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[寄稿]過去の清算はいかに完成するのか

登録:2021-11-04 01:25 修正:2021-11-04 08:30
パク・テギュン|ソウル大学国際大学院長 
過去の清算のもう一つの方法は、真実は明らかにするが処罰はしないというものだ。これは主に「真実」と「和解」の名の下に進められた。不義を犯した人物が、正義にもとづく転換の後にも特権を維持している構造が保たれていたり、過去の清算問題が社会的に分裂や対立を引き起こす可能性がある場合は、真実を明らかにし、これを通じて無念を強いられてきた被害者の名誉を回復するというやり方だ。
5・18光州民主化運動で全羅南道庁の市民軍の状況室長を務めたパク・ナムソンさん(右)が、先日死去した盧泰愚元大統領の娘ノ・ソヨンさん(左)と息子ノ・ジェホンさんを慰めている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 時代を問わず、歴史の清算問題から自由な社会はない。特に、不幸な時期を経験し、正しい転換の過程を経た社会ではどこも、歴史問題の解決は重要な社会問題として台頭した。近現代史だけでなく前近代の歴史の中でも、元の干渉、壬辰倭乱や丙子胡乱など、長いあいだ戦乱を経験した韓国の歴史においては、過去の清算の問題は重要だった。

 20世紀になってナチスとファシズム、そして軍国主義によって不義の世界戦争を経験して以来、歴史清算問題はすべての国で最重要の社会問題となった。ナチスに協力した人々に対する処罰のためのフランスの努力、戦犯たちを処罰するための「ニュルンベルク裁判」と「東京裁判」がその代表的な例だと言える。韓国でも大韓民国政府の樹立直後、歴史清算のため憲法に規定された「反民族行為特別調査委員会(反民特委)」が設置された。

 1945年以降の冷戦秩序の出現は、帝国主義時代の残滓の清算を困難にした。また冷戦下において、韓国をはじめとする発展途上国は、長きにわたって全体主義が支配した。そして全体主義の下、多くの人権蹂躙事件が発生した。アルゼンチン、チリ、スペインなどとともに韓国でも、この問題を解決するための歴史委員会が設立された。発展途上国とは異なるケースだが、南アフリカでは、長年の人種差別による人権蹂躙問題を解決するために、様々な措置が取られてきた。

 では、なぜこのように歴史を清算するのか。何よりも過去の不義の事件をきちんと明らかにすることによって、今後そのようなことが起こらないようにするためだ。そのために様々な方策が講じられてきた。裁判を通じて不義の戦争に協力したという事実と人権蹂躙の状況を明らかにし、これを処罰するというのが代表的な措置だった。韓国でも調査と裁判が行われたが、政府によって全ての措置が水泡に帰した。

 過去の清算のもう一つの方法は、真実は明らかにするが処罰はしないというものだ。これは主に「真実」と「和解」の名の下に進められた。不義を犯した人物が、正義にもとづく転換の後にも特権を維持している構造が保たれていたり、過去の清算問題が社会的に分裂や対立を引き起こす可能性がある場合は、真実を明らかにし、これを通じて無念を強いられてきた被害者の名誉を回復するというやり方だ。

 韓国の場合はより複雑だ。まず日帝強占期の歴史は、関係者の大半がすでに死亡している。したがって処罰は不可能だ。2つ目に、冷戦時代の人権蹂躙の歴史が政治化されることで、社会的分裂と対立が引き起こされる可能性が内在化している。このため韓国は、民主化後10年あまりを経てようやく真実を明らかにし、これを通じた被害者の名誉回復と被害補償を中心とする歴史清算が行われている。

 問題は加害者の反省だ。被害者の真実を明らかにしたとしても、加害者がそれについて反省しなければ、歴史は再び繰り返されうる。加害者が自分の行為は間違っていたと気付かなければ、または韓国社会が加害者の反省を必要のないものと認識するなら、国のためとの大義名分によって国を売ったとしても、仕方がなかったと言い訳して戦争犯罪に協力したとしても、反共を大義名分として人権を蹂躙したとしても、そのような状況は再び発生しうる。

 数年前、あるメディアがいわゆる「親日派」の子孫について分析したことがある。そのメディアによると、1177人の子孫を発見したという。その中で韓国を動かすパワーエリートは163人に達し、国籍を放棄した子孫は346人に達したという。そして、その中で先祖の過ちについて謝罪したのは3人のみだった。

 もちろん、子孫が親日行為を行ったのではない。彼らは次のように述べた。「生きていて親日の後裔としてそれほど苦しんだこともなく、遠い祖先の存在が精神世界に占める部分も大きくありません」、「一度もきちんと、あの方(先祖)がなぜそんなことをしたのか、考えてみたこともないし…」

 故盧泰愚(ノ・テウ)元大統領は、病床で光州(クァンジュ)虐殺をはじめとする歴史について謝罪の意を表明したという。そして、その後裔が先祖の過去の過ちについて反省したということは、正義に満ちた未来へと向かう歴史の清算を通じたもう一つの第一歩となり得る。不幸だった過去が再び起きてはならないという共感を形成する一つの契機になり得るからだ。社会的に真実と和解が必要な今、過去についての謝罪に拍手を送る。

//ハンギョレ新聞社

パク・テギュン|ソウル大学国際大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1017677.html韓国語原文入力:2021-11-02 18:05
訳D.K

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