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[社説]新型コロナ恐怖あおる「フェイクニュース」と「ヘイト表現」を憂慮する

登録:2020-01-29 01:33 修正:2020-01-29 07:48
28日の仁川空港第1ターミナル。中国の航空会社のチケット発券窓口が閑散としている=空港写真記者団//ハンギョレ新聞社

 28日、中国の新型コロナウイルス感染症の確定患者は4500人、死者は100人を超えた。ドイツでも初の確定患者が出るなど、感染病は世界的に広がっており、拡散スピードも速まっている。このような状況で、人々が不安や警戒心を抱くのは自然で、行き過ぎだとは言えない。しかし、根拠のないフェイクニュースや歪曲された情報が氾濫し、甚だしくは中国人フォビア現象まで現れていることは憂慮される。むしろ、このような反応が、新型コロナの拡散阻止の妨げになる恐れがある。

 3人目の確定患者がソウル江南(カンナム)や京畿道一山(イルサン)周辺を通ったという事実が伝わった後、ネット上のコミュニティやSNSでは、その患者が高陽(コヤン)スターフィールドを訪れたという噂が急速に広まり、疾病管理本部が事実ではないと釈明した。韓国でも死者が出たとか、患者の居住地域を特定するなどのうその情報、情報を装ってクリックを誘導するスミッシング・メッセージまで広がっている。政府は、現場確認と消毒作業に時間が必要なため、病院名などの具体的な場所を最初に明らかにできなかったというが、漠然とした地域名が不安感を煽っているのは事実だ。必要な作業が終われば、定例ブリーフィングの時間でなくても、接触者や患者の動線などの国民が知りたがっている情報を公開し、歪曲された情報の流通を徹底的に遮断することが必要だ。

 今回の事態が、発生地と目される武漢、さらには中国に対する嫌悪へと拡大している一部のあり方は決して望ましいものではない。中国の道端で倒れている人の映像が新型コロナのせいであるかのように広まる一方、野生動物を食べる習慣への無差別的な非難やヘイトの書き込みが相次いでいる。大統領府の掲示板では、中国人入国禁止請願の署名者が50万人を超えた。しかし、中国人差別や出入国禁止のような措置が、かえって症状の申告を控えさせたり、検疫の死角地帯を拡大したりすることで、事態を悪化させるだろうという専門家の指摘に耳を傾ける必要がある。一部からは「武漢肺炎」という用語を使わないなどの理由で「事大主義」との非難があがっているが、差別をあおる単語を避けるのは常識であって、非難すべきことではない。

 感染症は人類の問題だ。中国政府は潜伏期にも伝染する可能性があるとしながらも根拠を明らかにしていないが、全面的に情報を公開し、各国政府と共有すべきだ。3千人を超える武漢からの入国者の全数調査に入った韓国政府は、迅速な情報公開こそが不安を減らす唯一の道であることを忘れてはならない。市民の自覚と協力も切実に求められている。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/925953.html韓国語原文入力:2020-01-28 18:17
訳D.K

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