本文に移動

[社説]米国・イラン、武力衝突の「悪循環」に突入してはならない

登録:2020-01-06 05:32 修正:2020-01-06 08:36
米国の反戦デモ参加者が4日にシアトルで開かれた集会で「イランとの戦争反対」と書かれたプラカードを持っている=シアトル/AFP・聯合ニュース

 米軍が3日、イラン軍部の実力者である革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を“標的”空襲して殺害したことを契機に、米国とイランの正面衝突への憂慮が急速に広がっている。イランでは報復を誓う声が相次ぎ、これに対抗して米国は兵力増派に出た。突然、両国間の緊張が高まり、ただでさえ物騒な中東の情勢がより不安定になる可能性が高い。国連を含む国際社会では追加で緊張を高める行動の自制を要求する声が強い。両国はこれらの勧告を聞き入れ、慎重に行動してほしい。

 イラクの親イラン民兵隊は5日、イラク内の米軍基地に対する無差別報復攻撃を予告し、テヘランなどイラン各地ではソレイマニ司令官を追悼して米国を糾弾するデモが続いた。アヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者とハッサン・ロウハニ大統領などイラン指導部は「苛酷な報復」を警告している。米国も迅速な対応として兵力3500人の追加派兵を急いでいる。ドナルド・トランプ大統領はイランが報復すればイランの52カ所に反撃する準備ができているとして向かい火を放ち、両国間では一触即発の状況が展開されている。

 両国が衝突すれば、その余波は広範囲に及ばざるを得ない。イランが報復攻撃に乗り出せば、米国も予告通りに直ちに反撃に乗り出すに違いない。全面戦争に飛び火する可能性は高いとは思えないが、報復を交わす“悪循環”が各地で起これば、地域情勢の不安が加重されることは避けられない。また、原油価格の急騰や需給の不安定化などにより、国際経済にも否定的影響を及ぼすことがあり得る。ソレイマニ司令官が爆死した直後の3日のニューヨーク商品取引所では、2月引き渡し分のウエスト・テキサス産原油が前日より3.1%上昇して8カ月ぶりに最高値を記録した。世界の海上原油輸送量の3分の1が通過するホルムズ海峡が封鎖される場合には、世界経済への深刻な打撃が予想される。

 トランプ大統領は空襲についてソレイマニ司令官が「米国人に対して差し迫った邪悪な攻撃を企んでいた」ためと説明した。しかし、第三国で軍事力を動員して主権国家の高官を無断で殺害したことを、そのように自衛権で覆うことができるかは疑問だ。米国は今回の空襲が国際法違反の議論を引き起こしている事実に対して、謙虚な姿勢を示さなければならない。イランも軽率な報復攻撃で事態を悪化させるのではなく、より冷静になり慎重な対応を模索しなければならない。

 韓国政府は中東情勢の急変の可能性に備えなければならない。ホルムズ派兵も慎重に再検討する必要がある。場合によっては、米国とイランの武力衝突の間に挟まれて意図しない犠牲のみを強要されることがあり得る。イラクに滞在する韓国人1600人余りの撤収を含む安全対策も至急となった。また、中東情勢悪化による原油価格の急騰や原油需給への悪影響など、経済に及ぶ余波に対する点検も徹底的に行わなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/923265.html韓国語原文入力:2020-01-06 02:41
訳M.S

関連記事