タリバンのカブール入りで中央アジア情勢が激しく揺れ動く中、中国とロシアがアフガニスタン関連の協力体制を強化し、神経を尖らせている。両国が主導する上海協力機構(SCO)が、今後のアフガニスタン情勢と関連して積極的な役割を果たす可能性もあるとみられている。
中国官営の「環球時報」は16日付の社説で「他国の内政に干渉しないのは一貫した中国外交政策の原則」だとしたうえで、「中国は米国がアフガニスタンを去った後の“真空”を埋めるつもりも、西側が仕掛けた落とし穴に飛び込むつもりもない」と強調した。ただし同紙は「中国はアフガニスタンの速やかな平和と再建のため、建設的役割を果たす用意がある」と付け加えた。
中国が最も警戒しているのは、アフガニスタンの混乱が国境を接している西部の新疆ウイグル自治区に影響を及ぼすことだ。「安定したアフガニスタン」は中央アジアを貫く中国の「一帯一路」(陸・海上シルクロード)事業の前提でもある。これまで中国がテロリズム、原理主義、分離主義をいわゆる「3大悪」と規定し、これら勢力と手を切ることをタリバン側に求めてきたのもこのためだ。
実際、中国の王毅外交部長は先月28日、天津でアブドゥル・ガニ・バラダル師率いるタリバン代表団と面会し、中国の新疆ウイグル自治区を根拠地とする「東トルキスタンイスラム運動(ETIM)」に対する懸念を繰り返し表明した。王部長は「東トルキスタンイスラム運動は中国の国家安保と領土保存に直接的な脅威」だとし、「タリバンがこの団体と明確な線を引き、地域安全と平和発展のための障害物を取り除くのに積極的な役割を果たしてほしい」と強調した。
ロシアにとっても「アフガニスタンの安定化」は重要な戦略的目標だ。カブール陥落以前から、タリバンであれアフガニスタン政府軍であれ、情勢を安定化させ、混乱した状況が国境越しの中央アジア各国に広がることを防ぐのがロシアの最大の関心事だった。アフガニスタンを基盤にイスラム原理主義勢力が中央アジアまで進出する状況をロシアとしては座視できないためだ。ロシアもタリバンの帰還に積極的に備えてきた。バラダル師率いるタリバン代表団が今年3月にモスクワを訪問したのに続き、先月8日にもタリバン側の交渉団がモスクワを再び訪れた。
「アフガニスタン情勢の安定化」という共通の目標の下、中ロ両国はすでに協力体制の強化に乗り出した。今月9日から中国寧夏回族自治区で約1万人の兵力が参加する大々的な訓練を行った。両国は来月中旬、ロシアのオレンブルクで4千人以上の兵力が参加する合同対テロ訓練も行う予定だ。
両国が主導し、アフガニスタン周辺各国が参加する上海協力機構の次元での協力も進められている。上海協力機構はアフガニスタン内戦が続いた1996年4月、中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンの5カ国が参加して設立した。さらにウズベキスタン(2001年)、インド、パキスタン(2015年)も加わり、加盟国が8カ国に増えた。加盟国はいずれもアフガニスタン問題と利害関係が絡んでおり、アフガニスタンも2012年からオブザーバーとして参加している。このため、米国とNATOが離れたアフガニスタンの安定化および再建・復旧に向けた協議を上海協力機構が主導すべきだという声があがっている。