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[コラム]天下三分の計と米中露の三角関係

登録:2021-12-07 08:20 修正:2021-12-07 09:43
米国が中国との対決で主導権を握るには、ロシアとの関係が必須だ。三国志の「蜀呉同盟」のような「中ロ連帯」に亀裂を生じさせなければならない。ロシアの伝統的な勢力圏を米国が認めることが出発点だ。
左側からロシアのウラジーミル・プーチン大統領、米国のジョー・バイデン大統領、中国の習近平国家主席//ハンギョレ新聞社

 三顧の礼をした劉備に、諸葛亮は天下三分の計を語った。四川で蜀を建国し、呉と同盟を結び、魏に対抗しようとする戦略だ。蜀と呉が強大国の魏に対抗するには、同盟は必須だった。天下三分の計は、「蜀呉同盟」が健在である限り、維持された。しかし、呉が荊州を支配しようと呂蒙を送り関羽を殺したため蜀呉同盟は瓦解し、これに基づく天下三分の計も崩壊した。

 天下三分の計は、現代政治学の用語では勢力バランスになる。勢力バランスというものは、当事者には安定的で有利な勢力関係を意味する。3者による三角関係における2者の同盟は、当事者に有利であり、主導的な関係を意味する。力が最も強い国が残りの1国と同盟を結ぶことも、三角関係を通常は安定的にする。三角関係の主導権を握り、無理をする必要がないからだ。

 戦後の国際社会の地政学は、基本的には米国、中国、ロシアの3国によって規定されている。国力、領土、人口、軍事力で3国が圧倒的だからだ。3者の関係は激変してきた。第2次世界大戦後の「中ソ反米ブロック」は、1960年代後半の「中ソ対立」から、1970年代初めには「反ソ米中連帯」に変わった。これはソ連崩壊の基盤になった。1990年代の米国の短い一極体制後、「中ロ対米協力」の構図に変わった。これは最近になり、「中ロ反米連帯」に格上げされた。

 米国が中国の浮上の阻止を対外政策の最優先に掲げている状況において、ロシアの挑戦は激しく、両者の関係は悪化の一途をたどっている。ロシアがウクライナとの国境地帯に軍事力を構築し、来年初頭に侵攻が予想されるという米国情報当局の分析も出ている。ソ連崩壊後、米国はロシアを単なる「地域列強」として扱い、両国関係に配慮しなかった。そうした間、中国とロシアの戦略的な連帯は強化された。東海では両国の合同軍事演習も頻繁に行われている。

 ソ連崩壊後に蜜月だった米ロ関係が悪化したのは、米国がロシアの地政学的な利害の要諦、すなわち固有の勢力圏を認めないことに触発されたものだ。ソ連の領域にまで、米国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大が強行された。

 1989年のベルリンの壁崩壊後、ソ連と西側は、少なくともソ連の既存の領域にはNATOの軍事施設を設置しないということで合意し、ドイツ統一に合意した。しかし、この約束は結果的には守られなかった。ロシアが自国の伝統的な一部であり安全保障の要所だと見なすウクライナにまで、欧州連合(EU)とNATOへの加入を追求した。ロシアが2014年にクリミア半島を併合し、ウクライナ内戦まで推し進める状況になった。

 ロシアが侵略的な本性をあらわしたと批判したところで、特に意味はない。ロシアは、伝統的な安全保障政策を貫徹しようとするだけだからだ。ロシアの安全保障政策の要諦は、深い縦深の確保、すなわち、首都モスクワなどの中心地から国境をさらに遠くに広げ、緩衝地帯を確保することだ。

 米国は、クリミア半島の併合やウクライナ内戦、その前のジョージアとの戦争(南オセチア紛争)など、旧ソ連領域に対するロシアの軍事的介入に対応できなかった。米国などの西側はロシアに経済制裁を断行し強化してきたが、このような軍事的介入に直接対抗する対策はなかった。ロシアが来年初頭にウクライナ侵攻を断行するとしても、事情が変わることはないだろう。

 ナポレオンとヒトラーのロシア侵攻が災いで終わったように、ユーラシア大陸内部の旧ソ連領域は、ロシアが地政学上、圧倒的に有利な場所だからだ。ロシアはこれを決して喪失しようとはしないだろう。またロシアは、ソ連時代から豊かなエネルギーや資源などによってそれなりの自給経済圏を営んでおり、西側の制裁に対する耐性は強い。制裁が強化されれば、ロシアのエネルギーに依存する欧州も苦しむ。

 米中対決が本格化し、三角関係の変化が一時予想された。ドナルド・トランプ前大統領は、ウラジーミル・プーチン大統領に個人的な好感を示し、少なくとも「対中米ロ協力体制」が始動するのか、国際社会が神経をとがらせもした。しかし、その後の米ロ関係は悪化の一途をたどった。これに比例して「中ロ戦略的連帯」が強化された。

 米国が中国との対決で主導権を握り有利な勢力バランスを作ろうとするのであれば、ロシアとの関係回復が必須だ。三国志の「蜀呉同盟」のような「中ロ連帯」に亀裂を生じさせなければならない。ロシアの伝統的な勢力圏を米国が認めることが出発点だ。両国の首脳のバイデン大統領とプーチン大統領は、7日にウクライナ問題などをめぐって行われるテレビ会談で糸口を見つけることができるだろうか。現時点では、はるか遠いと思われる。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1022180.html韓国語原文入力:2021-12-07 02:33
訳M.S

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