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[コラム]米国優先主義と日本の輸出規制

登録:2019-08-07 22:44 修正:2019-08-08 08:54
イ・ヨンイン国際ニュースチーム長//ハンギョレ新聞社

 ドナルド・トランプ米大統領が、大統領選挙遊説の時から「米国優先主義」を前面に掲げた時、現実に、特に北東アジアでどのような姿で具体化されるのか、予測することは容易でなかった。今年初めに韓米間で妥結した駐韓米軍防衛費分担も、当初憂慮したよりは比較的善戦したと個人的には評価する。国際的には米国の一方的優先主義で、あちこちで騒々しかったが、私たちが体感できる「米国優先主義」の最大値は、昨年から激化した米中貿易戦争程度ではなかったようだ。

 今年からは「米国優先主義」の余波が予想を跳び越えて、はるかに幅広く北東アジアを襲っている。米国が覇権維持のために前面に出した、いわゆる世界警察という国際社会の“公共財”の役割を放棄したためだ。米国務省の高位当局者4人は今月初め、バンコクでの韓米日外相会議の後に開いた記者ブリーフィングで、韓日あつれきと関連して「仲裁や調整には関心がない」と明確に線を引いた。責任は負わないようにしながら、自分の実利はもれなく取りまとめる、ずる賢い職場の上司を見る感じだとでも言おうか。それでも、こうした率直さがトランプ行政府の美徳と言えば美徳だ。

 安倍晋三政権の韓国に対する経済報復は、冷戦終息後に固まった米国中心の一極体制をトランプ行政府が拒否し、その隙に乗じて出てきた。米国のアジア同盟管理は、米国を中心に韓-米、米-日同盟がタイヤを構成する「ハブアンドスポーク」システムで構成されている。最高峰のハブの求心力が弱まれば、タイヤの「秩序」は乱れる。1965年韓日請求権協定体制に対して現状変更の欲求を持っている韓国と、これを阻止しようとする日本の現状維持の欲求の間の正面衝突を防ぐファイアウォールの役割をしたのも、米国のヘゲモニー掌握だった。

 米国のハブの力が弱まると、日本は65年体制の現状変更を試みる韓国に超強手を投じた。幼いころ国語辞典を引きながら熱心に読みふけった武侠小説の表現を借りれば、最初の型(かた)から半導体・ディスプレイなどの3大主要材料に対する輸出規制という“殺手”を繰り出した。相手を一気に制圧し屈服させる意図が伺える。米国が北東アジアで筋肉質を誇示した過去の時期なら想像できないことだ。

 中国とロシアの軍用機が先月23日「初の長距離連合警戒飛行」訓練を実施し、韓国防空識別区域(KADIZ)に進入し、ロシアのA50早期警報統制機が独島(ドクト)領空を“侵犯”した事件はどうか。KADIZへの進入はそのようなことがありうるとしても、独島領空侵犯はロシアの超強手だ。

 多くの専門家が6月1日に米国防総省が出した「インド太平洋戦略報告書」を事件の発端に挙げているが、そうだとしても“言葉 対 行動”なので、比例性の原則に合わない。報告書は“言葉”であり、領空侵犯は“行動”であるためだ。ロシアの行動は、米国の介入を予想したとすれば想像し難い“挑発”であり、米国のヘゲモニーの衰退を象徴的に見せる。弱い輪である韓国を通じて様子を見たと考えられる。

 中国とロシアの連合訓練の内容も、米国を直接的にねらっている。中国とロシアの爆撃機が東海で合流した後、再び南シナ海方向に揃って移動した。東海で武力紛争が発生した際の共同対処を想定していて、東シナ海や南シナ海でも連合戦線を繰り広げる可能性があることを示唆したと見られる。ロシアは、東シナ海や南シナ海に行くために、その通路である東海を必ず通らなければならず、航路を確保するためにはKADIZを無力化させておかなければならない。

 米国一極体制の衰退は、国際社会で各自生存、「万人に対する万人の闘争」を予告する。韓日あつれきは、一方が明確に力の優位に立つまでは繰り返し再発する可能性が高い。ロシアと中国の朝鮮半島に対する影響力の拡大は、いっそう体系的であり組織的になされるだろうと推察できる。

 日本やロシアが予想できなかった強力な反撃を通じて、序盤の防御はきわめて善戦したと見られる。だが、まだ1ラウンドが終わっただけだ。「合従連衡」「二重プレイ」 「必殺技」など、この間の一極体制では使わなかった型を準備しなければならない。今後は真の外交力が必要だ。

イ・ヨンイン国際ニュースチーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/904892.html韓国語原文入力:2019-08-07 19:10
訳J.S

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