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[寄稿]定年延長と既得権

登録:2019-09-24 02:28 修正:2019-09-24 08:24
イ・ガングク立命館大学経済学部教授//ハンギョレ新聞社

 日本は乳児用よりも老人用のオムツの方が多く売れる国だ。韓国はまだそれ程ではないが、出産率は日本より低く、高齢化の速度はより速い。韓国にも間もなく襲ってくる高齢化による労働力不足問題に対応するため、政府は先日、生産年齢人口の拡充案を発表した。政府は特に65歳までの定年延長に向けた継続雇用制度の2022年からの導入を検討することにした。老人の貧困が深刻なのにもかかわらず、国民年金受給年齢が2033年から65歳に引き上げられるのも背景のひとつだろう。

 この制度は日本をベンチマーキングしたものだ。日本政府は1998年に60歳定年を義務化し、2006年からは段階的に定年を延長して2013年には65歳まで引き上げた。日本企業は定年延長、継続雇用制度または定年廃止を選択することができるが、60歳に退職した後、契約職などとしてより低い賃金で雇う継続雇用制度を採る企業が約80%だ。今や70歳定年を推進している日本の定年延長は、これといった社会的軋轢を生まなかった。人手不足問題も深刻だったが、政府が長い間準備をし、労使の理解が深まったからだ。何よりも2013年以降、アベノミクスを背景に景気が回復し、若者の失業率が下がったことも後押しした。

 政策は日本と同じだが、韓国の現実は違う。経済界は費用負担が増えるとして反発しているが、最も大きな懸念は、定年延長の効果にあずかれるのが定年まで働ける公共部門や大企業の正規職など労働者の一部にすぎないのではないかという点だ。日本と違い、韓国は同じ職場で数十年間働き定年を迎える労働者が少ない。労働者全体の平均勤続年数は約6年と日本の半分に過ぎず、中小企業労働者の勤続年数は、はるかにもっと低い。良質の雇用が不足する若者や雇用不安に苦しむ中年労働者らにとって、定年延長は新規雇用を減らし、かえって悪いニュースとなりうる。

 何よりも韓国の労働市場では賃金の年功性が強すぎることが問題だ。国際的に比較してみると、韓国の勤続30年以上の労働者の年俸は入社当初と比べて3.3倍となるが、日本は2.5倍、欧州は1.7倍と低い。年功給は勤続年数が長いほど賃金が生産性に比べて高まるため、各企業は労働者が50代にも達しないうちに退職圧力をかける。定年延長の負担もさらに大きくなる。年功給の元祖である日本は長期にわたって賃金体系を改編してきており、2000年代以降は日本式職務給である役割給が広がっている。

 韓国の定年延長を既得権層のみが得をするようなものにしないためには、年功給改革または賃金ピーク制の実施が必要だろう。特に、定年が保障されていて処遇も良い公共部門が率先して行うことが求められている。一般公務員の下級職はそれほど高くないが、昨年の全公務員の平均年俸は約6264万ウォン(約570万円)で、公企業全体の平均年俸は7843万ウォン(約710万円)に達した。一方、全労働者の平均年俸は3634万ウォン(約330万円)であり、上位10%の下限は6950万ウォン(約630万円)だった。公務員試験の競争率が非常に高いというが、若者たちは合理的な選択をしているわけだ。

 もちろん、公共部門の雇用比重が他の先進国より低いということや、消防官や配達員などの劣悪な労働環境を考えれば、政府も推進しているように公共部門の雇用拡大と非正規職の正規職化が必要だろう。しかし、これとともに、給与の高い長期勤続者の賃金を抑制するなど、既得権を削る努力が求められる。多くの人々が共感するのに公共部門の改革が口先だけなのは、おそらくよく組織された公共部門の票を意識したためという政治的な理由だろう。

 最近のチョ・グク法務部長官の事態は、教育を通じて富が世襲される資本主義の機会の不平等問題を提起した。機会の不平等を解決するためにも、結局、富と所得の不平等問題に立ち向かわなければならないだろう。今回の事態は、資本と権力、そしてマスコミの結託に基づいた法制度の改正問題へと振り向かせてくれる。このような不正腐敗が不公正と不平等の根元になったのだから、司法と検察の改革ももちろん必要だ。

 しかし、既得権は“金の匙”や財閥、または検察の権力にのみあるものではない。上位10%への高い所得集中度に代表される韓国の不平等は、公共部門や大企業の正規職労組などの上層労働者たちの既得権との関連が小さくない。定年延長が不平等につながらないために、そして真に平等で公正な国を作るために必要なのは、既得権を抑制する労働市場の改革だ。

イ・ガングク立命館大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/910585.html韓国語原文入力: 2019-09-23 17:56
訳D.K

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