2週間ほど経てば、ソウル汝矣島(ヨイド、韓国国会の所在地)の輪中路(ユンジュンノ)では早咲きの桜の花が一つ二つ咲き始めるだろう。その花が満開の絶頂に達する頃、今回の総選挙で汝矣島を目指して熱心に走ってきた人々は喜びと悲しみに別れる。残念ながら、「選手」の半数以上は満開の汝矣島の桜を見ることはできない。その悲喜が何によって分かれるかは誰にも分からない。過去のマスコミの総選挙予想はいつも外れてきた。民意は桜の花びらと同じくらい軽くて柔らかいと思っても、時に石のように冷たく堅く変わる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全ての日常を飲み込んでしまった今、何が民意を揺さぶるのか見当すらつかない。
国中が防疫に力を入れているため、いま汝矣島で起こっている呆れた事に対する関心はそれほど高くないようだ。このような無関心に乗じて、彼ら独特の恥知らずと小細工、手前勝手な政治工学が露骨に進められている。
政治の退行だ。裕福な二つの金持ち(富者)政党が、父親と息子の関係を結んだ父子(プジャ。富者と発音が同じ)政党へとそれぞれ分化し、選挙法を無力化している。有権者の選択を勝手に予断し、極端な支持者を刺激して対立を煽り、既得権の維持のために大義名分にも価値にも背を向けている。
このような退行の責任から保守野党も自由ではないが、状況がここまでに至った最大の責任は、共に民主党にある。未来統合党と未来韓国党が繰り広げる親子の争いは見苦しい。それでもこの一家には一貫性くらいはある。選挙制改革法案に反対し、票決に参加しなかった。自分たちが反対した法案を無力化しようと衛星政党の結成を公言し、そのとおり実行した。家運が傾いていた「悪の家門」は今や生き返りそうだから、またぞろ縄張り争いまで始めているのだ。
民主党はどうか。民主党は昨年、ファストトラックによって選挙制改革法の成立を主導した政党だ。選挙法の設計と交渉も民主党が主導した。あんなにも死活をかけていた選挙法を、自ら一気に蹴飛ばしてしまったのだ。衛星政党を作る統合党に向かって民主党が浴びせた非難はすべて列挙するのも手に余るが、今やそんなことあったっけと言わんばかりに「悪の家門」と同様にふるまっている。言を翻して恥じることなく、野党を言い訳にしてばかりだ。良質な少数政党の大半を排除しながら、「少数政党の院内進出を助けるための決断」という「自分がやればロマンス、他人がやれば不倫」式の自己欺瞞も気軽に行う。
個人的には、最近の民主党が示すこのような行動は、様々な面でチョ・グク事態のある部分に似ていると思う。チョ・グク事態の時に痛感した教訓や重要な省察すべき部分を民主党は今でも把握し損ねている。あの時、多くの人々が失望したのは革新・改革陣営の二重性を見たからだ。守旧既得権を批判して進歩するには、厳格な自己管理と一貫した判断基準、一貫した態度が必要だ。だが、人々は彼らにはそれがないと感じた。「そうでない振りをして孤高にふるまっていたのに、実はお前たちも同じだった」と感じれば、さらに怒って落胆せざるをえない。
今回の民主党の衛星政党を目にし、人々は「お前たちも同じだ」と感じるだろう。原則をあんなにも強調しておきながら密かに変則を選び、連動型比例制の価値を守りたいのに相手のせいで仕方なかったと言い、議席数への欲はないと言いつつ手に入るものはすべて手に入れようとする。それでも自分たちに誤りはないと言う。その間に改革の成果と言っていた新しい選挙法は満身創痍となったが、民主党はありふれた遺憾表明すらしない。
政治の領域では、ある論争が起これば、その論争の内容よりもその事案に対する姿勢や態度で評価されることが多い。失敗や誤った判断も、大いに反省して謝罪すれば、それで終わる可能性もある。「次悪」を選ばなければならないのなら、国民に、または相手に率直に理解を求め、誠実に問題を解決していけば済む話だ。今、民主党はまったく逆に向かっている。保守野党が相次いで失点し、リーダーシップ不足のために右往左往しているが、民主党も近いうちに野党に反射利益を与えることになるのは明らかだ。
先日、「今回の総選挙はどちらがより謙虚なのかの争い」という話を聞いた。心から100％同意する。民主党は状況の厳しさを認識して深く謝罪し、有権者が本気を感じるような自己犠牲の決断によって有権者の理解を求めるべきだ。このままでは多くの民主党候補が、花見どころか石のような民意を見ることになるかもしれない。
ソク・チンファン政治チーム長//ハンギョレ新聞社
訳D.K
