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[記者手帳]韓国は米中対決を“超越”できるだろうか

登録:2021-04-13 06:01 修正:2021-04-14 10:30
米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席。バイデン大統領が副大統領座代の2013年撮影されたもの=北京/AP・聯合ニュース

 長い間文在寅(ムン・ジェイン)政府の統一外交特別補佐官を務めたムン・ジョンイン世宗研究所理事長が11日、朝日新聞とのインタビューで提示した「超越的外交」という表現が再び物議を醸している。「朝鮮日報」は12日付で、「こうした外交戦略で、韓国が米国の『二流同盟』に墜落する恐れがある」と酷評し、社説ではキム・ジュンヒョン国立外交院長が最近発行した著書で使った韓米同盟「中毒」発言までひっくるめて、「韓国が70年間歩んできた平和繁栄の道から離脱するのではないか、懸念される」と書いた。バイデン大統領就任後、米中競争がさらに激しくなり、文在寅政権の対米政策が、自分たちが正しいと考えるものとは違う方向で展開されるのを恐れ、警戒感を強めている保守側の雰囲気が窺える。

 ムン理事長が提示した「超越的外交」という概念自体は「朝鮮日報」の酷評を受けるような強引な主張とは思えない。ムン理事長は米国に対し“一極集中外交”を展開する日本に向け、「最近の日本外交はリーダーシップを十分に発揮できていない。受動的で過度に米国に依存している」と苦言を呈し、新冷戦時代に韓日が共生するための秘策として「超越的外交」という概念を提示した。「米中いずれかの陣営に属するのではなく、多国間協力と地域統合の新しい秩序をつくるなかで米中の衝突を防ぎ、外交的に動ける空間を確保する積極的な外交」を繰り広げようという意見だ。

 問題はこの提案の実現可能性にある。今年1月末に発足したジョー・バイデン政権は現在、米中対立局面を民主主義と権威主義の運命が分かれる人類史的「変曲点」(inflection point)とみなし、民主主義的価値を共有する同盟が結集すべきだと訴えている。このため先月12日に「クアッド」首脳会議を開き、韓米日3カ国協力を強化するために腐心している。こうした中、米国の核心同盟である韓国の外交安保政策に大きな影響を及ぼす著名人が「一方的に米国に肩入れしてはいけない。日本も賛同してほしい」と訴えたことで、韓米同盟に対する米国の懸念はさらに深まるものと予想される。2010年、中国と尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる領土紛争を経験した後、日米同盟を画期的に強化した日本がこの訴えに応じる可能性も極めて低いとみられる。

 大韓民国の70年間の歴史は、ムン理事長のように「韓国が独自路線で自らの運命を切り開ける」と信じる人々と、「風がどこから吹いてくるかよく見て、その流れに乗るべきだ」と信じる人々との対立の歴史と言える。前者は、大韓民国の独立には連合軍の功も大きかったが、我々の独立運動家が流した血によって実現できたものだと考えた。金九(キム・グ)や呂運亨(ヨ・ウンヒョン)、金圭植(キム・ギュシク)の道だ。後者は大韓民国の独立は連合軍の勝利のおかげだと考え、冷戦の遠心力という「厳然たる現実」をいち早く受け入れた。李承晩(イ・スンマン)元大統領は1948年4月、祖国の分断を防ぐために南北交渉に出る金圭植に「大勢に蒙昧であるという嘲笑を免れない」と酷評した。冷戦が終わった後、この30年余りの間、金大中(キム・デジュン)元大統領の「太陽政策」や盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の「朝鮮半島の均衡者論」、文在寅大統領の「朝鮮半島平和プロセス」が続いていたが、無念にも新冷戦の入り口に差し掛かった今まで、我々は分断の克服という民族史的課題をいまだ達成できていない。そのためか、「韓国外交のさらなる可能性を考えよう」という主張に、「大勢に蒙昧」という非難が70年前のあの時のように繰り返されている。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/990656.html韓国語原文入力:2021-04-12 18:17
訳H.J

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