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[コラム]韓国の大統領選世論調査、結果が大きく分かれるわけは

登録:2022-01-20 08:37 修正:2022-01-20 10:03
//ハンギョレ新聞社

 歴史上最も失敗した選挙世論調査として、1936年11月の米大統領選挙の結果予測を大きく外した「リテラリー・ダイジェスト」の事例がある。1916年の選挙以来、米大統領選挙の結果予測に定評があった同誌は、アルフレッド・ランドン(共和党)候補が55%の支持を得て、41%の支持にとどまるフランクリン・ルーズベルト(民主党)を破り、当選すると予想した。しかし、結果は正反対だった。再選に挑戦したルーズベルトが60.8%を得て当選した。この大失敗は同誌を廃刊に追い込んだ。

 同誌は自動車登録名簿や電話帳などから住所を把握し、同年9月6日から10月31日まで1000万枚を超える仮想投票用紙を送った。そのうち236万人から返信があったという。一方、ギャラップは5万人を選び、そのうち1500人から回答を得たが、ルーズベルトが56%の支持率で当選するだろうと正しく予測した。これを見る限り、「標本の数」はある規模を超えれば、世論調査の正確性において重要な要因ではないといえる。

 1988年のフェヴェリル・スクワイアの研究によると、「リテラリー・ダイジェスト」の標本はルーズベルトの支持率が高い貧しい人々を体系的に排除した問題もあったが、ランドンを支持した人々がより積極的に回答に参加した点も予測を失敗に導いたという。選挙後のギャラップの調査結果を見ると、雑誌の仮想投票用紙が届いた人の中でも55%対44%でルーズベルト支持者が多かった。しかし、回答者の分布はこれと大きく違っていた。

 最近の第20代韓国大統領選挙の世論調査の結果が、調査によって大きく分かれている。同じ日、または一日差で出る調査結果が誤差範囲を大きく超えて1位と2位が入れ替わることが多い。1月11日~13日のギャラップの調査では、共に民主党のイ・ジェミョン候補37%、国民の力のユン・ソクヨル候補31%という支持率が、1月9~14日のリアルメーター(「オーマイニュース」依頼)調査ではイ候補36.7%、ユン候補40.6%に逆転した。また、1月14~15日の韓国社会世論研究所の調査では、イ候補36.2%、ユン候補41.4%だったが、1月16~17日のエムブレイン・パブリックの調査(「ニュース1」依頼)では、イ候補が35.6%の支持率で、34.4%を記録したユン候補に再び逆転した。

 世論がそれほど早変りしているのだろうか。そうではなさそうだ。どのような政治スタンスの人が回答に積極的に参加したかをみれば、謎が解ける。世論調査会社は性別や年齢、地域別有権者分布を考慮して標本を収集する。ところが、そうやって収集した回答者の政治スタンスは調査によって大きく異なる。

 イ・ジェミョン候補37%、ユン・ソクヨル候補31%の支持率が出たギャラップの調査では、標本のうち保守層が25.1%、進歩層が24.0%で保守層の割合が1.1%ポイント高いだけだった。しかし、イ候補が36.7%、ユン候補が40.6%の支持率を記録したリアルメーターの調査は、保守層が28.4%、進歩層が21.2%で、保守層の割合が7.2ポイント高かった。韓国社会世論研究所の調査も、保守層の割合が10.8ポイントも高かった。進歩層の約60%がイ候補を、保守層の約60%がユン候補を支持すると仮定すれば、標本でどちらかの割合が1ポイント大きい場合、支持率は0.6ポイントほど高い結果になる。

 イ・ジェミョン候補が35.6%、ユン・ソクヨル候補が34.4%の支持を獲得した1月16~17日のエムブレイン・パブリックの調査では、標本で進歩層の割合が保守層より2.6ポイント高かった。このような政治スタンスの分布も最近では珍しい。標本収集の過程でこのような弱点を誰がいかに解決するかが注目される。この問題が解決されるまでは、標本の偏りがあるという点を踏まえて結果を見極めるしかない。

チョン・ナムグ論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1027971.html韓国語原文入力:2022-01-19 18:59
訳H.J

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