「じっとしていろ」という既成世代の言葉に再びだまされるな。医学部を去ることは患者のためになるし、何よりもあなたたちにとって良いことだ。金持ちになりたいなら、貧しく病んだ人たちの金でではなく、力を持ち、富める者たちの金でなれ。去りたくなければ、良い医者を育てる所へと医学部を変えよ。既成世代は間違っている。
医学部生は学校を去れ。医学部で20年あまり教授生活を送ってきた者が、医学部生たちに伝える心からの助言だ。現在の医学部の教育は、良い医者の養成に失敗した。若い医者たちが救急室と集中治療室を離れることを決めたことで、救急患者が路頭に迷い、重症患者の手術が延期された時、韓国の医学教育は終わりを迎えた。医学部生たちの集団行動「留保」宣言が国家試験に「応じること」だと述べる先輩たちの「通訳」が、その失敗を改めて確認させてくれた。数日前、本科4年生が医師国家試験に「応じることを再度表明」した理由が「新型コロナ拡散によって国民の健康権が脅かされている」というものなら、まったく同じ理由で、救急室と集中治療室からの撤収に同調すべきではなかったのだ。
もちろん、このような医学教育の失敗の責任は、全面的にわれわれ既成世代(今の社会を主導的に動かしている年配世代)とその上の先輩たちにある。この者たちの主な罪状は次の通りだ。勉強さえできれば家事、学校の掃除さえも免除した罪、ひとつのクラスで大学に行く数人のために数十人の学生たちをエキストラにした罪、体育・音楽・美術の時間を奪った罪、夜遅くまで塾に通わせ眠れなくした罪、マシュマロを食べるのをより長く我慢した子が成功すると嘘をついた罪、重い思春期の病すら許さなかった罪、長編小説の要約本ばかりを読ませた罪、3等級以下の子とは遊ぶなと言った罪、行きたかった数学科や天体物理学科に行かせなかった罪、お粗末な予科教育課程を運営した罪、ごまかしと違法行為で大金を稼いだ医者を成功した先輩として紹介した罪、インターンと専攻医を被教育者ではなく低賃金労働者として扱った罪、いたずらに若い専攻医と医学部生をあおってストをさせ、自分たちはやらなかった罪。
しかし、政府もこれに劣らぬ過ちがある。学校や国立病院すら金儲けの機関として育成した罪、規制フリーゾーン、規制サンドボックスの施行で、営利遺伝子検査などの科学的根拠もない各種検査による金儲けを容認した罪、データ3法改悪によって患者情報を営利機関に渡すことを合法化した罪、海外患者の誘引斡旋を督励した罪、公共医療の強化を言いながら予算はわずかしか割り当てず、国民を欺いた罪、その中でも最も破廉恥な罪は、自分たちはこのように医療営利化に血眼になっていながら、ストライキを起こした医師たちには「公共性」を云々していることだろう。
ゆえに医学部生たちよ、既成世代に思う存分悪態をつけ(だが気をつけてほしい。我々もかつてはあなたたちのように若かった)。何よりも既成世代にだまされるな。医者という職業は既成世代が教えたのとは全く異なる職業だ。医者とは一生、患者たちの血、膿、大小便の中でのたうち回る職業だ。しばしば太ももをつねりながら眠気に耐え、食事の途中でも飛び出して行かねばならず、せっかくの休暇で旅に出ても、入院患者の血圧を事あるごとに確認し、ややもすれば家族を放って先に帰らねばならない職業だ。8時間を超える大手術を終え、気力が尽きて手術室の床に横たわった時、死にそうなほどにわき上がってくる疲労混じりの喜悦を繰り返し楽しまねばならない「奇妙な」職業でもある。戦争が勃発しても患者を置いては集中治療室を離れられぬ宿命を持った職業だ。何よりも、患者よりも先に痛みを感じ、より長く痛まねばならぬ職業だ。
だから、そんな職業に就きたくないのなら、今からでも遅くはない。医学部を去れ。「じっとしていろ」という既成世代の言葉に再びだまされるな。医学部を去ることは患者のためになるし、何よりもあなたたちにとって良いことだ。金持ちになりたいなら、貧しく病んだ人たちの金でではなく、力を持ち、富める者たちの金でなれ。去りたくなければ、良い医者を育てる所へと医学部を変えよ。既成世代は間違っている。しかし、あなたたちが団結すれば変えられる。完全に去る決心をすることが難しいなら、少しの間だけでも医学部を去ることだ。1、2年早く医者になることはそれほど重要ではない。
70年前、卒業を6カ月後に控えたある医学部生も、古いバイクにまたがって学校を去った。チリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラの国境を越え、彼は心の境界を一つ一つ消し去り、ついに考えが世界のように大きくなった。旅行から戻った時、彼は「本物の医者」になっていた。哲学者ジャン=ポール・サルトルは彼を「我らの時代の最も完全な人間」と呼んだ。彼を本物の医者にしたのは、旅先で出会った人々と毛布1枚で夜を明かした「最も寒い夜」であった。指が一本もなく、手に棒をつけて演奏するのに合わせて、目の見えないハンセン病患者が歌った歌だった。当然、それは決して学校では得られぬものだ。
医学部生は医学部を、工学部生は工学部を、法学部生は法学部を去り、勇敢に古いバイクに身を委ねよ。そのバイクに「ポデローサII」よりも素敵な名をつけてもいい。共に旅立つ友がいればさらに良い。去ったら、どうかこの偽善、貪欲、偽りに満ちた既成世代の世界に二度と戻って来ないよう。もし戻ってくるなら、「本物」となって戻ってきてほしい。「殻」は去り「中身」として戻ってきてほしい。
シン・ヨンジョン|漢陽大学医学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )