著名な「悪童」であるテスラの創業者イーロン・マスク氏が、ロシアと中国に対して明確に相反する態度を示し、注目を集めている。ウクライナを侵攻したロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しては「勝負しよう」と毒舌を飛ばしたが、同じ権威主義国家である中国には、何度も機嫌を取る態度を示したのだ。
普段から様々な奇行や毒舌により世界の人々の注目を集めてきたマスク氏は14日、自身のツイッターを通じて、プーチン大統領に「一対一の決闘を挑む」とし、「賭けるのはウクライナ」だと述べ、嘲弄混じりの挑戦状を投げつけた。彼は、プーチン大統領の名前はロシア語で書き、ウクライナという単語はウクライナ語で書いた。マスク氏は「プーチンが、もし容易に西側に屈辱感を抱かせることができるのなら、私の挑戦も受け入れるだろう」とし、「しかし、彼はそうしないだろう」と付け加えた。
マスク氏は、ロシアがウクライナを侵攻した直後、通信施設が破壊されたウクライナのために衛星インターネットサービスの「スターリンク」を支援するなど、ウクライナを支援している。
世界最高の富豪の一人であるマスク氏の挑発に、プーチン大統領の側近が迎え撃った。ロシア連邦宇宙局のドミトリー・ロゴージン局長は、自身のツイッターでマスク氏を「小さな悪魔」と呼び、「お前はまだ若造で弱い。私と対決するにも及ばない。時間の無駄にすぎない」と書いた。
しかし、マスク氏は、ロシアの侵攻を非難しても、米国と欧州が主導する制裁に参加しない中国に対しては、正反対の態度を示してきた。彼は昨年7月、中国の習近平国家主席が中国共産党創立100周年を迎えて行った演説の一部を自身のツイッターに引用し、「中国が成し遂げた経済的な繁栄は本当に驚くべきものだ。特にインフラは、直接行って見てみることを勧める」とコメントした。昨年3月の「中国中央テレビ」(CCTV)のインタビューでは、「中国の未来は偉大であり、世界最大の経済国として大きく繁栄するだろう」と称賛した。テスラは昨年12月末、米国と中国が新疆ウイグル自治区の人権問題で対立するなか、ウイグル自治区の首府ウルムチに初の代理店を開き、「中国の味方」だという議論を呼んだ。
マスク氏がこのような態度を示す理由は、テスラの売り上げ構造のためだ。テスラが先月、米国証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、同社の昨年の中国での売り上げは138億ドル(約1兆6400億円)で、総売上高(538億ドル、約6兆3800億円)の25.7%を占めた。米国が240億ドル(約2兆8500億円、44.6%)と1位で、その他として処理された残りの国は160億ドル(約1兆9000億円、29.7%)だった。
特に、中国での売り上げは、2018年以降、毎年ほぼ2倍増加するなど、総売上高に占める割合も急増している。2018年のテスラの売り上げでは、中国の割合は7.9%だったが、3年後の2021年には25.7%にまで上昇したのだ。このスピードが維持されるのなら、今年のテスラの売り上げに占める中国の割合は30%に達すると予想される。特に、中国人の強い愛国主義的な消費性向は、世界的に有名だ。昨年は、人権問題を理由に新疆ウイグル自治区の綿花を使わないと宣言したグローバル企業に対する不買運動が起きた。
テスラは昨年2月、中国の市場管理監督総局の公の場での叱咤にも、反論することなく応じた。当時、中国当局は、テスラの関係者を夜遅くに呼び出し、「約談」(予約面談)を行い、バッテリーの発火、スピード異常、ワイヤレスのソフトウェアのアップデートなどの問題点を指摘した。テスラは「中国政府の指摘事項を誠実に履行する」と答えた。