私たちが主導権を握り、北朝鮮と米国と国際社会を積極的に説得せねばならない。それでこそ、北朝鮮は核を放棄し、国際社会は北朝鮮に対する制裁を解き、朝米国交正常化が実現できる。朝鮮半島の主人は私たちである。
米国の大統領が替わろうとしている。超大国の最高指導者の交代は、朝鮮半島にどのような変化をもたらすだろうか。わからない。ジョー・バイデン自身もまだよく分かっていないだろう。
ジョー・バイデン氏は先月29日、韓国系米国人200万人に支持を訴える文章を聯合ニュースに寄稿した。朝鮮半島政策はたったの一文だった。
「私は原則に則った外交に関与し、非核化した北朝鮮と統一された朝鮮半島に向かって進み続ける」
何をどうするつもりかはまったくない。当然のことだ。具体的な内容はこれから外交・安保参謀たちとともに徐々に埋めていかねばならない。ジョー・バイデン氏にとって朝鮮半島は優先課題ではない。
韓国の政府と国会と与党と野党の関係者らが次々と米国に行くと言って騒いでいる。ジョー・バイデン氏や側近たちとの関係を先を争って自慢している。恥ずべきことだ。少し落ち着いてくれたらと思う。
米国に行って誰に会おうとしているのだろう。会って話をすれば効果があるのだろうか。あまりないだろう。ジョー・バイデン氏はまだ政権引き継ぎ作業を始めてもいない。トランプはおとなしく政権を引き渡す気はなさそうだ。
いま韓国に必要なのは、時を待ちつつ米国の新しい大統領と参謀たちを説得しうる解決策と論理を整えることだ。北朝鮮が米国の新大統領の関心を引くために、突然核実験をしたりミサイルを発射したりしないよう管理することだ。国内で異論が出ないように、政府、与党、野党の意見を事前に調整しておくことだ。
米国は朝鮮半島において韓国を無視することはできない。私たちが当事者だからだ。軍事同盟だからだ。米国の朝鮮半島の専門家たちは、韓国が考えているよりもはるかに朝鮮半島について無知だ。ジョー・バイデン氏も朝鮮半島をよく知らない。いずれにせよ文在寅(ムン・ジェイン)大統領と緊密に協議せざるを得ない。ジョー・バイデン氏だけがそうなのではない。歴代の米政権は概ねそうだった。
1998年に米国を訪問した金大中(キム・デジュン)大統領に、ビル・クリントン大統領は対北朝鮮政策を説明してほしいと要請した。金大中大統領は「太陽政策は、考えてみれば米国の成功から学んだもの」とし、米国の和解政策によってソ連が崩壊し、中国とベトナムが開放した例を挙げた。クリントン大統領はこのように答えた。
「金大統領の比重と能力を見ると、朝鮮半島問題は金大統領に主導をお願いしたい。金大統領がハンドルを握って運転し、私は隣の席に移って補助的な役割を担います」
クリントン大統領は、北朝鮮政策調整官にウィリアム・ペリー元国防長官を任命した。ペリーは1994年の第1次北朝鮮核危機の際、全面戦争を準備し、寧辺(ヨンビョン)の核施設を攻撃しようと主張した強硬派だった。
金大中大統領とイム・ドンウォン外交安保首席は彼を執拗に説得した。1999年9月、「核とミサイルの脅威を終わらせるために北朝鮮の協力を確保しうるなら、米国は北朝鮮との国交樹立を含め、関係正常化をなしえなければならない」ことを内容とする「ペリー・プロセス」が完成した。
2000年には南北首脳会談が開かれた。北朝鮮のチョ・ミョンノク次帥(軍の階級)が米国を訪問した。米国のオルブライト国務長官が北朝鮮を訪問した。クリントン大統領の訪朝のためだった。
しかしクリントン大統領は中東和平交渉に足を引っ張られ、北朝鮮に行けぬまま退任した。2年にわたり丹念に積み上げてきた朝鮮半島平和の機会を惜しくも逃したのだ。
正反対の状況も起こった。バラク・オバマ大統領の在任中、米国の朝鮮半島政策は「戦略的忍耐」だった。北朝鮮の核開発を事実上放置したことになる。オバマ政権の「戦略的忍耐」は李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権の対北朝鮮強硬策と深い関連がある。南北関係が悪化したため、朝米対話も基本的に止まってしまったからだ。
2018年、朝鮮半島に平和の風が再び漂った。文在寅大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長とドナルド・トランプを同時に説得することに成功した。今度は米国の軍産複合体が障害だった。彼らは朝鮮半島の平和を望んでいなかった。トランプの参謀だったジョン・ボルトンが交渉を破壊した。
2020年の米大統領選挙が終わった。ジョー・バイデン氏はオバマ政権の戦略的忍耐に戻るのか、トランプ政権の対北朝鮮交渉の成果を受け継ぐのか、今は分からない。下手な予測は危険だ
重要なのは文在寅大統領と韓国政府の主導権だ。私たちが主導権を握り、北朝鮮と米国と国際社会を積極的に説得せねばならない。
それでこそ、北朝鮮は核を放棄し、国際社会は北朝鮮に対する制裁を解き、朝米国交正常化が実現できる。朝鮮半島の主人は私たちである。
ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )