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[コラム]韓国の与野党大統領選候補は大局観を見せてほしい

登録:2021-12-21 01:48 修正:2021-12-23 09:34
共に民主党のイ・ジェミョン大統領選候補と国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補が今月19日、ソウル龍山区の孝昌公園で行われた梅軒尹奉吉義士殉国89周忌追悼式で、ファン・ギチョル国家報勲処長の追悼の辞を聞いている=共同取材写真

 これまでいくつかの大統領選挙を経験したが、今回ほど絶望的な選挙はなかったと断言できる。自分が出した公約を取り消すほど支持率が上がる候補と、現政権に対する「復讐の達成」が唯一の出馬理由と見られる候補間の対決は、「政策」ではなく家族をめぐるスキャンダルの攻防レベルを抜け出せずにいる。激しい暴露戦の中で、真剣な政策論議がどれだけ注目されるかは分からないが、朝鮮半島をめぐる国際情勢があまりにも混乱しているため、「意味のある討論」が交わされるべきだと思われる争点をいくつかまとめてみた。

 第一に、韓国唯一の同盟である米国は、現在「二つの戦線」で厳しい対決に直面している。一つは中国と対立する台湾海峡戦線、もう一つはロシアと対立するウクライナ戦線だ。台湾海峡と関連し、中国が本当に「数年内に」台湾を侵攻するかどうかについては、誰もはっきりした答えを出せない。しかし統一してこそ「偉大な中国の夢」を達成できると考える習近平中国国家主席が「誤った判断」を下す可能性は完全には排除できない。中国が台湾を侵攻することまで想定し、それぞれの場合に備えたシナリオを用意しておかなければならない。

 隣国日本は今年4月の米日首脳会談で「台湾海峡の平和と安定」に言及し、対応策作りに総力を傾けている。国家安全保障戦略の改定や敵基地攻撃能力の確保、防衛予算の拡大など、最近の動きはいずれも台湾事態に対応するためのものだ。日本自らの軍事能力を強化することで米日同盟をアップグレードし、その力で対中抑止力を確保することを目指している。

 韓国も5月の韓米首脳会談で「台湾海峡」に触れたが、共同声明の発表直後、「一般論的言及にすぎない」としてその意味を縮小した。これと関連して、唯一の意味ある動きは、軽空母の保有に対する文在寅(ムン・ジェイン)政権のこだわりだ。3日、軽空母予算は政府案どおり71億8800万ウォン(約6億8500万円)で国会議決された。現政権が公言した通り、2033年に3万トン級の軽空母戦力を確保することになれば、米国は台湾での有事の際、この戦力を活用し、韓国が軍事的貢献をすることを要求するだろう。日本はすでに保有している2万トン級の軽空母2隻を動員し、東シナ海や南シナ海を越えてインド洋まで行って、米国と合同演習を行っている。手に入れた軽空母をどう活用するかをめぐり、韓国の国論は分裂し、厳しく対立するだろう。台湾有事の際、軽空母を東シナ海沖に派遣し、米軍を「後方支援」するという覚悟がない限り、この事業はやめた方が良い。

 第二に、戦時作戦統制権の移管問題だ。「東亜日報」15日付に掲載されたロバート・エイブラムス元在韓米軍司令官のインタビューを見て、驚きを禁じ得なかった。韓米は2015年11月、「時期」ではなく「条件」に基づいた戦作権の移管に合意した。同氏は韓国が条件を満たせる時期を、なんと「2028年ごろ」と予測した。在韓米軍は中国の目前にそびえる鋭い凶器であり、韓国軍は世界で6~7位に成長した強軍だ。米国の政界で、米中の間で絶えずバランスを取ろうとする韓国を「同盟の枠組み」の中に留めておくためにも、移管条件を難しくすることで、結局なかったことにしようとする暗黙の合意が存在するのではという疑念を抱かせる。この状況を受け入れるか、それともさらなるいばらの道を受け入れ、「条件」ではなく「時期」に応じた転換へと合意を修正するか(容易ではないだろう)を決めなければならない。文在寅政権はどうすることもできず、「条件」を満たすために国防費ばかり増やした。

 第三に、先月の「尿素水事態」で明らかになった「経済安全保障」問題だ。米国はこの問題に対応するため、来年初めに「インド太平洋経済枠組み」を構築する計画だ。この構想は韓国が先日加入意思を明らかにした「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」に代わるものとして編み出した苦肉の策だ。この枠組みの登場で、CPTPP加盟の意味がなくなる可能性もある。老練なアプローチが必要だ。

 そして最後に。両候補の話をいくら聞いても、枝葉末節だけで、大韓民国をどのような国にしたいのか、ビジョンが見えてこない。分裂した心を一つにまとめられる「価値」と真摯な大局観を示してほしい。

//ハンギョレ新聞社
キル・ユンヒョン | 国際部長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1024091.html韓国語原文入力:2021-12-2018:37
訳H.J

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