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[コラム]俳句と少女像

登録:2019-08-05 10:24 修正:2019-08-12 10:46
「表現の不自由展・その後」ホームページに掲載された「九条俳句」作品の写真//ハンギョレ新聞社

 「俳句」は世界で最も短い韻文といわれる日本の定型詩だ。5・7・5の17の音節で詠まれるが、たいてい季節や自然を描く最初の節で始まる。短いながらも含蓄があるため、読み手によって様々に解釈できるのが魅力だ。17世紀の文学家の松尾芭蕉が本家であり、町内に一、二個の同好会がないのが珍しいほど、日本市民に愛されている。

 「平和の少女像」が展示されたあいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」には、唯一「作者非公開」と表示された作品がある。「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という作品「九条俳句」は、過去数年間日本で熱い論議の対象になった。

 話は2014年にさかのぼる。埼玉県さいたま市に住む70代の女性は、銀座に行ったときに偶然、雨の中で自衛隊の集団的自衛権行使の容認を反対する女性デモを見かけた。ベビーカーを押す母親たちや高齢者、若者たちの姿に感動を受けた彼女は、同好会で俳句を詠み、1位に選ばれた。ところが、この同好会が選定した俳句を毎月紹介してきた三橋公民館が突然掲載を拒否し、俳句コーナーを外して公民館報を発行した。「世論が二分するテーマで政治的中立に触れる」という理由だった。

 数回の抗議にもかかわらず、市が方針を変えなかったため、翌年、この女性は市を相手に訴訟を起こした。市民応援団とともに著名な学者や弁護士が合流した裁判の争点は、表現の自由の侵害と国民の学ぶ権利を保障する公民館の役割からの逸脱があったかどうかだった。昨年末、日本の最高裁判所は、表現の自由の侵害自体は認めないが、(俳句の不掲載は)違法だと認め、原告に対し5千円を賠償を命じる原審を確定した。顔と名前を非公開としている作者は「沈黙すれば何も動かせない。小さな声でも上げるげることができる社会を守るために、一歩踏み出してほしい」と感想を述べた。

 戦争と武力行使の放棄と軍隊の保有禁止を明記した日本の憲法9条1項と2項は、平和憲法の核心だ。安倍政権が改憲を公然と公言しているが、厳然たる日本の現行憲法である。その憲法を守ろうという平凡な市民の文芸作品でさえ、“中立性”に触れるといって掲載しなかった市の形態は、安倍政権に従属している行政の現在のあり方のように思われた。4日、少女像とともに「九条俳句」は再び展示場の壁の中に閉じ込められた。それでも、展示作品撤去の中止を要求する日本国内のオンライン署名者が数時間で8千人に迫るなど、“沈黙”しないという日本人がいるという事実を知っておかなければならない。

キム・ヨンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/904433.html韓国語原文入力:2019-08-04 20:30
訳M.C

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