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[社説]30年前、世の中を目覚めさせた日本軍「慰安婦」被害者の金学順さんを偲んで

登録:2021-08-14 06:12 修正:2021-08-14 07:15
沈黙を破った証言、世界の女性の人権の礎に 
勇気を振り返り、未来に向かって進むべき
1991年8月14日、金学順さんが日本軍「慰安婦」として経験した被害を韓国国内居住の被害者の中で初めて証言し、涙を流している=チャン・チョルギュ記者//ハンギョレ新聞社

 「私は日本軍『慰安婦』被害者の金学順(キム・ハクスン)です…これまで話したくても勇気がなくて口を開くことができませんでした。いつかは明らかにすべき歴史的事実であるため、打ち明けることにしました」

 1991年8月14日、67歳の金学順さんが目を潤ませながら、重い口を開いた。17歳で日本軍「慰安婦」として連れて行かれてから50年たって、「生き証人」である彼女が強固な沈黙の壁を崩した。「慰安婦として苦痛を余儀なくされた私がこんな風に生きているのに、日本は慰安婦を連れて行った事実がないと言い張り、韓国政府は分からないと言っています。呆れてものも言えません」

 金さんの勇気は世の中を目覚めさせ、世の中を変えた。彼女は1997年に亡くなるまで何度も証言することで、性暴力被害者の「純潔」を問題視し、沈黙を強要していた家父長制の枠を乗り越え、日本という国と軍が侵略戦争で女性たちを性奴隷にした蛮行をあぶり出し、責任を問うた。彼女はアジア各国の「慰安婦」被害生存者らが真実を明らかにするよう、道を開いた。1993年8月、日本政府は「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と認めた「河野談話」を発表した。 2007年に米国下院では、日本政府の公式で明確な認定、謝罪、歴史的責任を求める決議案が採択された。彼女の証言で始まった日本軍「慰安婦」被害者運動は、国連をはじめとする国際社会で戦時下の女性に対する性暴力が再び起きてはならないという人権と平和運動の巨大な流れを作り出した。

 30年が経った今、私たちは反歴史的退行に直面している。日本政府は、被害者たちが要求してきた公式謝罪と賠償を拒否し、教科書で慰安婦関連の内容を削除している。「歴史の教訓として直視し…歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を長く記憶にとどめる」とした河野談話まで揺れている。2015年、朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍晋三政権での「12・28合意」は10億円で全ての問題が「最終的かつ不可逆的に解決済み」だとして、忘却を強要しようとした。韓国社会がこれを拒否して見直しを始めると、日本は韓国が「約束を守らない国」だと強弁している。盗人猛々しいと言わざるを得ない。両国で「慰安婦」被害者を攻撃する右翼の歴史否定とバックラッシュ(反発性の攻撃)が強まっている。日本軍「慰安婦」被害の解決に向けた運動を象徴する正義記憶連帯を率いたユン・ミヒャン議員の会計不正問題に対する世論の失望も大きい。

 現在、生存している「慰安婦」被害者は14人、平均92歳の高齢者だ。再び金学順さんの30年前の勇気を振り返り、未来に向けて進まなければならない。日本政府の公式謝罪や賠償、被害者の尊厳の回復、そして再びこのような悲劇が起こらないように将来世代に正しい歴史を教え、完全に記憶するという原則を守らなければならない。韓国社会で解決策について共感を形成し、韓日市民社会の連帯の上で前進し続けなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1007664.html韓国語原文入力: 2021-08-13 21:53
訳H.J

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