韓国に対する米国の防衛費分担金引き上げ要求が激しい。米国は、現在の分担金総額の5倍に達する6兆ウォン(約5600億円)程度を要求しているという。特に、ここにはグアムやハワイなど朝鮮半島外に駐留する米国の戦略資産展開費用まで含まれていると見られる。また、米国が南シナ海やホルムズ海峡で作戦を遂行する時、韓国の派兵や金銭的支援を要請することがでありうるという話も聞こえてくる。
米国の要求に対して最初に考えなければならない点は、戦時作戦統制権(戦作権)問題だ。米国は韓国に戦作権を委譲していない。にもかかわらず韓国に過度な防衛費分担金を強要している。市場で商人がお客さんに品物は渡さずに代金だけ払えというようなものだ。韓国が戦作権を保有していない状態で、防衛費分担金だけ払うというのはありえない話だ。
米国の不当な要求に賢明に対処するには、より大きな枠組みで問題を眺める必要がある。国際政治の世界で、国家の行為を決める最も重要な基準は「国家利益」だ。米国の過度な防衛費分担金要求は、米国が追求する国家利益から派生したものだ。一つは、いわゆるインド太平洋戦略を手段に中国を牽制することであり、もう一つはインド太平洋地域での覇権を維持することだと言える。
しかし、米国のこうした国家利益は、韓国が追求すべき国家利益とは正面から相反する。韓国は中国と経済的パートナー関係にある。それにもかかわらず米国の国家利益を追従する手段に編入され、中国に対し軍事的に敵対的立場を取るならば、中国が黙っているだろうか?米国が韓国を助けるだろうと考えるかもしれない。だが、THAAD(高高度防衛ミサイル)配備の時に中国が韓国に対し経済報復を加える状況で、米国はどんな立場を取ったのか?さらに言えば、韓国の国家利益はインド太平洋地域で覇権を追求するところにはない。
韓米同盟を“韓米血盟”と理解する人々は、こうした意見に反論するだろう。しかし、同盟とは、あくまでも各同盟当事国の国家利益に符合する場合にのみ存在理由がある。特に“動物王国”とも言うべき国際政治の世界で、自国の国家利益に反する路線を歩むことは、すなわち自滅の道という事実を肝に銘じなければならない。
米国のホルムズ海峡派兵要求も、米国ではなく韓国の国家利益を基準に判断しなければならない。中東は、米国ですらどうにもできない火薬庫だ。韓国がホルムズ海峡に派兵して、中東紛争にかかわればどうなるだろうか?今年8月、イランは韓国に対しホルムズ海峡派兵を望まないとの公式立場を伝達した。韓国の国家利益に献身する政治指導者ならば、イランの立場を軽視してはならない。
韓国が周辺強大国に振り回されずに朝鮮半島の平和を恒久的に定着させるには、北朝鮮と不可侵条約や平和条約を締結しなければならない。韓国は米国と同盟関係にあり、北朝鮮は中国と同盟関係にあるので、絶対に米国と中国が参加する平和条約を締結しなければならない。先に南北の首脳が会って始めることができる。今がその適切な時期だと考える。南北の平和条約締結に米国と中国が反対しなければならない政治的・歴史的根拠がないためだ。何よりも南北の平和条約が締結される場合、朝米間の慢性的敵対感を解消し、正常な国家関係を樹立することができるはずだ。また、そうなれば地球上の最後の冷戦地帯である朝鮮半島は、ついに平和地帯として新たに踏みだし、世界に新しい平和のモデルを提示できるのではないだろうか。