朝鮮半島情勢が不透明になっている。米国のバイデン政権が対北朝鮮政策の検討を終えたことを明らかにすると、ただちに北朝鮮は強く非難した。韓国に対しても対北朝鮮ビラ散布を理由に「相応の行動」を検討すると威嚇した。米国の新しい対北朝鮮政策が北朝鮮を対話のテーブルに引き出すことはできず、むしろ軍事的緊張を高める方向に作用するのであれば心配すべきことだ。南北米いずれも、対決ではなく対話の扉を開くために全力を注ぐ時だ。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は30日(現地時間)、バイデン政権の対北朝鮮政策の検討が完了したことを明らかにした。バイデン政権の新しい対北朝鮮政策は、前任のトランプ政権の「一括妥結」(グランドバーゲン)やオバマ政権の「戦略的忍耐」とは異なり「実用的で段階的なアプローチ」を追求すると米国メディアは批評した。「首脳間の直接対話」には重きを置かないが、北朝鮮がすべての核兵器プログラムを放棄するまでは経済制裁を解除しないという前政権の基調に比べると、一段柔軟なアプローチに思われる。
このような米国の態度は、北朝鮮の期待にははるかに及ばないものであるかもしれない。北朝鮮は2日、外務省の米国担当局長名義の談話で「米国の新たな対朝鮮政策の根幹が何であるか鮮明になった以上、我々はやむを得ずそれに相応した措置を講ずるほかない」と明らかにした。北朝鮮が最も重要視する「体制の安全保証」の問題で明確な言及をしていないことや、米国務省と議会が北朝鮮の人権を重視する構えを示していることが、北朝鮮指導部を刺激したものとみられる。
それでも、北朝鮮が強硬な口調で米国を非難したことは、あまりに性急な行動だ。交渉の主導権を握るための主導権争いが目的だとしても、そのような形の強硬な発言は不必要な緊張を高め、むしろ相互の信頼を落とす方向に作用しやすい。特に、今月21日には文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領による初の韓米首脳会談が予定されている。それだけに北朝鮮は韓米間の調整過程を見守り、慎重に行動することが望ましい。
北朝鮮が「相応の行動」を予告しただけに、ミサイル発射などの武力示威が現実化する可能性はさらに高まった。特に、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹のキム・ヨジョン労働党副部長が脱北民団体の対北朝鮮ビラ散布を猛非難し「相応の行動」に言及したことは非常に懸念される。北朝鮮が米国に向けて直接攻撃をする代わりに韓国に向けた武力示威があり得るという観測が出ているが、いかなる挑発であれ、朝鮮半島の平和を害し、対話の扉を開くことには否定的な影響を及ぼすだろう。
韓国と米国は、21日の首脳会談で北朝鮮を対話のテーブルに引き出せる柔軟で現実的な対策を用意してほしい。たとえば交渉開始の前にでも「人為的な政権交替を追求しない」という形のメッセージを送るのも、一つの案かもしれない。
今、朝鮮半島は、再び軍事的な対決の局面に進むのか、それとも対話と交渉の場に出るのかの分かれ道に立っている。南北米すべての自制と努力が切実だ。