ほとんどお流れになったと思われていた進歩勢力の大統領候補の一本化の議論が、勢いを増している。5つの進歩政党(労働党・緑の党・社会変革労働者党・正義党・進歩党)と民衆予備選挙運動本部、民主労総で構成された大統領選挙共同対応機構は12日、12月末までにそのための議論を終えることに合意した。長い日照りを終わらせる恵みの雨のような知らせだ。
これまで進歩勢力が分裂していた弊害は、あまりにも大きかった。進歩の多様性は当然必要だが、領域と力を増すのではなく、むしろ縮小させた。進歩支持層の半分以上が共に民主党の票に切り替わり、残りは票が分かれ、国会と地方議会の権力を保守両党に渡した。これにより、既得権同盟はさらに堅固になり、保守両党が敵対的共存をして、ほとんどすべての価値と権力を分け持った。この構造のなかで、労働者・民衆は徹底的に排除され続け、過度に収奪され、不平等は深化し、多くの人々が生存の危機に直面し、改革はつねに留保されたまま、既得権の富と権力はますます増大した。民主主義も、直接民主主義や民衆民主主義と結びつけられないまま、保守両党の権力を強化する形式機構に転落した。運動はつねに孤立し、九天を飛びかう冤魂の恨みが極まったうめき声のように、社会的弱者と労働者・民衆の血の混じった声は、垣根の外でぐるぐる回るだけだ。
客観的条件は熟したが、進歩の主体的な力量との乖離があまりにも大きいのが、現在の局面で進歩勢力が直面している最大の問題だ。不平等の極大化、気候危機と生態系の危機、第4次産業革命による労働の危機、断続的なパンデミックの危機、公論の場の崩壊と民主主義の危機といった5大危機により、世界は破局の直前にある。この危機を乗りこえるには、脱資本と脱成長に切り替わるしかない。どんなに良い改革案でも商品化して無力化し、科学技術をはじめとする人間のほぼすべての行為を貨幣の増殖と利潤追求に向かわせる現状では、資本主義と新自由主義体制を解体し新しい社会に移行しないかぎり、いかなる対策も取り繕いにすぎない。このような代案を急進的で非現実的だと考える人々も、続々と体制転換を受け入れている。にもかかわらず、この地の進歩勢力は、その目標に向けて一歩も進むことができずにおり、むしろ既得権層に投降したり、吸収されたりしてきた。そのため、敗北主義、冷笑主義、組合主義が、進歩陣営を押さえつけている。
この状況での一本化の成否の結果は両極端だ。ある政党や政派の欲と誤った判断で失敗すれば、進歩政党は壊滅するだろう。しかし、今回の大統領選で一本化し、機械的な結合を越え、一つの隊列として保守両党とは異なる政治の姿をうまく見せてくれるのであれば、地方議会から3分体系が可能になるだろう。これを媒介に労働者・民衆の政治勢力化を実体として作動させ、オルタナティブな政治の真の姿を大衆に刻印させ、衛星政党を禁止させるのであれば、次の総選挙では最小20議席から4分の1ほどを占め、体制転換の重大な転機を作ることができる。変革運動が政治を左派的に牽引し、進歩政治が運動を高揚する好循環の道が開かれる。
今の危機の最も大きな被害者は労働者・民衆だ。上位10%が所得の半分と資産の8割を占有する状況で、新型コロナパンデミックが起こると不平等はいっそう深化した。デジタル革命とコロナ禍に続き、第4次産業革命によりデジタル化とロボット化が推進され、多くの労働者が解雇されたり、不安定労働者、プラットフォーム労働者、幽霊労働者(ghost worker)に転落した。現在の非正規職の労働者は、公式には約848万人、非公式では1100万人に達しており、これらの人々の平均月給は172万8000ウォン(約16万5000円)に過ぎない(『統計から見た韓国の非正規労働者』)。昨年も労働災害だけで2062人が死亡した。「コロナ禍以後、自営業者は66兆ウォン(約6兆3000億円)を超える借金を抱え込み、1日平均で1000店ほどが廃業した」(自営業非常対策委員会の記者会見文)。今日も数多くの国民が、借金で、事故で、新型コロナで、寂しさと怒りで死ぬだろう。
進歩勢力はいつまでこれらの人々の死と血の涙と絶叫を無視するのか。体制転換への良い機会が開けたにも関わらず、いつまで目の前の懸案や政派の利益ばかりに執着するのか。今回も進歩の連帯に失敗すれば、これに責任がある者は歴史の罪人であり、社会的他殺の傍観者として残ることになるだろう。
イ・ドフム|漢陽大学国語国文学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )