「ク会長、私たちも今後電子事業をやろうと思う」。1960年代末、サムスンのイ・ビョンチョル会長がLGのク・インフェ会長とコーヒーを飲みながら話を切り出した。ク会長はカッと怒って席を蹴って出て行った(『ライバル企業列伝』チョン・ヒョクチュン)。イ会長とク会長は姻戚関係であり、慶尚南道晋州(チンジュ)の智水初等学校の同窓生だ。しかしその後、サムスン電子とLG電子は互いに一歩も譲らない“ライバル”になった。特許侵害、技術や営業秘密の流出、不当広告などの紛争が最近も絶えることなく続いている。マスコミが“戦争”に例えるほどだ。
2012年は、両社の戦争が最も熱い一年だった。警察がサムスンの職員11人をLGにOLEDテレビ技術を流出した容疑で起訴したことを契機に、乱打戦が繰り広げられた。サムスンがLGの冷蔵庫の容量が虚偽表示されているという広告を出したのを皮切りに、広告禁止仮処分申立てと数百億ウォン台の損害賠償訴訟が提起された。紛争はOLEDに拡がった。特許侵害禁止仮処分申立てと訴訟、損害賠償訴訟を互いに起こした。
サムスンとLGが伝統のライバルならば、最近は未来成長産業であるバッテリーでLGとSKが新興ライバルに浮上した。米国国際貿易委員会(ITC)は10日、LGとSK間のバッテリー営業秘密侵害紛争でLGに軍配をあげた。米大統領が拒否権を行使する可能性は高くない。
SKには控訴などの法的手続を取り続けるか、あるいはLGと交渉で事態を早期決着させる2つの道がある。訴訟戦は、紛争の長期化による不確実性とそれによる取引先離脱のリスクが大きい。一方、交渉には巨額の賠償金負担が伴う。
両社は賠償の規模について3兆ウォン(約2800億円)前後と数千億ウォンで、立場の差が大きい。LGはこれまで数十兆ウォンを投資して、10年近く毎年1千億ウォンに近い赤字を負いながら主要技術と営業秘密を蓄積してきた点を強調する。SKは交渉の意思を見せながらも、LGの要求は事業を今後できなくするほどの無理な水準だと主張する。
一部のマスコミは、国益を前面に掲げ紛争の早期解決を圧迫する。チョン・セギュン首相も「両社が争えば、他所が得をするだけ」として早急な解決を促した。「なぜ同じ国の中で争うのか」という、いわゆる“愛国式”アプローチだ。だが、サムスン-LGの事例が見せるように、未来のバッテリー市場の主導権をめぐり激しく競争する両社が向き合っている現実とはかけ離れているとみられる。
かつてサムスン-LGの紛争が過熱した時も、政府が仲裁に出たことがある。だが、和解は長続きせず、間もなく新たな戦闘が広がった。公正経済を強調してきた文在寅(ムン・ジェイン)政権としては、より根本的なアプローチが必要と思われる。企業間の消耗的な紛争が頻発することを防ぐには、公正な競争秩序確立のための法的・制度的整備が先決課題だ。韓国の企業間の紛争が米国で判定を受けたことも、国内で営業秘密侵害事件を迅速・公正に処理できるという信頼が足りない現実を反映する。
SKグループのチェ・テウォン会長は“社会的責任”を強調してきた。チェ会長が最近大韓商工会議所の次期会長に推され、財界に社会的責任経営が拡散するとの期待が大きい。社会的責任の出発点は順法経営だ。LGとの解決法もその原則に忠実でなければならない。交渉は芸術だという。LGも名分(営業秘密侵害の認定)と実利(賠償)の間で折衝を通じてSKと「Win-Win(ウィンウィン)」となる道を探す知恵が必要だ。