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[社説]空軍参謀総長の辞任、「軍の性暴力」根絶のはじまりだ

登録:2021-06-05 03:15 修正:2021-06-05 06:32
忠清南道地域の市民団体の会員と正義党忠清南道党が4日、空軍の強制わいせつ被害者が勤務していた忠清南道瑞山の空軍第20戦闘飛行団の前で記者会見を開き、徹底した捜査を行い加害者を厳罰に処することを求めている/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4日、イ・ソンヨン空軍参謀総長の辞意を、その表明から80分後に受け入れた。形式上は「空軍強制わいせつ被害者死亡事件の責任を痛感する」との辞意を受け入れたものだが、事実上の更迭だ。陸海空軍の参謀総長が個人的な不正や大規模な人身事故などで任期中に職を追われたことは過去にもあるが、性暴力事件の指揮責任を取って辞任したのは初めてだ。文大統領と軍の上層部がいずれも今回の事件をそれだけ深刻に受け止めているということを意味する。空軍参謀総長の辞任は、軍の内部に警鐘を鳴らす効果もあるだろう。

 しかし、これは始まりに過ぎない。空軍参謀総長の辞任は、根深い軍の性暴力を根絶する第一歩とならなければならない。まず加害者、隠蔽への加担者、指揮責任者を徹底的に捜査し、厳罰に処さねばならない。大統領府は、空軍参謀総長も捜査対象であり、ソ・ウク国防部長官の責任についても「最高指揮ラインは誰も例外ではありえない」と明らかにしている。

 政府は、男性中心の閉鎖的な軍隊文化と性犯罪に対して無頓着な軍司法制度も改革しなければならない。ここ数年間の「MeToo運動」で社会全般の「性認知感受性」は高まっているが、この変化の風も軍隊の高い垣根を越えることはできなかった。軍内部では、軍は戦争に備える特殊な専門組織であるため、一般社会の原則が適用されないと考えているためだ。軍の人権分野への民間の参加と監視を拡大すべき理由がここにある。これを機に、軍事作戦とは関係のない刑事事件である性暴力の捜査は民間警察に任せることも、積極的な検討に値する。文在寅大統領の公約でもある。

 強制わいせつの被害者が事件発生から自殺するまでの81日間に、軍司法制度はその役割を全く果たせていなかった。軍の警察、検察、裁判所などの軍司法制度全般の改革が必要だ。軍では部隊の指揮官が軍検事の指揮・監督権を持ち、軍事裁判所が判決した量刑を軽くすることもできる。指揮官は今後の補職や進級に不利になるため、自分の部隊で事件・事故が起きることを望まず、これを意識した軍捜査機関も「円満な解決」を掲げて被害者の懐柔・圧迫に手を染めることがある。最近、不法撮影被害者の女性軍人たちが軍警察に届け出ずに市民団体に通報したのは、軍司法制度に対する軍人たちの不信を示している。軍の捜査機関は指揮官からの独立性を確保しなければならない。政府は命運をかける覚悟で軍の性犯罪を根絶しなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/998107.html韓国語原文入力:2021-06-04 20:27
訳D.K

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