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[寄稿]「ミャンマーの民主主義」、韓国は“応援”だけではだめだ

登録:2021-05-16 23:05 修正:2021-05-17 09:28
チェ・ギウォン|独立研究者

 #SaveMyanmar、 #KoreaLovesMyanmar、 #ミャンマー_応援します...。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では見慣れたハッシュタグだ。市・郡・区単位でミャンマーの民主主義の回復を応援する声明が相次いでおり、国会が圧倒的な賛成で軍部を糾弾する決議案を通過させたのに続き、大統領が応援メッセージをツイートでつぶやいたりもした。市民はもちろんのこと、政界までもがミャンマーの痛みに共感しているように思われる。ミャンマー軍部が抵抗する市民を虐殺する場面は、1980年5月の光州(クァンジュ)の風景を思い起こさせる。それが深い共感の背景にあるのだろう。

 しかし、このような熱烈な応援に隠された現実もまた、直視しなければならない。クーデターから100日がたったこの時点でも、軍部の権力は依然として堅固であり、暴力と弾圧は止められないまま内戦という破局の結末に突き進んでいる。国際社会の微妙な秩序の中で、各国は事態の解決に向けて本当に必要な措置を先送りしたり、放棄している。大韓民国も例外ではない。応援と糾弾のメッセージを送るレベル以上に、国会と政府がすべき行動があると考える。

 注目しなければならないのは、韓国企業とミャンマー軍部の経済的連携だ。特に鉄鋼メーカーのポスコ(POSCO)に対する国内外の批判が激しい。ポスコ・インターナショナルはミャンマー軍部が所有している土地を賃借し、軍部の家族が所有している企業と合弁でホテル事業を行っている。軍部の口座に振り込まれる賃貸料が政府予算に組み込まれるかどうかは確認されていない。遅れて合作中止を発表はしたが、軍部所有の企業と協力して現地で鋼板事業を展開してもいた。年間数千億ウォンにのぼる海上ガス田事業の収益もミャンマー軍部に流れる可能性を排除できない。収益が配当されるミャンマー国営石油ガス公社(MOGE)は、クーデター前から国連人権理事会から不透明な資金運用を指摘されており、ミャンマーの人権状況を担当する国連の特別報告者から標的の制裁対象に挙げられていた。最近ではポスコが軍艦を民間支援用に用途だけを変え、ミャンマー海軍に「ごまかし輸出」をしていた事実が明らかになった。その船は現在、ミャンマー海軍の旗艦となっている。

 ポスコ側は、アウンサンスーチー氏が政権を握っていた民主政府時代にもミャンマー軍部と取引しており、事業を中止した場合ミャンマー市民の被害が懸念され、中国などがその座を占めると抗弁している。しかしミャンマー軍部は、ミャンマーの憲法上、民主政府が統制できない独自の軍閥集団としてロヒンギャ族虐殺を行うなど、アウンサンスーチー政権当時も制裁を受けていた。2006年の軍部独裁時代にはミャンマーに兵器を不法輸出し、刑事処罰を受けた前歴もある。ミャンマー市民とミャンマー臨時政府(NUG)がポスコに事業を中止するよう訴えていることからしても、市民の被害を取り上げるなど無理な理屈というものだ。中国の介入を心配はし得るだろうが、それが中国の代わりに軍部に奉仕することを正当化する名分にはなり得ない。

 このような点で、ミャンマーを応援する大韓民国の声に真実味を加えるためには、韓国企業のミャンマー内の事業が軍部の経済的基盤になることを阻止するための国会や政府レベルの措置が必要だ。軍部に経済的恩恵を提供していると判断されるポスコなどのミャンマー内での事業や、資金の流れを調査し、必要な措置を取るべきだ。国会常任委員会から十分に始められることだ。企業の行動を断罪するためというよりも、まず事実関係を確認し、韓国企業が軍部の“金づる”にならないよう合理的な戦略を模索しようという趣旨だ。少なくとも今のように沈黙していてはならない。

 ”連帯”は応援と支持から始まるが、それだけでは完成しない。痛みを甘受してでも闇をさらけだし、批判してこそ解決できることがある。取引相手が誰なのかを問わず、経済的利益だけを追求する通商政策を奨励してきた大韓民国の過去を振り返らなければならないと信じる。韓国には、恒久的な世界平和と人類の共栄に貢献する義務を我々自身に与えた憲法があるからだ。ミャンマーの民主主義を応援するため、もう一歩を踏み出す覚悟を求めたい。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ギウォン|独立研究者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/995369.html韓国語原文入力:2021-05-16 19:46
訳C.M

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