本文に移動

[山口二郎コラム]日本の政権移行の難しさ

登録:2021-01-11 09:04 修正:2021-01-11 09:09
//ハンギョレ新聞社

山口二郎・法政大学法学科教授

 昨年の日本政治の最大の出来事は、史上最長政権の記録を作った安倍晋三首相が健康上の理由で退陣したことである。固定された任期の大統領制を持つ韓国の人々にはわかりにくいかもしれないが、日本は議院内閣制で、衆議院総選挙で勝利し続ければ、理論上はいつまでも政権を持続できる。安倍氏は2012年12月の総選挙で勝利して政権を獲得して以来、衆議院、参議院の選挙で勝利を続け、7年9カ月の間政権を持続した。なぜこれだけの長期政権が可能になったのかは政治学にとって重要な問いである。これについていずれ長い論文を書いてみたい。

 このコラムでは、長期政権のあとの政治の難しさについて考えてみたい。戦後の日本では佐藤栄作(1964-72)、中曽根康弘(1982-87)、小泉純一郎(2001-06)の3つの長期政権があった。長期政権を樹立した政治家は、評価はいろいろあるにしても誰もが記憶する実績を残している。佐藤は日韓国交正常化を成し遂げ、米軍統治下にあった沖縄の日本への返還を勝ち取った。中曽根は国鉄民営化など行政改革を行った。小泉は郵政事業の民営化や規制緩和を行った。しかし、長期政権のあと、自民党政治は大混乱に陥った。3回とも後継総理は短命に終わり、政権は1,2年で頻繁に代わった。大規模な政治腐敗が露呈したことも多かった。

 長期政権のあとの政治的混乱は、決して偶然ではない。1つの政権が長く続くことが自明視されれば、与党の政治家も官僚もその権力者に取り入って栄達を計ろうとする。また、権力者が長く君臨すればどうしても腐敗が起こりやすい。追従を言う臆病な政治家や官僚が周囲を固めれば、政策の失敗や腐敗があってもそれを直視し、警告を発する者はいなくなる。前の権力者の成功が大きければ大きいほど、後継者が誤りを正すことが難しくなる。長期政権が政策的能力を失うのはこのためである。また、権力者が自分の地位を脅かす者を排除すれば、次世代のリーダーも育たない。

 安倍前首相は猜疑心の強い政治家だった。安倍氏は政府、党の人事で自分に挑戦した石破茂氏とその側近を冷遇した。そのため有力な後継候補がいない状態が長く続いていた。安倍氏が辞意を表明してから、みるみるうちに菅首相の流れができた。これは、安倍政権を支え、そこから利益を得ていた政治家が、安倍氏が去った後もこの体制を維持するために迅速に動いた結果である。

 しかし、長期政権のあとの政治混乱という法則は生きているようである。菅氏は、就任直後は70%前後という高い支持率を誇ったが、年末に向けて支持率は急低下し、調査によっては不支持が支持を上回るようになった。その最大の理由は、新型コロナウィルス対策が成果を上げていないことである。政府は感染対策と経済振興の2つの目標を追求している。特にこの秋以降、観光業界の落ち込みを穴埋めするために、旅行や飲食の費用の一部を公費で補填する旅行促進策を展開した。これに対しては、医師や専門家から強い懸念が示されたが、感染が急増した12月までこの政策は続いた。さらに、宴会が増える年末、国民には宴会の自粛を呼び掛ける一方で、首相は俳優やスポーツ選手と高級レストランで会食をしていたことが明らかとなった。国民はルールを守るべきだが、自分はルールに従う必要はないという驕りが今の指導者には蔓延している。

 今年10月には衆議院議員の任期が切れるので、必ず衆議院総選挙が行われる。久しぶりに日本の政治に波乱が起こるかもしれない。

 韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期が残り少なくなるにつれて、政権支持率も低下し、政権批判の声も高まっている。しかし、日本よりは問題は単純だと思える。権力交替の時期があらかじめ決まっていれば、次期大統領候補は独自の政策を準備し、現状の問題点を指摘する。それは新しいリーダーシップを作るために必要な摩擦だと思える。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/978088.html韓国語原文入力:2021-01-11 02:39

関連記事