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[寄稿]コロナ危機、欧州福祉国家のサクセス・ストーリー

登録:2021-07-26 02:54 修正:2021-07-26 08:30
ティモ・フレッケンシュタイン|ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会政策学科准教授

 新型コロナウイルスはこの1年半の間、私たちの生活を支配した。欧州各国の封鎖措置は災厄の拡大を防いだが、依然として欧州は残酷なまでの死者数を出している。英国ではほぼ13万人がコロナで死に、フランスは11万人以上を失った。ドイツの死者数は9万人あまりだが、韓国の2000人ほどの死者数と比べると信じられないほど多い。

 しかし、欧州諸国は生計の保護にははるかに成功している。最初のコロナ大流行は欧州諸国を深い景気低迷に陥れた。例えば、最初の大流行の期間にドイツは国内総生産(GDP)の10分の1以上を失い、英国はその2倍もの深刻な打撃を受けた。英国はこの300年で最大の景気低迷だった(イングランド銀行)。

 このような経済危機は、たいていは莫大な失業率の増加につながる。しかし、そのようなことは起きていない。年間失業率統計を見れば、ドイツは3.1%から4.3%への、英国は景気低迷が続いているにもかかわらず3.8%から5.4%への小幅な上昇にとどまる。欧州と比較すると北米の失業率は急上昇している。米国は3.7%から8.9%へ、カナダは5.7%から9.7%へ上昇。米国はドイツよりも緩やかな景気低迷に見舞われており、カナダはそれよりやや厳しい景気低迷に陥っている。

 欧州は明らかに、目に見えない経済的影響を伴う世界的な感染症流行局面において失業問題によりうまく対処した。欧州と北米は、かなり大規模な財政支援政策を実施した。より大きな経済的、社会的災厄を防ぐためには、莫大な資金を自国経済に投入することが最も重要だった。しかし、このような財政政策のせいで、社会政策の重要な役割が見過ごされるようなことがあってはならない。

 一時有給休職制度がある欧州の福祉国家は、国民の生計保護には他よりはるかに成功している。ドイツはきちんと確立された短縮勤務制を活用したが、これを通じて雇用主は社員の労働時間を(0時間にまで)減らし、職員は減った労働時間の分だけ失業給与に相応する補償を受けた。巨大な経済危機に対処するため、コロナ大流行の間に一時有給休職制度はより寛大になり、短縮勤務制の利用ははるかに容易になった。言い換えれば、この制度がより幅広く運用されたため、より多くの非正規労働者と低賃金労働者が保護された。

 英国は、これと似たような制度は施行していなかった。一般的に米国やカナダとさほど変わらない英国の自由主義福祉国家は、社会的な保護と包摂に困難を抱えている。しかし英国政府は、ドイツの短縮勤務制と主な特徴が似ている雇用維持制度である有給休職制を速やかに作った。1度目の封鎖がピークに達した時には、約900万人の英国人が一時休職し、ドイツでは700万人以上が短縮勤務を行った。

 両国の状況が良かったと主張しているのでは決してない。両国はこれまでにあった根深い不平等がコロナによってさらに悪化しているため、困難に直面している。ドイツ政府は短縮勤務者に対する補償引き上げを拒否したし、英国は、筆者が以前のコラム(「英国首相がマンチェスター・ユナイテッドのストライカーを恐れる理由」)に書いたように、コロナが大流行する間、食品の貧困に直面した。

 しかし、このような問題があるからといって欧州の福祉国家が収めた成果を過小評価してはならない。特に経済協力開発機構(OECD)加盟国と比較すればそうだ。欧州の社会モデルは理解しやすいものではないし、人によって意味するところも異なる。しかし評論家たちはおそらく、それが「米国式」の社会福祉政策とは異なるということには容易に同意できるだろうし、コロナ禍は欧州の社会モデルの方がはるかに大きな保護能力を持っているということを想起させてくれた。

 私はドイツと英国の福祉制度改革に批判的だった。それでも、私たちは福祉国家がコロナ禍の間に成し遂げた成果を祝うべきだ。福祉国家は、他の国ではより大きな困難に直面していたであろう数百万人の生計を保護した。そしてこのような経験は、欧州の方が北米よりも社会政策を学ぶうえではるかによい場所だということを示している。

//ハンギョレ新聞社

ティモ・フレッケンシュタイン|ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会政策学科准教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1005021.html韓国語原文入力:2021-07-25 15:47
訳D.K

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