本文に移動
全体  > 経済

「『戦時共産主義』のように経済の部分的社会化を」スロベニアの哲学者が提言

登録:2020-11-30 02:17 修正:2020-11-30 09:22
基調講演|スラヴォイ・ジジェク 
ポストコロナ時代のニューノーマル 
 
新しく不吉な自然の登場を招く 
世の中を保全するには急進的変化が必要 
「知ろうとしない意志」が防疫を妨害 
誤った個人主義の対価を支払っている
スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェク氏=資料写真//ハンギョレ新聞社
2020アジア未来フォーラム//ハンギョレ新聞社

 「せめて世界をありのままに保存する機会を得るためには、我々は世界を急進的に変えなければならない」

 スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェク氏は、本紙に送ってきた「第11回アジア未来フォーラム」の基調講演動画でこのように述べた。干ばつや山火事のような気候災害、我々の日常を破壊するウイルス、貧富の差などで世の中が徐々に壊れつつあるため、さらに悪化するのを防ぐだけのためにも急進的な変化が必要だというのだ。ジジェク氏はフォーラム初日の12月2日に「ポストコロナ時代のニューノーマル」をテーマに基調講演を行う

 ジジェク氏は、コロナパンデミックは我々の経済システムがもたらした災害と見ている。今年7月に韓国で翻訳出版された著書『パンデミック・パニック』において、「持続しえない恒久的自己膨張を要求する全地球的資本主義経済、成長率と利潤可能性に執着する経済」がウイルス事態を招いたと指摘したのと同じ脈絡だ。彼は基調講演で「我々は自然を破壊しているだけでなく、新しく不吉な自然の登場を招いており、この新しい自然に我々の居場所はないだろう」とし「コロナパンデミックも『新しく不吉な自然』の一例ではないだろうか」と問う。

 ジジェク氏は、コロナパンデミックのような地球規模の災害に対応するには「『戦時共産主義』と呼ばざるをえない何か」が必要だと主張する。「保守勢力が政権を握っている国でも、市場の法則に明白に反する決定がますます多く出されている。国家が産業と農業に直接介入し、飢餓の予防などのために数十億ドルを充てている。感染が増え続ければ、経済の部分的な社会化がさらに差し迫ったものとなるだろう」

 ジジェク氏は、マスクの着用やソーシャル・ディスタンシング規制に抵抗する人々も、強い口調で批判する。彼が見るところ明白な新型コロナの深刻さを受け入れることを拒否する動きの根底には「知ろうとしない意志(will not to know)」がある。ウイルスについて知り過ぎれば、自由な生き方についての我々の観念を脅かす政策につながり得るため、深刻なことが起こっていないように行動した方が良いと考えるというのだ。こうした行動はコロナの危険性の露骨な否定(正常な生活への復帰)、陰謀論(完全な社会統制のための「ディープステート」の計画説)などの様々なかたちで現れる。

 ジジェク氏は「パンデミックは我々の体に染み付いたノーマリティー(正常状態)についての感覚、すなわち我々の生き方を規定する基本的な諸慣習を弱化させ、我々が不自然だと感じるあり方で生きていくように仕向ける。人々はこうした実存的な恐怖のため、パンデミックの真実に背を向ける」と解釈した。彼はカール・ポランニー社会経済研究所のホン・ギビン所長との映像対談で、「知ろうとしない意志」の誘惑を克服するのは非常に難しいことだという問いに「だから私は、人々の信頼を得つつも強力な国家の権威を信じる」とし「もしかすると今、西欧は誤った個人主義の代価を支払っているのかもしれない。我々は新たな自由を再発見すべきだ」と述べた。

イ・ジョンギュ|ハンギョレ経済社会研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/heri_review/971576.html韓国語原文入力:2020-11-26 09:59
訳D.K

関連記事