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[寄稿]新自由主義と「小さな政府」の終末を越えて

登録:2021-05-13 01:52 修正:2021-05-13 10:53
カン・ジョング|元東国大学社会学科教授

 ジョー・バイデン政権発足100日を迎え、富裕税が世界的に注目されている。政権を握ると同時に新型コロナウイルス感染症の緊急救済のために1兆9000億ドルを投入したほか、立ち遅れた社会基盤施設と雇用のために2兆2500億ドル、教育や家族計画などに1兆8000億ドルを投入する計画だ。そのために、キャピタルゲイン(資本利得)税の最高税率を20%から39.6%へ、法人税の最高税率を21%から28%へ、所得上位1%が対象となる所得税の最高税率を37%から39.6%へと引き上げるという。

 こうした政府主導の富裕税強化、社会基盤施設の構築、家族・教育・福祉制度の拡充などにフランス、ドイツ、英国、アルゼンチンなどのほとんどの国が一定部分同調するものとみられ、世界的な趨勢となりそうだ。このような増税と大きな政府という趨勢(学術用語では「市民社会に対する政府の自律性の拡大」)は、過去40年間の世界の経済基調である新自由主義とはまったく相反する。

 新自由主義または「市場万能主義」は1980年代の米英に始まり、社会主義体制の崩壊、ワシントン・コンセンサス、グローバリゼーションなどにより全世界に普遍化され、強固なものとなった。礼賛論者はこれを「歴史の終末」と呼んで歓喜した。

 減税、小さな政府、市場化、民営(私有)化、金融化、開放化、グローバル化、貿易と為替の自由化、脱規制、世界的バリューチェーンなどの政策と戦略で疾走した。さらに、米国主導の国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)などがそれらを促進した。これらは貧富の格差の極端化、国家の財政・力量・機能の縮小へとつながり、健康医療・環境・気候変動に対処すべき公共財の力量不足でコロナの直撃を受けた。資本主義そのものも、金融資本の肥大化、経済の金融化によって実体経済の萎縮、生産力の低下、産業の空洞化が生じた。

 経済の金融化が原因となった2008年の金融危機の際にも、米国は増税や革新を断行できず、急場しのぎの処方にとどまった。しかし、3000万人を超えるコロナ感染者、60万人近い死者を出す世界最悪の惨状という火急の構造的条件においては、既存の新自由主義とは相反する戦略を駆使せざるを得なくなった。

 コロナの突然のまん延は、既存の世の中に対する根本的な問いを投げかけながら、西欧「先進国」由来の価値観、標準などに対する幻想を崩壊させつつある。なぜ先進、民主、人権、自由などの「本家」であり、世界保健安全指数(米英が2019年に開発)が1位と2位だった米国と英国があの有様であり、51位の中国が最も成功し、9位の韓国が善戦しているのか。

 フランス、イタリア、スペイン、英国などの西欧諸国は、全面または地域封鎖を何度も繰り返しているが、効果はあまり得られていない。初めは、中国の地域封鎖や韓国の社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)に対しては全体主義的な発想だといいつつ、自分たちの個人の自由絶対主義のことは「真の民主」だといって嘲笑さえしていた。同じ封鎖なのに、中国は大成功で、西欧はなぜ期待以下なのか。また、なぜ韓国のソーシャル・ディスタンシングはある程度成功できたのか。

 韓国は西欧に似た社会経済的構造を持つが、共同体性がはるかに高い。中国は共同体性も高いが、国家の自律性、統治力、財政余力が卓越している。武漢や河北省を封鎖する際、住民の生命権と生存権(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約))に対して国家が全面的に責任を負った。だから自営業者や経済的脆弱集団が違法な、あるいは正当でない方法で営業を行う必要のない生活条件が整えられたのだ。

 そもそも、長い歴史においては感染症、自然災害などが世の中を変える触媒として作用してきた。ペストが欧州の人口の3分の1近くの犠牲を強い、神中心の中世から人中心の近代への大転換を促進したことが代表的な例だ。

 コロナのまん延を歴史の転換点と見なして、BCとAC(Before & After Coronavirus)に分けて、世の中が再規定されたりもする。もはや新自由主義と「小さな政府」の終末を越え、既存の価値観、社会経済体制、世界秩序、規範、道徳観などについての新たな枠組みづくりを真剣に模索する時であり、それは避けられないものであると思われる。

//ハンギョレ新聞社

カン・ジョング|元東国大学社会学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/994885.html韓国語原文入力:2021-05-12 15:27
訳D.K

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