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[コラム] バイデン外交、サンダースに注目せよ

登録:2021-02-24 01:58 修正:2021-02-24 07:25
今年1月20日のジョー・バイデン米大統領の就任式に参加したバーニー・サンダース上院議員=ワシントン/AFP・聯合ニュース

 1月20日のジョー・バイデン米国大統領就任式で最も注目された「スター」は、米国の進歩政治を象徴するバーニー・サンダース上院議員だった。スーツ姿の名士の居並ぶ中、ジャンパー姿にミトンをして座っているサンダース議員の写真は全世界で流行し、彼の政治的位置を示した。

 就任から1カ月が経過したバイデン政権の重要な政治議題は、サンダース議員を中心とする進歩勢力との「協治」だ。進歩陣営が要求してきた最低時給15ドル、大学生の学費ローンの帳消しなどが、新型コロナウイルスへの対応とともに今、米国の中心課題となっている。進歩陣営は、財界の全面的支援を受けたバイデン大統領と中道勢力が、ウォール街やシリコンバレーの諸企業の利害関係に飲まれる可能性を極度に警戒し、注視している。上院予算委員会の委員長を務めるサンダース議員と進歩陣営の政治的影響力は、いつになく強い。

 外交安保分野でも、彼ら進歩陣営に注目する必要がある。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ブリンケン国務長官、インド太平洋政策を総括する「インド太平洋調整官」のカート・キャンベルなど、オバマ政権出身の主流外交専門家たちがバイデン外交の中心を占める。しかし、進歩陣営出身の多くの人士が外交安保分野の実務スタッフとして登用されており、彼らの要求が政策にかなり反映されている。バイデン政権の外交が「オバマ2.0」にならない理由がここにある。

 サンダースのシンクタンクの役割を担ってきた米国進歩センターのシニア・フェローだったメラニー・ハートは、国務省で対中国政策の見直しを総括する役割を担う。サーシャ・ベーカー国家安保会議主任補佐官は、エリザベス・ウォーレン上院議員の外交安保顧問だった経歴を持ち、兵器削減を主張してきた進歩派だ。サンダースの外交政策顧問マット・ダースも国務省に合流するだろうと「ポリティコ」が報じている。イラン特使に任命されたロブ・マリーは、イランとの対話の回復に積極的で、サウジアラビアの非人道的行為に批判的な立場を示してきた。バイデン政権発足後、最優先の外交課題としてイエメン内戦に対する米国の兵器提供を中止したこと、イエメン内戦を主導し、ジャーナリストのジャマル・カショギを残忍に暗殺したサウジのビン・サルマーン皇太子と距離を取っていることなどに、進歩陣営の要求が強く反映されている。

 サンダース上院議員、ロー・カンナ下院議員ら、米国の進歩を代表する政治家たちは、中国を「主要な経済的ライバル」と規定し、トランプの対中国関税を肯定的に評価するなど、米国の中産層と労働者階層を崩壊させた中国の不公正な経済慣行を変えるための対中国強硬策を支持する。そして人権を最重要の価値として重視し、新疆ウイグルの強制収容所と香港での国家保安法の強行に非常に批判的だ。だが、中国との「新冷戦」には反対している。全世界の米軍駐留と軍事費支出を減らし、米国が「永遠の戦争」に陥っている状況を終わらせることを要求する。

 北朝鮮について、サンダース上院議員は昨年9月、外交関係委員会(CFR)のインタビューで「トランプ政権が進めてきた北朝鮮との外交は支持するが、交渉は写真撮影イベント以上のものとならなければならない」とし「北朝鮮の核プログラムを覆す『段階的進展(step by step process)』を追求しようと考えており、北朝鮮による核プログラムの一部解体に対する対価としての部分的な制裁緩和を支持する」と述べている。それまでトランプ政権が主張してきた「まず非核化ありき、その後に制裁解除」ではなく、段階的な非核化交渉方式だ。そして、北朝鮮との非核化協議については韓国、中国との調整が必要だとも述べている。

 もちろん、現実のもう一方には米国企業と金融の強大な影響力がある。バイデン政権は対中国強硬基調を強調しているが、米国企業の中国に対する投資は急増している。中国も金融市場の開放によって米ウォール街の金融企業に門戸を開き、米国資本を引き入れている。

 バイデン政権の外交安保政策は、進歩陣営とウォール街による「極と極」の要求をどのように調整していくかにかかっている。米国も、中国との全面的な脱同調化(デカップリング)や対決へと向かうのは困難だ。米国は先端技術と経済力、国際的リーダーシップの優位を維持する方策を中国から最大限取りつけながら、協力の接点を探ろうとするだろう。韓国の保守陣営が、韓国は中国との関係を断ち切って米国の側に速やかに立つべきだと日々圧迫するのは、米国すらそのような道には進み得ないという現実を無視した極めて無責任な主張だ。ただし、バイデン・チームが重視する「米経済と中産層を再生させる外交」が米中貿易と分業構造のかなりの部分を変えることになった時、韓国経済がどのように適応すべきかということは、重要な課題となるだろう。

 一方で韓国は、ここ数十年で最も大きな変化が米国の外交政策に起きているということも直視しなければならない。米国の進歩陣営は、北朝鮮との交渉、段階的な非核化という解決法に対して、従来の外交安保専門家よりもかなり好意的だ。終戦宣言についても積極的に支持してきた。だが、北朝鮮や中国の人権問題は最重要事項と考えている。彼らは最重要の同盟国であるサウジアラビアとイスラエルの人権問題も激しく批判する。韓国の一部の政治家が北朝鮮の人権問題を扱うことをはばかり、中国の人権問題についても「中国の内政問題」だとして軽く考えることは、韓米の外交調整をさらに困難にする要素となる。韓国が人権と民主の一貫した原則を明確にすれば、米国の進歩陣営は朝鮮半島平和プロセスの進展の味方となるだろう。今必要なことは、直ちに米国の側に立たなければ大変なことになると言って軽率にふるまうことでもなく、米国とうまく調整していると大言壮語することでもない。変化に対する綿密な判断、それにふさわしい正確な外交だ。

//ハンギョレ新聞社

パク・ミンヒ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/984149.html韓国語原文入力:2021-02-23 15:24
訳D.K

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