本文に移動

[コラム]ノルウェーの金持ちが投げかける教訓

登録:2020-12-18 02:56 修正:2020-12-18 09:27

 北欧のスカンジナビア半島の西端にあるノルウェーは、指折りの暮らしやすい国だ。2019年の国際通貨基金(IMF)の資料によれば、1人当たりの国内総生産(GDP)は世界第4位だ。国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」では1位だ。新型コロナウイルス感染症が欧州を襲っている中でも、フィンランドと共にウイルス拡散をうまく抑制している。

 ノルウェーは経済統計においても見習うべきものがある国だ。すべての課税対象者の各種の所得資料を、金融機関などの第三者の資料も動員して、徹底的に検証する。こうした透明で詳細な統計のおかげで、新たな「金持ちの秘密」が近ごろ明らかになった。

 IMFは先月、ホームページで、ノルウェー経営大学のアンドレアス・パイェレン、イタリアのエイナウディ経済金融研究所のルイージ・グィソら4人の学者による論文『投資収益の不均衡と持続性』を注目すべき論文として紹介した。この論文は、金持ちがいかにして、さらなる金持ちになるのかを実証資料の分析により明らかにしている。

 結論から言えば、同じ条件で同じ金額を投資しても、金持ちが得る利益の方が常に多い。よく「金が金をもうける」と言うが、より根本的に「富める者はさらに富み、貧しき者はさらに貧しくなる」原因として「公正競争」が成立していないことを同論文は指摘しているのだ。

 この結論は、2004年から2015年までの資本所得と保有資産に対する課税行政資料を分析して導き出されたものだ。分析に用いられた資料は3000万件にのぼる。同期間のノルウェー国民の投資収益率は3.8%だったが、資産下位10%と上位10%との平均収益率の格差は、税引き前が18ポイント、税引き後が10ポイントだった。税金が投資の実力の差をかろうじて縮めてくれたわけだ。

 富裕層の間でも、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなるというのは同じだった。上位75%の個人が2004年に1ドルを投資したとした場合、2015年にはこれが1.5ドルに膨らんでいる。一方、上位0.1%に属する個人は、1ドルを2.4ドルにしている。11年間で収益率に90ポイントの開きが生じているわけだ。

 金持ちであるほど投資収益率が高いという結論は、階層ごとの投資収益を単純に平均して導き出されたものではない。投資規模などの要素が及ぼす影響を排除してから比較しても格差は生じる、というのが同論文の分析結果だ。

 金持ちの投資収益率の方が高いということそのものは、目新しいことではない。これまでは「金持ちはリスクが高い投資先により多く投資する余力があり、実際にそのことによってより多くの利益を得ている」という説明が通説として受け入れられていた。

 しかし同論文は、このような通説は事実とはかけ離れていると主張する。投資リスクなどの計測可能な要素が収益率の格差に及ぼす影響は、それほど大きくないと分析されたのだ。論文は「個人投資家の特性の方が、収益率の差により大きな影響を及ぼす」と指摘している。このような特性は、金融についての専門的理解度、金融に関する情報処理や利用能力、惰性を克服する能力、(事業家の場合は)事業管理能力などだ。言い変えれば、金融または投資「知能」の違いが貧富の差を広げるということだ。

 同論文は、金持ちと貧しい人の投資収益率の格差は、彼らの子の世代でも繰り返されており、この格差の主な原因は、成長の背景などから生じる投資能力の格差だと指摘する。

 ノルウェーは2019年現在、経済協力開発機構の加盟国の中で貧富の差が5番目に少ない国だ。このような国でも、金持ちと貧しい人との公正な競争は実現が難しいという現実を同論文は示している。そして、貧しい人々が知識と能力を育む支援を行わなければ、彼らが貧困のくびきから脱することは難しいという、より重要な事実にも気づかせてくれる。

//ハンギョレ新聞社

シン・ギソプ|国際ニュースチーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/974792.html韓国語原文入力:2020-12-17 19:06
訳D.K

関連記事