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[寄稿]韓国の数学コミュニティの国際的地位

登録:2022-02-10 07:44 修正:2022-02-10 08:55
キム・ミンヒョン|エディンバラ国際数理科学研究所長
2010年の国際数学者会議でフィールズ賞の受賞者に選ばれたベトナムのゴ・バオ・チャウ博士(右)=ハイデラバード/AP・聯合ニュース

 多くの学術共同体において、数学者は特に強いグローバルな連帯意識を持っているという印象をよく受ける。彼らは、日常的に世界の津々浦々の同僚とコミュニケーションを取りながら、研究を進めている。数学をテーマにした国際的な学術イベントもかなり多い。コロナ時代において、すべての研究セミナーと学会がオンラインで行われ旅行が必要なくなると、大学の自主セミナーも全世界から来た参加者で構成されることが日常化した。また、北米や欧州のある程度の水準の大学の数学科の研究チームは、国連を彷彿させる国際的な多様性を持っている。このような理由のためか、ドイツのベルリンに事務局を置く国際数学連合は、かなり前から数学研究者の尊敬を受ける団体としての位置を保っており、世界の数学文化の形成の過程に様々な強い影響力を行使している。

 この団体のイベントのなかでは、4年に1回開催される国際数学者会議が代表的であり、様々な活動において、開発途上国の数学の研究と教育を向上させる事業が特に重要だ。国際数学連合の会員は、個人ではなく、数学の力量をある程度備えている約80カ国の代表的な数学学会だ。たとえば、韓国の大韓数学会が会員のうちの一つだ。連合は加盟国の数学者の意見を取り集める過程を経た後、執行委員会そして全体会議を通じて世界の数学の発展を図る決定を下す。

 少し変わっている点として、数学連合は会員を5つの等級に分けて分類する。等級は数学の研究能力と世界の数学界に対する貢献度を根拠に分けられるが、等級に応じて全体会議で投票する際に加重値が付与される。そのため、1等級の国家は票を1つ行使し、最も高い5等級の国家は票を5つ持っているので、各国の数学コミュニティはこのような分類を重要視せざるを得ない。したがって、昨年11月に始まった数学連合の審査過程が今年1月末に終わり、1日に韓国が4等級から5等級に昇格したという決定が発表された時、私は外国で活動する数学者として、韓国の数学界のすべての構成員に祝いを送りたかった。数学連合の5等級国家は合わせて12カ国しかなく、通常は科学の先進地域とみなされる西欧でも、英国、フランス、ドイツ、イタリアの4カ国だけだ。

 実は、韓国の数学界の全体的な現況を知る者にとっては、今回の昇格はさほど驚くべきものではない。たとえば、(少々無知な)定量的な観点だけで評価した韓国の数学研究者の学問的な生産力は、かなり前まら世界10位圏あたりに入るようになっており、多くの国際数学界のリーダーが韓国で開催される学会に何回か参加したことがあるほど、韓国の数学は世界の数学の主流とともに歩んでいる。能力が優れている研究者がいる研究機関や大学の数学科は国全体に広がっており、韓国出身の若い数学者は数学の中心地で目立つ活躍を続けている。

 国際数学連合は、数学者の最高の栄誉とされるフィールズ賞を授与する機関としても有名だ。韓国では、韓国人のフィールズ賞の受賞者が出ることをかなり期待している印象を受ける。しかし、数学研究文化の健全な発展の観点では、今回の等級昇格がフィールズ賞の受賞よりはるかに重要だ。あまりにも数が少ないフィールズ賞の受賞者で数学の能力を評価することは、あたかも億万長者の数を数えて国の経済状態を見積ることようなことだ。それに対し、数学連合の国家等級の上昇は、経済全体の均衡の取れた成長を示す指標に比することができる。参考までに、フォーブスによると、世界の億万長者の数は約2700人だという。それに比べ、これまでフィールズ賞を受賞した人の数は、合わせて60人だ。

 もちろん、賞を重要視する人々の観点が間違っているということではない。たとえば、経済的な条件も厳しく数学連合の国家等級も1等級と最下位であるベトナム出身のゴ・バオ・チャウが2010年にフィールズ賞を取ったことは、大きな重要性を持っている。その国の教育と文化の特異な強さを示唆するところがあり、ゴ・バオ・チャウがそのような業績を足場にベトナムの数学の発展に大きく寄与することは明らかだ。彼は現在、米国のシカゴ大学の碩座教授でありながら、ベトナムの数学研究所の所長も兼任しており、毎年かなりの期間をベトナムで過ごし、その社会教育と学術活動の質的な向上のために努力している。

 しかし私は、韓国の数学コミュニティの全体的な成熟度への関心のほうがはるかに強い。韓国ほどの水準の国からフィールズ賞の受賞者の排出を急いで待つ必要はまったくないという事実を、今回の国際数学連合の等級上昇が改めて証明したようだ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ミンヒョン|エディンバラ国際数理科学研究所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1030441.html韓国語原文入力:2022-02-10 02:31
訳M.S

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