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矮小化、隠蔽、歪曲で一貫した韓国軍内の性犯罪、参謀総長辞任で変わるか

登録:2021-06-05 03:17 修正:2021-06-05 06:26
イ・ソンヨン総長「重い責任痛感」突如辞任 
1次加害も問題だが、軍の組織的「2次加害」が本質 
軍の体質改善のため 
イ総長の辞任が「トカゲのしっぽ切り」となってはならない
男性の先輩副士官から強制わいせつの被害を受け自殺した空軍女性副士官の遺体が安置されている京畿道城南市の国軍首都病院斎場の霊安室。4日午後、遺族が遺影を撫でている/聯合ニュース

 イ・ソンヨン韓国空軍参謀総長が、「空軍強制わいせつ被害者死亡事件」が報道されて4日目の4日、辞意を表明した。しかし大統領府は「イ総長の辞意を直ちに受け入れた」としつつ、辞表受理手続きよりも「在職中の不正腐敗に関する調査の方が先」と述べた。これは、イ総長本人が調査・捜査の対象であることを意味する。大統領府はまた、ソ・ウク国防部長官の進退についても、「最高指揮ラインは誰も例外ではありえない」と述べ、イ総長が退くことだけでは今回の事態は終わらないことを予告した。

 イ総長はこの日午後、ショートメッセージで「強制わいせつ空軍副士官死亡事件などで国民の皆様にご心配をおかけしたことをお詫びする。何よりも故人に深い哀悼の意を表し、遺族の方々には心からの慰労の意を伝える。私は一連の状況に対し重い責任を痛感する」と述べ、辞意を表明した。昨年9月に空軍参謀総長に任命された同氏は、強制わいせつ被害者が自殺に追い込まれるまで軍が事件の隠ぺい・もみ消しを図っていたことに対する責任を取って、1年も経たないうちに辞任することになった。

 しかしイ総長の「不名誉」は、職を退くことのみにとどまらないとみられる。大統領府のパク・スヒョン国民疎通首席はこの日午後のブリーフィングで「文在寅(ムン・ジェイン)大統領はイ総長の辞意を直ちに受け入れた。辞表受理に関する手続きは最大限迅速に進める予定」と明らかにした。大統領府関係者は「文大統領が辞意を直ちに受け入れたというのは、受理の『意思』を述べたもの」と述べ、辞表受理手続きについては「高位公職者の辞表提出に際しては、在職中に不正に関する事項がなかったかについての関連機関の調査が先」と述べた。続いて「特にこの件は、参謀総長本人が調査や捜査を受けるべき事項もあるかもしれない事案が重なっており、今後手続きが必要だ」とし「この手続きをできるだけ早く進めるというのは、文大統領の強い意志が共に表現されていると考えればよい」と述べた。すなわち、辞表の受理は迅速かつ徹底した捜査が前提となっていることを意味する。

 大統領府関係者はまた、ソ・ウク国防長官の更迭の可能性については「現在の状態では(更迭に関する質問は)答えるべき時期ではない」としつつも「地位の上下を問わず、報告を受けた後の措置の過程を厳重に調査する予定であり、その結果によって、地位の上下を問わずやはり厳正に処理するという立場をすでに申し上げている」と答えた。これは、ソ・ウク国防部長官も調査・捜査は避けられないことを明確にしたものだ。

 軍当局は、イ・ソンヨン総長とソ・ウク長官が事件を認知したのは、強制わいせつ発生日からかなり経った時点だったと述べている。空軍によると、イ総長は強制わいせつ事件が発生して40日以上後の4月14日に報告を受けたという。これが事実なら報告そのものが遅れたことになるが、上級部隊間の報告の過程でなぜこのような重要な事実の漏れが生じたのか、徹底した捜査による事実究明が必要だ。イ総長は、2日午後に国防部検察団が加害者のJ中士(階級名)を急きょ拘束すると、「なぜ今まで拘束できなかったのか」と嘆いたという。厳正な捜査を求めた自らの指示が履行されていないという現実に、羞恥心をあらわにしたというのだが、事件解決についてもっと決然とした意志を示していたなら、このような不幸な結果となっていただろうか。

 また国防部は、強制わいせつ事件の対応マニュアルをすでに数年前に制度的に整備していた。2017年初めの「MeToo運動」以降は、関連指針や規定にさらにメスを入れ、先進的な内容を取り入れていた。国防部の部隊管理訓令や、軍が「機密」であるとの理由で公開していない2020年改訂版「性暴力予防活動指針」などは、被害が発生した場合は加害者と被害者を直ちに分離し、厳正な措置を取ると定めている。L中士を死に追いやった黙認、ほう助、隠蔽、庇護行為に対しても「性暴力行為者と同一の懲戒量定基準を適用」し、厳罰に処すことを定めている。

4日午後の忠清南道の鶏龍台正門の様子。国防部検察団はこの日、死亡した空軍副士官の強制わいせつ被害事件に関し、空軍本部軍事警察団などの家宅捜索を行った/聯合ニュース

 今回の事件は、単に1次加害の強制わいせつだけでなく、軍による「矮小化、隠蔽、歪曲」工作などの2次加害も大きな問題だと指摘される。軍人権センターのイム・テフン所長は「こうした点で、この事件は2014年に韓国社会に大きな衝撃を与えた陸軍第28師団のY二等兵殴打死亡事故と似ている」と語った。当時も軍は、Y二等兵が4月7日に先輩の殴打や過酷行為で死亡したにもかかわらず、冷凍餃子を食べて死んだとする虚偽報告を行うなど、100日以上にわたり事故を矮小化、隠蔽した。このことが明らかになると、朴槿恵(パク・クネ)政権もクォン・オソン陸軍参謀総長を更迭した。国防部の当局者は「軍で発生した性暴力事件で総長が職を追われるのは今回が初」とし「性犯罪に対する対応を間違えれば、総長の首が飛ぶこともあり得るという厳重な警告と受け取るしかない」と述べた。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/998069.html韓国語原文入力:2021-06-04 15:50
訳D.K

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