当局のメディア統制のためだ。見せたいものだけを見せて、見せたくないものは遮断する政策の限界だ。
チェ・ヒョンジュン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )