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[特派員コラム]少女像の隣の椅子に再び座ることができるだろうか

登録:2019-08-08 21:55 修正:2019-08-09 07:35
1日、名古屋市の愛知県美術館。「表現の不自由展・その後」企画展示場内に展示された「平和の少女像」の隣に置かれた椅子に、日本の子どもが座っている=名古屋/チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

 「平和の少女像」(少女像)は今、名古屋市の愛知芸術文化センター8階展示場に設置された臨時壁の裏に置かれている。日本最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」を主催した愛知県が、3日午後に少女像が出品された「表現の不自由展・その後」企画展示全体を中止させたためだ。少女像を含め「表現の不自由展・その後」に出品された展示品はすべて臨時壁の裏にそのまま置かれている。

 「表現の不自由展・その後」企画展示の実行委員である岡本有佳氏は7日、少女像の隣に置かれた椅子の写真を上げた。岡本委員は、フェイスブックに写真と共に上げた文で「平和の少女像には、少女の隣りに空の椅子があります。(展示が行われた1日から3日までの)たった3日の間に、この椅子にどれほど多くの人が座ったでしょう」として「この椅子に座った心で、一緒に考え、再開を実現させましよう。壁の向こうの会場はまだそのままです。

壁を壊すのは、私たちです」と書いた。

 そうだ。この像を制作したキム・ウンソン、キム・ソギョン夫婦は、少女像の隣に置かれた椅子の下に「隣に座ってみてください。手を握ってください。平和に向けた思いが広がることを祈ります」という文を書いておいた。展示初日の1日に訪れた名古屋の愛知芸術文化センターで、少女像の隣の椅子に子どもたちや20代の男性や女性など、多くの日本の市民が座ってみる姿を見た。高さ120センチの少女像の隣に座って、少女像と目の高さを合わせて見つめる観覧客の姿が目についた。

 展示3日目の3日には、100人ほどが「表現の不自由展・その後」を見るために列をつくったという。少女像に紙袋をかぶせて侮辱した人もいたが、他の日本人観覧客が何をするんだと制止したという。3日に展示場を訪れたというある男性は「1時間以上列にならばなければならず、翌日見ようと思って帰ったが、結局展示を見ることはできなかった」と苦々しく話した。

 この展示は、日本の市民の膨大な努力を経て実現した。津田大介トリエンナーレ芸術監督が、2015年に東京の小さなギャラリーで展示された「表現の不自由展」の後続展示を今回のトリエンナーレのプログラムの一つとして入れようと提案したのが今年の初めだった。2015年の展示を主導した実行委員たちと、愛知県側の長い交渉の末に、駐韓日本大使館前にある少女像と同じ形の少女像を平和の碑とともに完全に展示することができた。それ自体に意味があり“記念碑的な”ことだった。

 だが、先月29日、少女像の展示を初めて取材するために東京から名古屋に行く列車に乗った時も、果たして「最後まで展示できるだろうか」という心配が頭を離れなかった。少女像が日本で代表的タブーに属するということを知らないわけではなかったためだ。

チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 1日、展示開幕の初日に「表現の不自由展・その後」に出品された展示品を見た時も、心配がいっそう増した。展示品の中には、日本で絶対タブーと言える「天皇制」関連内容もあった。天皇の写真が燃え上がるような姿を表現した作品もあった。実際に愛知県側に抗議が集中した作品は、少女像と「天皇制」関連作品だったという。一方では、このようにやっとのことで展示が実現したのだから最後まで展示できるかも知れないという期待も捨てられなかった。

 そして、今も期待している。今年のトリエンナーレ展示は10月14日まで続く。もちろん万一の事態に備え、警備を強化するなどの追加対策は立てるべきだが、少女像と市民が会える機会が再びできてほしい。少女像の隣に置かれた椅子に座り、少女像と目の高さを合わせる市民の姿を見たい。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/905063.html韓国語原文入力:2019-08-08 19:23
訳J.S

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