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[コラム]ユン・ソクヨル検察総長の懲戒事由に見る検察改革の重要性

登録:2020-12-10 09:52 修正:2020-12-15 13:12
ユン・ソクヨル検察総長が今月8日午後、車に乗ってソウル瑞草区の最高検察庁の駐車場を出ようとしている/聯合ニュース

 ユン・ソクヨル検察総長懲戒委員会が1日後に迫った。これまで手続きをめぐる熾烈な法的争いに注目が集まり、懲戒事由そのものに対する社会的討論はあまり見られなかった。一方では、ユン総長への懲戒が検察改革と何の関係があるのかという疑問の声もあがっている。一緒に考えてみるべき問題だ。

マスコミ社主との会合

 検事倫理綱領は「検事は事件関係人その他職務と利害関係がある者と正当な理由なしに私的に接触しない」と定めている。事件関係者であるマスコミ社主と酒の提供を伴う店で会合を開いたとすれば、当然綱領違反だ(当該マスコミ社主がどの事件の利害関係者だったのかは、チュ・ミエ法務部長官が明確にすべきだった)。検察の公正性を担保する綱領が検察指導部に厳格に適用されなければ、組織全体にどのようなシグナルとして作用するだろうか。

 現職検事たちが高級クラブで数百万ウォン分の接待を受けていたことが事実と確認され、8日、検事1人が起訴された。検事への接待やスポンサーをめぐる疑惑はこれまでうんざりするほど繰り返されてきた。倫理綱領が巧言を並べた紙切れにすぎないなら、このようなことはいつまでも続くだろう。検察改革は、検察の行為準則の確立という基礎から始まる。

「裁判官査察」疑惑

 裁判官代表会議は7日、この件について意見を出さない方針を決めたが、これは政治的中立の義務を守るためであって、文書の正当性を認めるという意味ではない。ユン総長側は、裁判官に関する情報が書かれた米国や日本の資料を提示し、問題にならないと主張しているが、これらは検察ではなく民間で作成されたものだ。査察は民間ではなく国家機関が情報収集の主体であるからこそ問題になるのだ。

 同文書は、特定事件に対する検察の態度も表わしている。チャン・チャングク済州地裁部長判事は「自分たちが直接捜査した事件は無罪判決が出ないよう、判事の(政治的)スタンスを利用してでも有罪判決を引き出したいという態度が公正な検事の態度なのか」と指摘した。検事は公益の代表者として被告人の利益まで考慮しなければならない「客観義務」を負うが、目標を達成するためになりふり構わず捜査を進めるなら、こうした原則が守られるはずがない。

 先日、検察の捜査を受けていたイ・ナギョン共に民主党代表秘書室の副室長が、また自ら命を絶った。この1年間だけでも検察の取り調べ中に自殺した人が4人だ。検察が直接捜査の主体ではなく、捜査機関の人権侵害を監視し、客観的な見方で起訴と公訴維持をする役割を担うなら、このような悲劇を減らすことができるのではないか。捜査権と起訴権の分離という検察改革の大原則を思い起こさずにはいられない。

監察妨害

 あまり注目されなかったが、このような懲戒事由もある。今年5月、ハン・ミョンスク元首相に対する強圧捜査やでっち上げ疑惑が浮上したことを受け、最高検察庁監察部が監察に乗り出そうとした。しかし、ユン総長がこれをソウル中央地検人権監督官室に送るよう指示した。監察部長がこれに異議を申し立てると、最高検察庁次長が参考のためだとして(監察)請願のコピーを要請し、それに「最高検察庁請願移牒」と書いて、まるで原本であるかのように装ってソウル中央地検に送るよう指示したという。

 監査院の監査を控え、月城(ウォルソン)原発1号機の早期閉鎖と関連した資料を削除した疑いで産業通商資源部(産資部)の公務員2人が数日前拘束された。監察・監査を妨害するために公的な文書に手を加えたのは、両事案が類似している。しかし一方は拘束で、他方は懲戒処分にもならなかったとしたら、それは妥当だろうか。検察の内部と外部に対するダブルスタンダードをなくすのは、検察改革の長年のアジェンダだ。

政治的発言

 ユン総長は、検察に政治色を与える致命的な過ちを犯した。政界進出の可能性を残した発言をしたことで、検察総長という職位が本人の政治的目的のために利用される可能性もあるという疑念を抱かせた。

 「裁判官査察」疑惑について口を閉ざした裁判官代表会議の態度は、一見文弱に見えるかもしれないが、見方を変えれば、政治的中立性に傷をつけまいとする司法府の原則主義ともいえる。口先では裁判所並みの準司法機関だといいながら、「検察党」という言葉が公然と通用する状況を作った検察とは対照的な姿だ。ユン総長の責任は軽くない。

 ユン総長の懲戒事由は、過度な権限の横暴な行使や牽制装置の不在、政治的偏向など、検察改革が必要な地点と関連しており、事実ならば二度と起きてはならないことだ。懲戒の程度とは別に、法的・社会的評価を下すべき問題だ。

//ハンギョレ新聞社
パク・ヨンヒョン論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/973334.html韓国語原文入力:2020-12-09 09:22
訳H.J

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