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[社説]イ・ジェヨン令状棄却、「違法継承」の免罪符ではない

登録:2020-06-10 07:57 修正:2020-07-01 08:32
経営権継承のための不公正合併、粉飾会計などの疑いで拘束令状が請求されたサムスン電子のイ・ジェヨン副会長が9日、裁判所の令状棄却後、京畿道義王市のソウル拘置所から出て来ている//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の拘束令状が9日未明に棄却された。国政壟断事件で収監され、控訴審の執行猶予判決で釈放されたイ副会長は、2年4カ月ぶりに再び拘束される危機を免れた。しかし、裁判所の拘束令状棄却の理由を見ると、経営権継承のための違法行為が免罪されたわけではない。

 裁判所は拘束令状の棄却事由で「非拘束裁判の原則」を強調した。サムスン物産と第一毛織の不公正合併、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などの基本的な事実関係は認めながらも、それとは別に証拠隠滅や逃走の憂慮など、拘束の必要性を厳格に審理したのだ。このような原則は、イ・ジェヨン副会長のようないわゆる特権層でなくても、広く適用されることが望ましい。検察も、今回イ副会長側が招集を要請した検察捜査審議委員会を無力化してまで拘束令状を請求したことが正しかったのか、振り返ってみる必要がある。

 しかし、令状棄却はイ副会長に免罪符を与えたものでは全くない。合併や会計上の違法行為は認められ、それに対するイ副会長らの責任を裁判で問わなければならないというのが裁判所の判断趣旨だ。経営権継承に関して違法行為が起きたのに、その恩恵を受ける者が何の関与もしていないというのは常識的に言って理解できない。イ副会長がこうした違法行為を全く知らなかったというサムスンの主張は、サムスンのトップの存在感そのものを否定するものだ。想像しがたい。

 しかも、イ副会長が経営権の継承を支援してもらうため、朴槿恵(パク・クネ)前大統領に賄賂を渡した容疑は、最高裁判所判決まで経て、有罪が事実上確定している。違法な経営権継承作業がすでに確認されているわけだ。サムスンは遵法監視委員会を設置し、イ副会長は自ら国民に対して謝罪までした。反省と謝罪を、捜査や裁判を有利に進めるためだけに利用しようというのでないのなら、今回の事案に対しても処罰回避ばかりに汲々とせず、違法継承問題に責任を取り、それを断ち切るという姿勢を示さなければならない。

 裁判とは別に、イ副会長が国民に対する謝罪で交わした約束も、必ず守らなければならない。遵法監視委の要請でサムスン電子などの7つの系列会社が出した履行案には、サムスン生命のサムスン電子株保有問題の解決をはじめ、支配構造の改善、取締役会中心の経営などの実質的な内容が抜けており、再度補完要求を受けた。サムスンは、国民に対する謝罪が危機を免れるための虚言ではないことを、実践で立証しなければならないだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/948630.html韓国語原文入力:2020-06-09 18:35
訳D.K

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