「軍の義務服務期間延長と関連した草案を早期に出す」
先月24日、ロシアがウクライナを侵攻してから一カ月が経過する中で、台湾の邱国正国防部長(国防相)が23日、台湾立法院(国会)の外交・国防委員会で軍の服務期間を延長する意向を明らかにした。邱国防部長が「年内に結論を出す」と明らかにし、国民世論もこれを支持しているため、近い将来延長が現実化する可能性が高い。
韓国と共に東アジアの代表的徴兵制国家であった台湾は、2018年末、1年だった軍の義務服務期間を4カ月に大きく減らした。服務期間がわずか4カ月ということは、実際の服務より軍事訓練を受けるという意味が強く、台湾の徴兵制が事実上廃止されたのではないかとの指摘が続いた。台湾政府は、軍の義務服務期間を短縮しただけと説明してきたが、現在台湾軍は募兵制を通じて募集された職業軍人で運用されている。
施行後わずか4年しかならない兵役制度に再び手を加えるという話が出始めたのは、ロシアが先月末にウクライナを侵攻したためだった。実現可能性が低いと予測されたウクライナ戦争が現実となり、中国による台湾侵攻も不可能なシナリオではないとの憂慮が高まった。そのうえ、米国など北大西洋条約機構(NATO)は「ややもすれば第3次世界大戦に戦争が拡大する可能性が大きい」として、ウクライナに対し制限的な軍事支援に留まっている。
実際、こうした様子を目撃した台湾人は、中国が侵攻しても米国は直接助けられないかもしれないと懸念し始めた。台湾のシンクタンクである「民意教育基金会」(世論教育財団)が22日に発表した世論調査結果によれば、「台湾で有事事態が発生した時、米軍が参戦すると思うか」という質問に、34.5%だけが参戦すると答えた(参戦しないが55.9%)。昨年10月には同じ質問に対して65.0%が「参戦する」と答えたのに比べれば、30.5ポイントも肯定応答が減ったのだ。米国は1979年に中国と国交を正常化し、相互防衛義務を明記した米-華(中華民国)相互防衛条約を廃棄し、武器支援などができるという内容を含めた台湾関係法を制定した。その後、米国は台湾が侵攻を受けた場合に介入するか否かという質問に対し、肯定でも否定でもなく「曖昧性の原則」を維持した。
台湾を取り巻く安保憂慮が高まり、蔡英文総統は今月14日、国防部に対し現行の「4カ月の軍事訓練」期間を延長する方案を検討するよう指示した。これに伴い、邱国防部長がこの日「軍の服務延長計画を検討している」と明らかにしたのだ。邱国防部長は「軍の服務期間の延長計画が確定しても、1年間の公示を経た後に実施されるだろう」と述べた。
朝鮮戦争が進行中だった1951年から徴兵制を施行した台湾は、長らく陸軍2年、海・空軍3年の兵役制度を維持してきた。2008年に軍服務期間を1年に短縮した後、2012年には出生率の減少と中国との緊張緩和などを理由に服務期間を4カ月に短縮し、事実上の募兵制に切り替えることを決めた。当初は2015年から実施する予定だったが、募兵制の導入にともなう兵士確保問題のために制度の施行が3年ほど遅れた。2018年12月26日、徴兵制で入隊した412人が全員除隊したことにより、事実上徴兵制が幕を下ろした。
台湾の国民も軍服務期間の延長に同意している。民意教育基金会の22日の世論調査結果によれば、4カ月の軍事訓練を受けることが合理的だと思うかという質問に、14.8%が合理的だと答え、76.8%が不合理だと答えた。また、服務期間を最短1年以上とすることが合理的と思うかという質問に75.9%が同意した。
台湾は軍の服務期間延長を推進しているが、それよりさらに優先的に推進しているのは予備軍制度の強化だ。徴兵制を事実上復活することに相当な政治的論議が予想されるためだ。台湾総統部の張惇涵報道官は14日、ブリーフィングで「軍服務の延長はまだ総統部で検証されていない」として「現在最も至急なことは、予備軍制度の強化だ」と話した。