米国のジョー・バイデン次期大統領が正式に就任するまであと数カ月だが、韓国に注目する人々は、バイデン氏の大統領当選が韓米同盟と対北朝鮮関係の未来にどのような意味を持つのかを問い始めている。いまのところ、流麗だが曖昧なマスコミのコラム、陳腐な選挙遊説演説、時期外れのレトリックの繰り返しがすべてだ。
こうした分析の空白を埋めるかのように、多くの分析家はバイデン氏が過去のバラク・オバマ政権の「戦略的忍耐」政策を復活させると推定している。しかしこれは、北朝鮮が長距離ミサイルを開発し、核兵器を備蓄する時間を稼がせただけの失敗した政策だ。
米ワシントンの多くの共和党員は、バイデン氏がドナルド・トランプ大統領がこれまで北朝鮮と成し遂げた進展を廃棄すると予想している。しかし、私はもっと楽観的な見通しを持っている。バイデン政権には、朝鮮半島の政治力学に深い変化を与える革命的な試みをする様々な動機がある。韓米同盟と対北朝鮮関係において、オバマ前大統領が成し遂げたことのうち成功したことと、トランプ大統領がうまくやり遂げた部分を結合してみる価値があると思われる。
バイデン氏は、これまで同盟を強く擁護してきた人物であり、今後これと異なる主張をすると考える理由もない。それなら、彼は韓米防衛費分担特別協定を早期に終えようとするだろう。韓国がこれまで同盟維持のために金銭的に十分に貢献しなかったという愚かな主張を完全に終わらせるだろう。バイデン氏は、防衛費分担特別協定を早く解決させることができ、またそうしなければならない。オバマ前大統領はソウルと強力な関係を維持しており、バイデン大統領も同じアプローチを追求すべきだ。
バイデン氏は、2020年に予定されていた戦時作戦統制権(戦作権)の移管も遅らせてはならない。コロナ禍で戦作権返還に向けて困難が伴い、実際に返還が遅れる可能性はあるが、韓米両国は年末までに最終的な返還期限を確定しなければならない。韓国軍は期限に合わせて戦作権を移管する能力を明確に備えたため、この程度の日程なら時間的余裕は十分にある。
バイデン氏がトランプ大統領の変わったアプローチをそのままコピーして政策に反映すると期待する人はいない。しかし、政治的ライバルが成し遂げたという理由だけでこれまでの進展を放棄することはないというシグナルを送る行動を、すぐにでも示すことはできるだろう。
このためには言葉が肝心だ。バイデン氏は米国と北朝鮮が荒々しいレトリックと核戦争の脅威で対峙し続けた2017年の暗い時期に戻ることを望まないという点を明確にすることで、「新しい形の対北朝鮮関係」の導出を望むと早めに宣言すべきだ。その後は、平壌(ピョンヤン)と関連した事案に段階別にアプローチするという点や、発言するよりも傾聴することに力を入れるという意志を示さなければならない。このような行動は、安保問題に対する北朝鮮の見方を理解しようとする試みを意味する。また、両国が互いを恐れない雰囲気で信頼を形成する方法を模索する試みと映るだろう。
ソウルの文在寅(ムン・ジェイン)政権は、公開的には当然慎重な態度を取り、新しい米政府の関係者らに過度な圧力を加える行動を避けるだろうが、自分たちの対北朝鮮政策路線をやわらかく主張できるだろう。選択可能な案は多いが、文在寅政権は経済制裁、新型コロナ、台風被害、食糧安保など、北朝鮮が現在直面している多くの難関を考慮しながら戦略を立てなければならない。
今後数カ月間、ワシントンとソウルは非核化の第一段階を踏む次元で、一部制裁を解除する緊張緩和案に合意するために努力すべきだ。これに応えて北朝鮮が差し出すものは多い。このうち石炭・繊維などに対する輸出規制の解除と交換する用意があるものとして、寧辺(ヨンビョン)核施設の永久閉鎖と中長距離ミサイル発射実験および核実験の完全中止合意が挙げられる。この取引は終戦宣言、連絡事務所の開設その他の信頼構築措置などとセットで処理される可能性がある。バイデン政権が北朝鮮と意味ある実務レベルの対話を望むことを考えれば、このすべての措置の第一歩として、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹のキム・ヨジョン労働党中央委員会第1副部長を大統領就任直後にワシントンに招待することもできるだろう。
私はバイデン政権が過去からの教訓を得て、北朝鮮問題を実用的にアプローチすることを楽観しているが、包括的な政策検討が終わる時期となる来年の春まで待つならば、すべての力を失う可能性もある
米国は新型コロナウイルス、経済、中国などのような最大懸案に優先的に集中し、他の問題は差し置こうとする自然な衝動を覚えるだろう。そうするならば、バイデン政権は北朝鮮がミサイルを発射したり核実験をする時だけ北朝鮮問題に集中したオバマ政権の失敗を繰り返すことになるだろう。