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[特派員コラム]2020年、さらに危険になったトランプ

登録:2020-01-10 06:15 修正:2020-01-10 09:36
米国の反戦デモ参加者が4日にシアトルで開かれた集会で「イランとの戦争反対」と書かれたプラカードを持っている=シアトル/AFP・聯合ニュース

 全世界の人々が新年早々ワシントンを眺め、気をもんだ。北朝鮮の「クリスマスプレゼント」予告による朝米衝突の危機が沈静化したと思われたが、ドナルド・トランプ米大統領がイランの軍部の実力者ソレイマニ司令官の空襲殺害を指示するという電撃的な行動で、世界を戦争危機に陥れた。最近数日間、ワシントン地域の人たちは、雪の予報のために公立学校が下校時間を繰り上げるという教育庁のメールが届いた時も、「ひょっとして何かあるのでは?」と、しばらく気が気でなかった。「ワシントンやニューヨーク都心は行ってはならない」と、冗談半分で話す人たちもいた。

 イラク内の米軍基地に対するイランのミサイル攻撃に、トランプが武力対応を自粛したのは幸いなことだ。中国や北朝鮮同様、今回もトランプ自らが事態を作り、緊張を高めてはこれを緩和して、勝利を宣言するパターンが繰り返されたわけだが、いずれにせよ戦争は回避された。

 しかし、最悪の状況を免れたとしても、安心するわけにはいかない。イラン事態は根拠と過程が疑わしい衝動的決定や「イエスマン」たちで埋まっていく参謀陣、トランプに対する米国の内外の低い信頼など、トランプの執権以来3年間積み重なった不安定性が集約された事件だ。現在の弾劾局面と11月の大統領選挙前を控え、トランプのこのような弱点は絶えず米国と世界の人々を苦しめる可能性が高い。

 トランプ政権はソレイマニ除去決定の理由として、「差し迫った脅威」を挙げたが、当局のブリーフィングを聞いた議員たちは「マスコミの報道以上に具体的なものはない」として、証拠不足を指摘している。トランプの「イラン52カ所を打撃」発言も、当局者らはそれがどこなのか、分析された状態ではなかったと話している。米国の専門家らは、トランプが、ソレイマニ司令官の除去がもたらす報復の悪循環など、その影響について深く考えたことがあるかについて疑問を持っている。「トランプが今回は強い姿を見せたかったため」という分析が説得力をもって受け入れられている。

 こうしたことが起きるたびに、米国の政界では「レックス・ティラーソン国務長官やジェームズ・マティス国防長官がいたら、このような事態はなかっただろう」という声が上がっている。現在、トランプの横にいるマイク・ポンペオ国務長官やマーク・エスパー国防長官、ロバート・オブライエン国家安保補佐官、マーク・ミリー統合参謀本部議長ら外交安保分野の主な参謀が、トランプの顔色ばかりうかがっているというのだ。

 さらに、トランプは国内支持度が40%台で、任期中、反対世論50%台の壁を乗り越えずにいる。国際舞台ではイラン核協定など多国間協約を破綻させ、関税賦課や防衛費分担引き上げ要求などを振り回して、関係を悪化させてきた。彼の衝動的行動と国内外の信頼不足が相まって、不安定性が増している状況だ。

 朝米関係でも懸念すべきなのは、トランプが北朝鮮政権に軍事オプションを使う可能性ではなく、果たしてトランプが朝鮮半島の非核化と平和定着に対する真摯な意志と構想を持って北朝鮮との対話を始めたのか、(北朝鮮核問題を)優先課題として捉え、解決策を見出す熱意がまだ残っているのか、という根本的な疑問である。ホワイトハウスが昨年末出したトランプ政府3年の成果資料に、北朝鮮関連内容は「二回の朝米首脳会談」や「非武装地帯(DMZ)を渡って北朝鮮の土をふんだ最初の米国大統領」、「制裁を維持」などで、かなり短く記述されている。悪く言えば、トランプが北朝鮮の「利用価値」に興味を失いつつある格好だ。さらに、すべてを再選に有利か不利かによって判断する可能性が高く、北朝鮮にいかなる対応を取るかも予測できない。

 2020年、世界はこれまでの3年間よりはるかに揮発性と可燃性の高まった米国大統領を抱えて生きていかなければならない。それぞれ保護装備をしっかり用意すべき時だ。

//ハンギョレ新聞社

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/923885.html韓国語原文入力:2020-01-10 02:07
訳H.J

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