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[寄稿]慰安婦問題、もう裁判所が答える番だ

登録:2020-12-07 08:23 修正:2020-12-07 11:43
ヤン・ソンウ |法務法人「チヒャン」弁護士

 「慰安婦」被害者と遺族が日本政府を相手に起こした損害賠償請求の一審判決がまもなく下される。国際法に違反してまで3年間訴状の送達を拒否してきた日本政府は、昨年11月に最初の裁判が始まって以来、一度も出席していない。その代わり、国家免除を理由に今回の訴訟は却下されるべきだという立場だけを韓国政府に伝えた。

 日本政府が主張する国家免除は「国内の裁判所は外国の国家に対する訴訟に関して裁判できない」という国際法上の原則だ。主権を持つ国家間では、互いに裁判権を行使できず、外交などの方式で解決せよという趣旨で、この原則が適用されれば、裁判所は審理せずに却下の判決を下すことができる。日本側はこの原則を信じて、これまで「無対応」で一貫してきたのだ。

 国家免除は万古不変の原則だろうか?そうではない。国家免除に関する統一されて一貫した国家慣行はなく、多くの国も19世紀末から商行為に対しては国家免除の例外を認めるなど、各国によって国家免除の概念が相対的に変化してきたからだ。イタリアとギリシャの最高裁判所は、第2次世界大戦中にドイツ軍が自国民に対して行った不法行為が重大な人権侵害に当たるという理由で、ドイツが主張する国家免除を否定し、被害者に軍配を上げた。少なくとも反人道的・反人権的犯罪では加害者は国家免除の後ろに隠れることはできないと判断したのだ。

 ドイツはこれを不服として、2008年に国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。国際司法裁判所は2012年、イタリア司法府が国家免除を認めないことは国際法違反であると判示し、イタリア最高裁判所とは異なる判断を下した。国家免除の適用を認めたのだ。その後、イタリア政府と裁判所は国際司法裁判所の決定を受け入れ、これ以上関連訴訟を審理しないように見えた。

 しかし、大どんでん返しが待っていた。イタリア憲法裁判所が2014年に裁判官12人の全員一致で、「国家免除を理由に重大な人権侵害被害者の裁判請求権を否認したのは違憲」と宣言したのだ。重大な人権侵害行為に対してまで国家免除を拡大することは、「人間の尊厳性の保護」および「裁判を受ける権利」を明示しているイタリア憲法と衝突するというのが主な理由であった。

 イタリア憲法裁の決定は、韓国にも示唆するところが大きい。もし韓国の裁判所が国家免除を受け入れ、原告らの裁判権行使を否認して訴訟を却下したら、「慰安婦」被害者たちが人間の尊厳性を回復して賠償請求権を実現するために最後の手段として選択したこの訴訟は、最後まで日本国に対して何の法的責任も問わないまま終結することになる。これは、韓国の憲法秩序に明らかに反する。イタリアと同様、韓国の憲法も「人間の尊厳と価値」(憲法第10条)および「裁判請求権」(憲法第27条)を保障しており、無条件の国家免除の適用は韓国の憲法秩序を深刻に損ねるからだ。にもかかわらず、形式的な法論理を掲げて、韓国の憲法秩序に反する国家免除を適用することがはたして妥当だろうか。

 時間はあまり残されていない。「慰安婦」被害生存者は現在16人で、平均年齢は93歳に達する。これまで「慰安婦」被害者たちは現在の外交的、政治的状況の中で、国際連帯や国家機構を通じた解決に向けて努力し、加害国の日本の裁判所でも訴訟などの努力を尽くした。イ・ヨンスさんは最後の弁論期日に出席して「もう信じられるところは法しかない。だから大韓民国法に切迫した気持ちで訴える」と述べ、今回の裁判が日本に法的責任を問い、被害回復のための最後の手段であることを強調した。

 20世紀最大の人権侵害犯罪とされる日本軍「慰安婦」被害者問題は現在進行形だ。加害国の日本は法的責任を認めず、今や事実の存在すら否定している。韓国の裁判所は、この裁判を通じて、国際秩序の中で無視されていた一人の人間としての人権が保障される契機を作らなければならない。今度は裁判所がその訴えに答える番だ。

//ハンギョレ新聞社

ヤン・ソンウ |法務法人「チヒャン」弁護士 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/972987.html韓国語原文入力:2020-12-07 02:41
訳C.M

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