北朝鮮が9日正午から南北間のすべての通信線を遮断・廃棄し、「対南(対韓国)事業」を「対敵事業」に転換すると宣言した。北朝鮮が「段階別対敵事業の最初の措置」として南北間のすべての連絡線を遮断したと発表し、追加の措置も予想される。朝鮮半島情勢が、南北関係が完全に断絶した2018年以前に戻るかどうかの重大な岐路に立たされている。
北朝鮮の同日の措置は、一部の脱北者団体の対北朝鮮ビラまきを問題視した今月4日のキム・ヨジョン労働党中央委員会第1副部長の談話の延長線上にある。北朝鮮がこの日電撃的に遮断した通信線は、南北疎通の基本手段であるだけでなく、南北関係のバロメーターの役割を果たしてきた。朴槿恵(パク・クネ)政府時代の2016年初め、北朝鮮の4回目の核実験後、南北間の連絡チャンネルが途絶えたことで、南北関係も遮断された。文在寅(ムン・ジェイン)政府発足後の2018年1月3日、板門店(パンムンジョム)の南北連絡チャンネルが復元され、同月9日の高官級会談を皮切りに南北対話が再開された。
遮断された通信線のうち、東・西海の軍事通信線と大統領府-朝鮮労働党中央委本部庁舎の直通通信線は大きな意味を持つ。これらの通信線が断絶されると、南北軍事衝突の激化を防ぐ安全弁が機能を果たせなくなる。6月の西海(黄海)ワタリガニ漁のシーズンを控え、南北間の衝突が再燃しないか懸念される。
脱北者団体によるビラまきは、昨日今日のことではない。最近、北朝鮮が激しい反応を示したのは、韓国に対して積もった不信感と不満、北朝鮮の厳しい国内外の環境が積み重なったものとみられる。北朝鮮は2018年の4・27板門店宣言、9・19平壌宣言、9・19軍事合意を韓国が十分に履行していないと見ている。対北ビラ規制立法だけでは、最近の状況が解決できない可能性が高い。
昨年2月にハノイで開かれた朝米首脳会談で合意が見送られて以来、朝米対話には成果が見られない。国際社会の対北朝鮮制裁に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防疫のために北朝鮮が国境を閉鎖したことで、今年上半期、北朝鮮の経済事情がさらに悪化したという。北朝鮮は「自力更生による正面突破」に住民を動員する名分が必要な状況だ。北朝鮮としては、内部引き締めが切に求められるうえ、「最高尊厳」である金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長を露骨に非難する対北ビラまきは容認できないだろう。
このような困難を考慮しても、北朝鮮は韓国の苦しい境遇も易地思之(相手の立場に立って考えること)しなければならない。韓国政府は国内の政治的負担を甘受してまで、キム・ヨジョン第1副部長の談話後、速やかに対北ビラまきを阻止する方針を示した。ところが、北朝鮮はこれを無視してすべての通信線を遮断し、連日の発言で韓国への圧力と非難を強めている。今月5日、北朝鮮統一戦線部報道官談話で韓国政府に向かって「敵はやはり敵」だとし、「行き着くところまで行ってみよう」と警告した。北朝鮮のこのような態度は遺憾極まりない。
南北いずれも行き着くところまで行ってはならない。南北は互いに対敵事業の対象ではない。遅々として進まなくても、対話を通じて問題を解決しなければならない。